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転生するなら貴族の飼い猫でしょ  作者: 描空
ダンジョン編
147/151

147話 後5階

俺たちは毎日ユディの課したメニューを取り組み休暇は一週間まるまる使った。幸いなことに筋肉痛は最終日には治っており二十六階層の攻略に支障はなかった。俺たちは十分に休暇を楽しみ気持ちもリフレッシュできたためいつも以上にコンディションが良かった。ウキウキで二十六階層に向かった俺たちはある意味で休暇を取ったことを後悔した。


二十六階層は二十から三十メートルはあるであろう巨木の森林となっていた。俺たちはその巨木にド肝を抜かれた。


「すげー!なんだこの大きさ!」


「凄いですね!ちょっと幹の太さ測ってみましょうよ!」


「良いな!」


俺とジュナは初めて見る巨木にテンションが上がっていた。他のみんなもある程度テンションは上がっていたが、俺とジュナは異常に見えるほどテンションが上がっていた。二十四階層の騎士の像や黄金の王様にももちろんテンションは上がっていたが、あの時は何が起こるのか分からない恐怖から表立ってテンションを上がることができなかったのだ。でも今は違う。今はただの森林のように見えるからテンションを上げているのだ。しばらくテンションを上げているとリベルが俺たちを止めて言った。


「楽しんでるところ申し訳ないけど、もうそろそろ攻略に戻ろうか。」


「「あっはい。」」


俺たちは流石にはしゃぎすぎたと感じ素直に従った。それからゆっくり自然の心地良さを感じながら歩いていたら何やら人影が見えてきた。俺たちはすぐに警戒心をマックスにした。俺たちがその人影を待っていると話し声が聞こえてきた。


「最近やることなくてマジ暇だよねー。」


「それなー。ナンカ面白いこと起こってくんないかなー。」


俺はその話し声にギャル味を感じた。みんなもその話し声に警戒心を少し緩めた。でも万が一のことがあるかも知れないと完全に警戒心を解いたわけではない。人影がしっかり見えるようになると、あちらも俺たちのことが見えたのか足を止めた。


「待って待って!あれって冒険者じゃね!?面白いこと起こったじゃん!」


「マジそれなー!そこの冒険者さんたちアタシらただのギャルだから警戒しなくて良いよー。丸腰だし、魔法も使えないから。」


俺はその言葉を信じて近づこうとするとユディが止めた。


「正気か?」


俺はその言葉に何を疑うところがあるのか疑問だった。聞いたところ敵意もないし、歓迎してはいないが受け入れてくれる感じだから甘えれば良いと思った。でもみんなはそうではなさそうで、少なからず疑っているようだった。俺たちが一向に近づいて来ないからかそのギャルたちが近づいて来た。


「ウチら別に冒険者さんたちのこと襲おうとか思ってないよ。ウチはケット・シーで。」


「アタシはクー・シー。アタシらより冒険者さんたちの方が強いんだから襲おうなんて考える道理あるぅ?ないよねー。」


「ねー。」


俺はみんながまだ警戒してるのか伺うと、リベル、ジュナ、ユディは何とも言えない表情をしていた。ルリとルナは好ましい表情をしていた。リベルたちが何とも言えない表情をするのはバチチャに裏切られたことがフラッシュバックしているのだろう。でも俺は今回は大丈夫だと感じている。今回はただの直感だが、俺の直感は女神の加護によって確かなものとなっているため、大丈夫と確信しているのだ。俺がみんなを説得すればいけると思い説得することにした。


「大丈夫だって。優しそうだし、見てよこの姿。猫の可愛らしい耳に尻尾、犬のキリッと耳にくるんとした尻尾。めちゃめちゃ可愛いじゃん。あんな人たちが俺たちのこと襲うと思うか?俺の直感は大丈夫だって言ってるぞ。」


