153話 リヴとクルネと初めてを
村にコンクリートの防壁を建ててから数日経ったある日、俺たちがこの村にやってきて初めての雨が降った。
「雨季だねぇ。」
村長が窓の外を見ながら呟いた。俺は疑問に思っていることを聞いた。
「どのぐらい続くんですか?」
「一ヶ月から二ヶ月ぐらいだね。日によって小雨だったり豪雨だったりするからちょっと面倒くさいんだよ。」
「大変ですね…」
そんな会話をしていると外から声が聞こえてきた。聞き馴染みのある声に俺は少し安心感を覚えた。
「急に降ってくるとか聞いてないんですけどー。」
「マジちょー濡れたー。」
リヴとクルネだ。こんな時でもギャルな二人に村長はお風呂に入ってくるように促した。
「お風呂溜まってるから入ってきなさい。」
「あんがとー。」
「マジ感謝ー。」
ギャル二人を見送った村長は濡れた地面をタオルで拭いていた。俺は木が傷んではいけないと思い、ドライヤーのようにして木を乾かした。
「魔法って凄く便利なんだねぇ。」
村長は心底感心していた。
「村長にも教えましょうか?」
俺が親切心で問いかけると村長は首を横に振った。
「こんな老ぼれに魔法なんて勿体無いよ。それに、教えてもらってもすぐに忘れちゃいそうだから。」
そんな会話をしているとリヴとクルネがお風呂から出てきた。二人ともまともな服は身につけておらずタオルで前を隠しているだけの姿で出てきた。俺は慌てて目を背けた。するとリヴとクルネが後ろから言ってきた。
「リフォっちーこの前濡れたウチらを乾かしてくれた魔法で乾かして欲しいんだけどー良いー?」
「アタシもアタシもー!」
二人は俺のドライヤーを求めてわざわざタオル一枚で俺の目の前に現れたのだ。俺は二人の倫理観を疑った。でも、種族の違いや世界観が違うことからここではこれがあり前とはいかなくとも、受け入れられるぐらいのことなのではないかと思った。でも流石にこれはダメだろと思い断ろうとした。
「い、いや流石に…」
俺の言葉を遮るようにリヴが言った。
「ウチらのことを見ないように目をつぶってくれたら大丈夫だって。それに見られて嫌な相手にこんなこと頼まないし。」
「そそ。」
俺はその言葉にドキッとした。リヴの言葉を裏返したら俺になら裸を見られても良いと思っているとなる。そんな言葉をかけられて冷静でいられるはずもなく、俺は興奮を隠すので精一杯だった。
「じゃ、じゃあ俺は後ろ向いて目をつぶって魔法を使うから、二人は自由に乾かして。それなら…」
俺が今までに出したこともないような情けない声で言うとリヴとクルネは笑った。
「リフォっちドキドキしすぎー。」
「アタシらのこと大好きじゃん!」
俺はその言葉に何も言い返すことができず、すぐに乾くように風量を増やしてあまり熱くないように加減して魔法を使った。
「「キャ!」」
「ちょ急すぎだって!」
「ビックリしたじゃん!」
二人は少し不機嫌そうな声で言った。俺は原因を作った二人には謝らずじっと待った。しばらくするとクルネが言った。
「リフォっちありがとねー。」
そう言うと足音が遠ざかった。するとリヴが言った。
「ちょ待ってよー。リフォっちもうちょっとだから。」
俺はそのまま続けた。その頃には平常心を取り戻しており心拍数も落ち着いていた。
「リフォっちありがとー。」
そう言うと足音が遠ざかった。俺はやっと終わったと思い安堵した。俺は二人が向かった方向に背を向けたままにしておいた。何となくそうしておいた方が良いように感じたのだ。そして俺たちが寝ている部屋に入った。今日はみんな村の人たちの所に手伝いをしに行っていて静かだった。少しすると二人の足音が近づいてきた。そしてドアが開いた。俺は何の用だと思っていたが、そんな思いはすぐに掻き消された。俺の後頭部にフワフワもちもちした物があったのだ。俺は何だこの感触はととても驚いた。するとリヴが言った。
「これはーウチからの感謝の印ー。」
そう言うとクルネが言った。
「ずるい!アタシもー。」
そう言うと腰辺りに同じような物が触れてきた。そしてクルネは俺の腹に腕を回した。それで俺の後頭部と腰に当たっている物が何なのか分かった。でも考えないようにした。極力考えないようにしていると二人が俺のことを押し倒した。俺はうつ伏せとなり二人は俺を強く抱きしめた。二人の物がさらに押し付けられ俺はどうにかなりそうだった。その時リヴが言った。
「リフォっちはウチらのこと嫌い?」
何だか寂しそうに言うリヴに俺は言った。
「嫌いじゃない、むしろ感謝してる。俺たちのことを受け入れてくれたし、優しくしてくれた。ここでの生活は二人がいなかったらきっとなかった。だからありがとう。」
そう言うとクルネが言った。
「アタシらだって一緒だよ。リフォっちが来てくれたからアタシらは子どもたちと仲良くなれて、村の人たちとの仲良くなれた。リフォっちがアタシらを救ったも同然なんだよ。それにリフォっちたちはもうそろそろここを離れるんでしょ…だから感謝を伝えたくて…」
クルネは泣きそうな声で言った。するとリヴが続けた。
「だからウチら、リフォっちは何をあげたら喜んでくれるかなってずっと考えてたんだよ。でも思いつかなくて、ここから離れて欲しくなくて、だからここにずっといてもらうためにこんなことしたんだ…ねぇリフォっち、ダメ…?」
聞いているこっちまで泣きそうになった。二人の想いは痛いほど伝わった。でも、俺はここにずっと留まるわけにはいかない。そのことを伝えるために起き上がった。その瞬間…
ちゅ
リヴに唇を塞がれた。少ししてリヴが唇を離した。目を開けるとそこにはベビードールを身につけていた二人が座っていた。あまりの光景に俺の下半身は熱くなった。そんな俺にクルネが近づきキスをした。
「嫌なら突き飛ばして。」
クルネは俺を押し倒し何度もキスをした。最初の方は唇と唇を合わせるだけだったが、後半には舌を入れてきた。初めての感触に蕩けそうになっているとクルネとリヴが入れ替わった。リヴも俺の舌を味わうようなキスをしてきた。二人の想いを一身に受けた俺は、その想いに全力で応えることにした。その想いの丈は二人を満足させるには十分だった。俺は前世で卒業できなかった分最高に幸せだった。疲れて寝てしまった二人を起こさないように綺麗にして、みんなにバレないように後処理もした。ふと指輪に目をやると光がより一層強くなっていた。俺はコンクリート防壁の貢献度が反映されたのだと思い喜んだ。でも、指輪の光が強くなった理由がまた別なのを知るのは随分後の話。
次回もお楽しみに




