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転生するなら貴族の飼い猫でしょ  作者: 描空
ダンジョン編
148/151

148話 手伝い

ケット・シーとクー・シーの村長にもてなされた翌日、俺たちは二十七階層に続く階段を探しに二十六階層を飛び回ったが見つからなかった。俺たちは何か情報がないかと村長に話を聞いたが、これと言って知っていることはないとのことだった。俺たちは村の人たちから情報を得ようとしたが、俺たちは部外者だから露骨に避けられているためまともに話してくれなかった。俺たちと話をしてくれるのは村長とギャル二人だけだった。頼れるギャル二人に情報収集を手伝ってもらおうと頼んだが、二人はその性格からか孤立しているらしくあまり他の人たちと親しくないとのことだった。ケット・シーとクー・シーは同族意識が強いらしくギャル二人はケット・シーとクー・シーなのにらしくないとハブられているのだ。本人たちは何気なくそのことを話していたが、いつもより声色が少し儚げだった気がした。


俺たちはどうにかして次の階層に続く階段を探そうとがむしゃらになったがダメだった。そもそも二十六階層が広すぎて探した所と探していない所が分からないのだ。だから俺たちはがむしゃらに探すのを諦めた。ただどこかに次の階層に続く階段があるのは事実なのでダンジョン攻略自体を諦めたわけではない。でもどうすれば良いか分からず呆然としているとギャル二人が俺たちの元を訪れた。


「冒険者さんたちってさぁ大体のことはなんでもできるよね?」


俺たちは突然の問いかけに困惑しているともう一人のギャルが補足してくれた。


「要するに、村の人たちが困ってることとか手伝って欲しいこととかを引き受けて信頼されればお返しが返ってくるんじゃね?ってこと。村長はおばあちゃんだから遠くには行けないけど、アタシらクー・シーは走るの得意だから冒険者さんたちよりここには詳しいはずだよ。もしかしたら誰か一人ぐらいはそれっぽい所知ってるかも知れないって思うんだ。」


俺はギャルの助言の通りにしてみることにした。


「最近何か困ってそうって人見てないか?」


俺は手始めにギャルに確認した。俺たちが探すよりまだ二人の方が知っているだろうからだ。


「んーとね二十三本目のお宅の老朽化が酷いって聞いたことあるよ。」


「アタシも聞いたことあるー。あそこの人って結構高齢だったよね?信頼得るチャンスじゃん。ちなみに二十三本目って言うのは、村長の家から二十三本目の木にある家だから二十三本目のお宅ってわけ。」


「分かったありがとう。」


全員で伺っても驚かせるだけだろうし、リベルとジュナの手を取って村長の家から風魔法で飛んだ。そのまま二十三本目の家に飛んで行くと、明らかに古いツリーハウスが目に止まった。俺はそれだと確信しその家に向かった。リベルが本数を数えてくれておりその家で間違いないと言ってくれた。俺はその家に着くとドアをノックして言った。


「最近ここにやって来た者です。何か困っていることはないですか?もしあれば俺たちに手伝わせてください。」


俺がそう言うと中から村長よりもご高齢なお婆さんが出て来た。でもそのお婆さんの身なりや背筋の綺麗さは一線を画すものがあった。


「貴方たちを頼っても良いのかしら?」


言葉遣いも上品でこんな風に歳を取りたいと思えるほどの人だった。


「もちろんです!俺たちにして欲しいことを教えていただいてもよろしいですか?」


「見ての通り家が古くて、建替えとまではいかなくてもリフォームしていただけないかしら?」


「分かりました!」


「ちょっと待って!」


俺たちが村長に木材はどこから調達すれば良いのか聞きに行こうとしたらお婆さんが俺たちを止めた。


「どうしましたか?」


「お代はいくらかしら?」


少し心配そうに聞くお婆さんに俺は即答した。


「いただきませんよ。慈善活動だと思ってください!」


「て、でも…」


「俺たちはここにお世話になってる分を返してるまでです。」


俺が爽やかな笑顔で返すとお婆さんは不服そうな顔で言った。


「本当に良いの?」


「はい!」


「じゃ、じゃあお願いしますね。」


俺はまたしても爽やかな笑顔で返した。お婆さんはまだ良いのか不思議そうに俺たちを見ていたが渋々了承してくれた。俺たちは村長から木材の調達場所を聞いて取りに行った。村から少し離れた巨木が老木らしくそれを木材調達用にしているそうだ。俺たちがそこに向かうと筋骨隆々なクー・シーが巨木の上の方を伐採していた。俺はその人から貰えないかと思い話しかけた。