俺はいつの間にか目の前まで来ていたケット・シーとクー・シーの見た目を強調しながら言った。するとギャルたちが言った。


「えー何この子ウチらのこと大好きじゃん。かっわいー。」


「ホント可愛いー。アタシらのお婿さんになっちゃう?」


「ありー。」


俺はその言葉にドキッとしたが、その瞬間みんなが俺の手を引き抱きしめた。俺はみんなの行動に吃驚しつつも嬉しさが込み上げて来た。すると俺たちのことを見ていたギャルが言った。


「じょーだんだって。それよりウチらのこと信用してくれた?」


「とりまアタシらの村長に挨拶しに行こっか。ついて来てねー。」


俺がついていくとみんなも後ろをついて来てくれた。少し歩くと巨木にツリーハウスが見えてきた。俺はなぜ大変なツリーハウスを選んだのか不思議だった。そのツリーハウスから小さなケット・シーとクー・シーが俺たちのことを物珍しそうな目で見ていた。地面にもケット・シーとクー・シーがいたが、俺たちを敵として見ているように思えた。見ず知らずの俺たちに眉間に皺を寄せ鋭い眼光を見せるのはごくごく自然なことだが、流石に周りにいる数十人全員からそのような目で見られるのは不快感と疎外感がすごかった。そのまましばらく歩いていると、ギャルたちがとある巨木にある一際大きなツリーハウスに続く階段を上り始めた。俺たちもそれに続いて上ることにした。最初は風魔法で上る方が簡単だとは思ったが、無駄に警戒させるかも知れないと思いやめておいた。


「村長ーお客さん連れてきたよー。」


ドアをノックしながら言うと中からお婆さんが出てきた。


「お客さんなんてこんな所に来るわけないじゃろが。」


「冒険者さんたちだよ村長。アタシらがみっけたの。」


お婆さんは俺たちのことを見ると目を見開いた。


「ほ、本当にいるとは…と、とりあえず入ってくだされ。」


俺たちはお婆さんに促されるまま中に入った。


「二人ともお茶を淹れておくれ。冒険者さんたちの分も忘れずに。」


「はいはーい。」

「かしこまー。」


そう言うと二人は部屋の奥に行った。


「ところで何用ですかな?ここは見ての通りケット・シーとクー・シーが集まっただけの村ですので何もお渡しできるものはございません。」


お婆さんが申し訳なさそうに言うと俺はすぐに返事をした。


「いえいえ何も欲しい物なんてありませんよ。俺たちはただダンジョン攻略をしているだけですので。」


「そうでございましたか。とんだ早とちりを申し訳ございません。」


「そんな謝るほどのことじゃないですよ。むしろこちらの方こそ急にお邪魔して申し訳ないです。」


そんな会話を続けているとギャル二人が戻ってきた。


「ウチらが淹れてあげたお茶だよー。ありがたく飲んでよねー。」


「ねー。」


俺たちはほうじ茶らしきお茶を飲んだ。渋みの中にほんのりとコクがあってとても美味しいお茶だった。そのお茶で一息ついた俺たちは次の階層に続く階段がないか聞いた。


「そのような話は聞いたことがないですね。村の者に聞いた方が知っているかも知れません。お力になれず申し訳ないです。」


「いえいえお邪魔しているのはこちらなので自分たちで探します。もし日が暮れるまでに見つからなかった場合こちらに滞在しても良いですか?」


「もちろんです。私の家は村長だからと広く作ってもらったので部屋の数だけは多いのです。ですからどうぞご自由にお使いください。」


「ありがとうございます。俺たちはその階段を探してきます。日が暮れるまでに見つけられなかった時はここに戻ってきますね。」


「はい。夕飯を用意して待っていますね。」


「それなら見つかってもここに戻ってきますね。」


「お待ちしております。」


とんとん拍子で話が進み俺たちは次の階層に続く階段を探しに行った。でも見つからず、お婆さんにやっかいになることになった。お婆さんの夕食は絶品で生ハムのような物やサラダ、スープ、果物まで様々な物があり俺たちは幸せな夕食を楽しんだ。

次回もお楽しみに


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