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転生するなら貴族の飼い猫でしょ 〜飼い猫兼相棒として異世界を旅します〜  作者: 描空
ダンジョン編

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152話 防壁

それから俺たちは村の人たちに尽くした。子どもたちにだけ教えていた魔法を大人にも教えたり、巨木の伐採を手伝ったりなど様々だ。指輪の光は毎日見ていてもあまり変わったように思えないが、ふと指輪に目をやると徐々に光の強さが増しているのが分かる程度だ。俺はそんな時ふと思った。このまま続けてもめちゃめちゃ時間かかると。もっと効率良くできないかと考えた。でも村の人たちは特に大きな困り事もなさそうだし、求めている物もない。このままだとダンジョン攻略が滞ってしまう。と言うかもう滞っている。俺はそんな現状を変えるために村長に話を聞くことにした。


「村長、何かこの村が抱えている大きな問題や悩みはないですか?」


「ど、どうしたんですか?そんな藪から棒に…」


村長は驚いた表情で言った。急にこんなこと言われて冷静に話せる方が異常だ。俺はこの村長にこんな話を聞いた経緯を話した。


「指輪の光があまりにも弱いんです。毎日毎日村のみなさんのためにいろんなことしてますが、どうにも指輪の光が強くならないんです。徐々に徐々に強くはなっているんですが、これでは遅すぎるんです。だから一度に多くの貢献度を得られる事があればと思いまして。」


村長はしばらく考えた。おそらく本に書いてあった前に訪れた冒険者が大体の問題を解決してしまったからほとんど残っていないのだろう。それでも俺は一縷の希望がないかと縋った。その時村長が言った。


「村の遥か北にバラー川というそれはそれは大きな川があるのですが、その川は年中、流水量がとても多いのです。そして、もうすぐここは雨季となります。その雨によってバラー川が毎年氾濫してしまうのです。その氾濫した水は私たちの村にまでやってきます。だから私たちはツリーハウスに住むことを余儀なくされているのです。でもその氾濫した水によってこの森の植物は育つため止めてはならないのです。」


俺はこの村にそんな事情があったとは思いもしなかった。でもこれはチャンスだ。俺が村の人たちに魔法を教えたことによって、バラー川が氾濫しなくても植物に水を与えられる。そんな浅はかな考えを思いついた俺はどうやって氾濫を止めるのかに悩んだ。川の水が多いのなら川底は限界まで削れているだろうし、土を盛って堤防にしても降る雨によって長くは持たないだろう。俺がもっと博識ならこんな悩みを抱えることはなかっただろう。でもそんなことでクヨクヨしていられない。俺は知識がない分、それを補えるぐらい行動することに決めた。俺はルリとジュナ、ルナを連れてバラー川に向かった。


バラー川に着いた俺たちは絶句した。一見すると海のように思えるぐらい広く流れが急な川がそこにはあった。


「良い川だねー!」


ルリは楽しそうにしていた。俺はルリに川の様子を見てもらうように頼んだ。するとルリは満面の笑みで引き受けてくれた。水の精霊だから水の中にいる時が一番良いのだろう。水の中のことはルリに任せて俺たちは周辺を確認することにした。バラー川のすぐ近くに巨木は生えておらず五百メートルほど離れた場所に生えている。この何もない土地を活かせたら良いのだが、俺にはそんな知識ないため二人に聞いた。


「このスペース何かに使えそうだけどどうかな?」


「うーん…」


「これだけの規模ですとかなり大変ですね…」


ジュナは皆目見当も付かないって感じだったが、ルナは何か案はあるようだった。俺はその案を深掘りした。


「ちなみにどのくらいの規模ならできそうなんだ?」


「村を囲うぐらいですかね。」


俺はその言葉にピンときた。大元を改善しなくても、

村の人たちに被害が出なければ良いのだから、村に何かを施せば良いのだと。俺はさらにルナの案を聞いた。


「ちなみに何で囲うんだ?俺の断絶壁とか言わないでくれよ。」


「まさか、そんなこと言いませんよ。リフォン様も見たことあると思いますよ、コンクリートです。おそらくご実家もコンクリート製だと思いますよ。」


俺は言われてみればそうだと思った。エクサフォン国内や村では石造の家が大半だが、ペタフォーン家やメガフォーン家などの屋敷はコンクリート製だった。石造よりも頑丈で水漏れも防げるから村にはピッタリだと感じた。


「それなら村を川の氾濫から守れる。でも材料は?必要な量は?」


ルナに疑問を投げかけるとルナは完璧に返してくれた。


「全てこのバラー川で調達できます。」


いつの間にか戻っていたルリがルナに一つの石を手渡した。


「これがコンクリートに必要なセメントの原料石灰岩です。これを火魔法で燃やすことで石灰石となりセメントに加工できるようになります。石灰岩はバラー川の中を探せばいくらでも見つかりますでしょうから心配はありません。必要な量は施工して足りなくなれば足してを繰り返せば良いでしょう。」


ルナの知識に俺は感服し、手を強く握って感謝を伝えた。


「ありがとう。」


俺のその一言にルナはニコッと笑い言った。


「当然のことをしたまでです。」


それから俺たちはコンクリート作りに毎日を費やした。魔法を使って効率化したり村の技術者にアドバイスを貰ったり、実際に手伝ってもらったりした。何とか雨季になる前にコンクリート壁は完成した。出入りは巨木を伝うように階段を配置したため、防壁は一切の隙間もない防壁となった。村長曰く氾濫した水の水位は腰の下ほどの量が流れてくるらしいのだが、スピードはかなり緩やかで、氾濫してもしばらくしたら地面に吸収されるそうだ。だから村の人たちはツリーハウスにして被害を受けないようにしているのだ。これは余談なのだが、氾濫してきた水はクー・シーたちの遊び場となるようで、バラー川の氾濫は悪いことばかりではないのだ。後は実際に氾濫した時この防壁が機能するかを確認しなくてはいけない。きちんと機能した時には今まで以上の貢献度が得られるだろう。

次回もお楽しみに


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