「すいませーん。ツリーハウスをリフォームするのに必要な量の木材をいただけませんか?」


「うわぁ!なんだお前ら!」


俺が飛んでその人に話しかけると、驚かせてしまった。


「少し前からここでお世話になってる冒険者なんですけど、そのお返しとして二十三本目のお宅をリフォームすることになったんですよ。それで村長に聞いたらここで木材を調達できるとのことでしたので伺ったまだです。」


「そ、そうか…リフォームはどれぐらいの規模感だ?」


「家全体が古くなってきてますので、とりあえず外装と、内装は老朽化が酷い所をと思ってます。」


「分かった。なら下にある木材は全部持っていってもらって構わん。余ったら三十本目の家の前に置いておいてくれ。」


「分かりました。ありがとうございます!」


俺は巨木に登る中腹辺りにある広い足場に置かれた木材をファンタジーリュックの中に入れてお婆さんの元に戻った。でも俺はリフォームどころか木材の扱いはど素人だった。そこである程度知識のあるユディを連れて来ることにした。有無を言わさずユディの手を取り連れて行くと、ユディは何の抵抗もせずもう少し優しくしてよーと愚痴を漏らしただけだった。俺は軽く謝りお婆さんの家に連れて行くと、ユディが作業道具がないと言った。俺たちはすっかり忘れており何の用意もしていなかった。俺はさっきの巨木を伐採していた人なら貸してくれるかもと思い聞きに行った。


「すいません。リフォームする道具がなくてですね、貸していただくことはできませんか?」


「良いぞ。さっき言った三十本目の家が俺の家だからそこに取りに行け。入ってすぐ右手にあるからそれを使いな。」


「ありがとうございます!」


気前良く貸してくれたその人は俺たちの事を厄介者と思っていない感じでとても嬉しいかった。俺はあまり人目につかないように三十本目の家に向かった。ドアを開けると中は木材の良い匂いがしており、こんな家に住むのも良いなと思った。ドアを開け右手を見るとそこにはトンカチと釘、ノコギリなど必要な物は全て入った用具箱があった。本当に使って良いのか不安になったが、良いと言ってくれたのだからと思い持って行った。


「借りて来たよ。」


ユディに渡すとうんうんと頷き作業を始めた。俺たちはお婆さんに作業を始めると一報入れておいた、ユディの手捌きは凄まじいもので、ほんの数時間で外装はあらかた終わってしまった。俺の見えざる手や風魔法で作業効率が上がっているとは言え圧巻のスピードだった。そしてお婆さんに内装はどうするか聞くとドアを変えて欲しいとのことだった。それをユディに伝えると、またしてももの凄い手捌きであっという間にドアを新品のものと変えてしまった。


「まぁ凄い…」


お婆さんもユディの手捌きに感嘆の声を漏らした。


「本当に凄いですよねぇ。」


「そうねぇ。」


俺が相槌を打つとお婆さんも同意してくれた。


「他に直して欲しい所はありませんか?」


俺がお婆さんに聞くとお婆さんは優しく笑い言った。


「もう無いわ。本当にありがとう。お代ではないけどこれを貰ってくださらない?」


そう言い、渡されたのは指輪だった。綺麗な宝石が付いている指輪でとても高価そうに見えた。


「こんな高価そうな物いただけませんよ。」


俺がそう言い返そうとするとお婆さんは俺の言葉を拒んだ。


「貰ってください。私なんてこのまま老いて静かに息を引き取る存在です。そんな私にできるのはこの指輪を付けてくださる方に贈ることぐらいです。この指輪も私なんかより貴方に付けてもらう方が良いに決まってます。だから貰ってください。」


お婆さんは俺の手のひらに指輪を置き、両手で俺の手を握らせた。この人は本当にできた人だと感心したと同時に、老いには勝てないんだと痛感した。


「分かりました。そこまで言うならありがたく貰っていきます。」


「はい。改めて、ありがとうございます。貴方たちの旅路が幸福に満ち溢れていることを祈っております。」


俺たちはお婆さんの家を後にした。俺は三十本目の家に借りた道具、余った木材を置いて村長の家に戻った。中ではルナとルリが村長と一緒に夕食を準備しており少しほっこりした。その日の夕食はいつもより心が温まった。

次回もお楽しみに


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