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転生するなら貴族の飼い猫でしょ  作者: 描空
ダンジョン編

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145/162

145話 後6階

二十四階層を突破したのは良いが、二十五階層に向かうまでの階段が今までとは比べ物にならないほど長かった。二十三階層で一度下った分を上ったのだろうが、それにしても長かった。俺が風魔法で飛んで上ったのに十五分はかかったのだから、普通に上っていたら足がガクガクと震えまともに二十五階層は攻略できなかっただろう。なぜなら二十五階層は今までの階層とは全く異なる階層だったからだ。なんとアスレチックコースのようになっていたのだ。俺たちはその光景に唖然とした。俺たちの数だけ用意された細い通路の下は地面が見えないほど深い穴になっていた。そしてその通路には通る者を落とすための装置が幾つも設置されていた。足元で高速に回転する棒、天井から降ってくる火の粉、全員に当たるように吊るされている巨大な鉄の玉などの装置が幾つもあった。ゴールはどこにあるのかと通路の先を凝視したが、この階層が全体的に薄暗いこともあり確認できなかった。俺たちがどうしようかと立ち尽くしているとルナが言った。


「我が確かめてきます。」


ルナは翼を生やし飛んだ。通路なんて通らずとも飛んで行ければ落下のリスクは大幅に軽減できると思った瞬間、ルナが壁にぶつかった鳥のように鈍い音を轟かせた。


「ダ、ダメです…リフォン様の風魔法のようなものがあって進めません…」


流石に飛んで行くなんて誰でも思いつくことは対策されている。なら飛べる俺とルナを軸に三人一組で通路を進むことを提案した。これなら落ちた時のリスクは最小限に抑えることができる。俺たちはその作戦で行こうとしたが、先ほどのルナのように風魔法の壁にぶつかった。壁にぶつかる痛みは想像以上で涙が出てきた。おそらく一人一通路と限定されているようだ。みんな嫌々ながらも通路の前に立った。俺とルナが中央で隣同士になり俺なら左側の誰かが、ルナなら右側の誰かが落ちた時に飛んで助けに行けるようにした。


「今のうちにいざって時の魔法をイメージしておいて。例えば魔法を手の形にして通路を掴んでおくとか。ユディは短刀を持っておいて落ちそうになったら通路に刺すとかして、少しでも落下するリスクは抑えるように。」


「「「はい!」」」


この階層はどれだけ仲間に頼ることなく自分一人の力を発揮できるかが、攻略の鍵となっている。さらに、楽をさせないように対策はしっかりと練られており本気度が伺える。俺はそれを覚悟の上通路に足を踏み入れた。やはり一人一通路のようで、俺を確認してからみんなも通路に足を踏み入れた。


まず最初は足元で高速に回転する棒だが、風魔法でふわりと飛び越えた。みんなを見るとジャンプの瞬間に火魔法を通路に吹き付け飛距離を伸ばしたり、リベルとユディに至っては装置を壊したりしていた。次の装置との感覚は人一人分空いており良心的だ。俺たちは持ち前の運動神経と魔法を駆使して難なく進んだ。しばらく進んでいると円形の休憩ポイントのような所が見えてきた。みんな何かあると確信して立ち止まって俺を見つめた。


「俺だって怖いんだよ!?」


俺はいつも頼られてきたけど、これから先も真っ先に頼られる存在として位置付いてしまったら嫌だと思い言った。


「リフォン様、我が行きます。」


ルナがそう言い円形になった場所に一歩を踏み出した。すると何も起こらないと思った瞬間上から魔物が降ってきた。幸いなことにその魔物はゴブリンであったためルナはすぐに爪を生やし切り伏せた。みんなが安堵の顔で踏み出そうとした瞬間俺はみんなを制止した。


「待って!」


俺の言葉にみんなが吃驚していた。俺はみんながまだ足を踏み出していないのを確認して言った。


「最初がゴブリンってことはドンドン強くなるんじゃない?」


俺は思っていたことを言った。でもこの考えはできるだけ当たって欲しくないがために言った言葉でもあった。みんなが俺の言葉に息を呑むとルリが言った。


「なら次は私で良い?」


みんなそれが最善だと分かっていたのか躊躇う余地もなく首を縦に振った。ルリが足を踏み出して三秒後にハイエナのような魔物、ラカバタが降ってきた。ルリはその刹那ラカバタを水魔法で通路の外に押し出した。ルリが突破できて安心した。でもそれと同時にドンドン強くなる方式だと確信した。


「次は俺ですかね?」


ジュナが言うと俺たちは頷いた。それを確認したジュナは足を踏み出した。その三秒後に狼のような魔物、ビリヤーが降ってきた。ジュナはその刹那ビリヤーを焼き尽くした。


「次は僕?」


俺とユディが頷くとリベルは足を踏み出した。その三秒後に蛇のような魔物、バラサープが降ってきた。リベルはその刹那雷魔法でバラサープを弱らせ氷魔法でトドメを刺した。


「ユディが先に行く?」


俺が聞くとユディは言った。


「この狭い足場で魔法使いは不利だ。最後は俺がやる。」


ユディの心遣いに感謝して俺は足を踏み出した。その三秒後ワニのような魔物、マガルマチが降ってきた。その刹那俺は風魔法でマガルマチの攻撃が届かない所まで飛び上がり、氷魔法で頭を貫いた。


「もしヤバそうだったらサポート頼む。」


そう言いユディは一歩を踏み出した。その三秒後熊のような魔物、バルンが降ってきた。その刹那ユディはバルンの首を切り落とした。俺たちはユディの強さを信用していたが、もしものためにと用意していた魔法を消して安堵のため息をついた。


「今回は魔物が降ってきたから大丈夫だったけど、多対一ならヤバかったね。」


俺は最悪の結果にならなくて良かったと安堵の言葉を漏らすと通路の先を見ていたルナが言った。


「そのヤバい状況になりそうです。」


俺たちは急いで通路の先を見ると自分たちが討伐した魔物が群れを成して通路を進んでくるのが見えた。俺たちは魔法で範囲攻撃できるけどユディはと思い、向かってくるバルンたちに向かって火魔法を撃つと風魔法の壁で防がれた。それを見たユディが刀を鞘に収めながら言った。


「俺のこともうちょっと信用してくれても良いんじゃないか?」


そう言った刹那ユディが俺の視界から消えた。と思った時にはバルンの首が宙に浮いていた。そしてバルンの体は力を失い通路の下に落ちていった。俺は何が起こったのか理解できなかったが、今は自分のことだと気持ちを入れ替えて、風魔法でマガルマチたちを通路の下に落とした。みんな魔法で魔物たちを通路の下に落としており二十五階層は攻略できた。通路を進み安全地帯に向かうと一足先にユディがくつろいでいた。俺はそんなユディに詰め寄った。


「さっきの技何!?どうやったの!?教えて!」


俺はユディの肩を掴みながら言った。


「落ち着けって!」


俺はユディに押さえられ深呼吸して心を鎮めた。そして再び言った。


「さっきの技何?どうやったの?教えて。」


一字一句同じ言葉をかけられたユディは少し笑いながら言った。


「さっきのはただ単に素早く居合切りをしたまでだ。」


俺はその言葉に納得できなかった。


「俺でも抜刀の瞬間が見えなかった。気がついたらバルンの首を切ってたんだよ。そんな説明で納得すると思ってる?」


俺は少し頬を膨らませて納得できていないことを表立って言った。するとユディは答えてくれた。


「そもそも人間と魔族じゃ身体能力の差が違いすぎるんだ。たとえ猫の目を持っているリフォンでも俺たちは魔族のスピードにはついてこれないってだけだよ。分かった?」


「で、でも…」


小さい子に説明するように優しく丁寧に説明してくれたユディに対して俺は駄々をこねそうになった。俺はまだまだ子どもだと思った。見たこともない物に目をキラキラさせ、興味を持ったことにはすぐに食いつき、それを納得できるまで大人に説明してもらう。こんなにも子どもな俺が恥ずかしくなった。ユディはそんな俺の頭を撫でて言った。


「俺が鍛えてやろうか?俺までとは言わないが、人間の中では誰も勝てないレベルには鍛えてやれるぞ。」


俺はその言葉を聞き即決した。


「よろしくお願いします!」


俺は頭を下げて言った。すると後ろから声が聞こえてきた。


「僕も!」

「俺だって!」


そしてリベルとジュナの二人も頭を下げて言った。


「「よろしくお願いします!」」


それを見たユディはニコッと笑い言った。


「俺の稽古は厳しいぞー。」


俺たちは毎朝ユディに剣術の稽古をつけてもらうことになった。ルナの闇魔法もまだまだ教えてもらうことは山積みなのに、ルナの剣術までとなると大変じゃないか、とも思ったがそれ以上に日々成長できることにワクワクが止まらなかった。

次回もお楽しみに


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