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転生するなら貴族の飼い猫でしょ 〜飼い猫兼相棒として異世界を旅します〜  作者: 描空
ダンジョン編

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139話 悪魔の実力と背景

ルナが俺の(しもべ)になったのは良いが、俺たちはルナもとい悪魔がどれだけの実力を有しているのか知らない。したがって、ルナに自由にダンジョン攻略をさせることにした。


「今二十階層だけど後の階層ルナに全部任せても良い?」


俺は冗談混じりにルナに言うとルナはにこやかに笑い答えた。


「お任せを。」


そう言うとルナは背中から翼を生やし、爪を伸ばし、いかにもな戦闘形態に移行した。その瞬間ルナは目にも止まらない速さで飛んでいった。その速度は凄まじいもので突風が吹き荒れた。


「うわぁーーー!」


ルリが飛ばされそうになったが、後ろにいたユディが何とかキャッチしてくれてことなきを得た。戻ってきたらやりすぎだと怒らないといけないなと思っていると、ルナが飛んで行った主道の奥から風を切り裂くような音と液体が噴き出す音が聞こえてきた。俺はルナがどうやって魔物を討伐しているのか容易に想像ができた。それは、速度を活かしてその鋭利な爪で首を切断しているのだ。俺は猫の聴覚があるから聞こえており、リベルとジュナ、ルリには聞こえていないようだった。でもユディには聞こえていたのか顔を顰めていた。ルナの想像以上の強さに喜ぶ反面、ルナに人間の常識を教える必要があるなと感じた瞬間でもあった。


「ただいま戻りました。」


ルナの爪には血が滴っており俺の想像は当たっていたようだった。


「ちょっとルナと話すからみんなは適当に暇つぶししてて。」


俺はそうみんなに伝えると音を遮断する風魔法を展開した。ルナはなぜこのようなことをするのか理解できていないのか風魔法を不思議そうに見つめていた。俺が座りルナにも座るように促した。ルナは正座で俺の前に座った。


「あのなルナ、お前の強さは分かった。その強さは俺たちに必要不可欠なものだ。だからお前を褒める。でもな、俺の僕となった以上、人間の国や魔族の国にあることが大半となる。今みたいな周りに俺たち以外誰もいない状況なら翼を生やしても、爪を伸ばしても何も言わない。でも人間の国や魔族の国では俺の指示がない時以外は絶対にそれらを表に出すな。良いな?」


「はい!」


案外素直に言うことを聞いてくれて俺は安心した。


「それから闇魔法も俺の指示がない時は使うな。」


「はい!」


「きちんと話を聞いてくれるのは嬉しいけど、流石に翼と爪はしまってくれ。」


「あっ、申し訳ございません。」


そう言うとルナは翼と爪を引っ込めた。でもイケメンな顔に血が付いてしまっていたので俺はポケットからハンカチを出して拭ってあげた。


「これで良し。」


俺がそう言うとルナは頬を赤くしていた。悪魔でも恥ずかしがるのかと思うと、何だか可愛く見えてきたが、気を取り直して話を続けた。


「それで俺たちは学生の身なんだ。このダンジョンを攻略し終えたらまた別の場所に行ったり、魔物討伐をしたりする。最終的には俺たちが在籍してる学園に戻るんだ。その時学園にルナがどう思われるのか心配なんだ。人間は悪魔を良く思っていない。だからルナのことを認めてくれないかも知れない。そんなことがないように最大限説得するけど、もしもの時があったらルナはどうしたい?」


俺が聞くとルナはしばらく黙った。仕方がないだろう急に休暇を与えられてすぐ能動的に行動する者の方が少ないであろう。俺は待つことにした。きっと一部の人は許してくれたとしても大部分の人はルナの存在を許してくれないだろうから、その間の自由な時間ぐらい好きにさせてやりたいのだ。少ししたらルナが答えた。


「我はリフォン様について行きたいです。」


「え、聞いてた?」


俺は予想外の答えにそう答えるしかなかった。


「その上でです。」


「えっと…俺たちは学生で来年には学園に戻るんだ。その時ルナは学園に在籍できないだろうし、悪魔だから俺たちの国に入れないかも知れない。その時ルナはどうしたいって聞いてるんだけど、理解できてる?」


「はい。それでも我はリフォン様のお側にいたいのです。」


俺はなぜこれほどにもルナに慕われているのか分からずどう答えたら良いのか困ってしまった。


「何か策はあるのか?」


俺はチャヤと同じように影になったりして人にバレない策があるのではと期待した。そんな俺の淡い期待はすぐに潰えた。


「ございません。」


俺はガッカリと項垂れた。でもルナはそのまま続けた。


「ですが、我はカタリア家の者です。人間にバレぬようにする術は身につけております。おそらくリフォン様が通われている学園はエクサフォン学園と存じます。教師にはもしかしたらバレるかも知れませんが、一生徒にはバレません。リフォン様ほどのお方なのですから、教師を説得することなんぞ容易いでしょう。ですので、我はリフォン様のお側にいたいのです。」


ルナの言葉に嘘は感じられなかった。学園長やマリー先生には俺がどんなやつなのか知ってもらえているが、他の教師にはこれぽっちもだ。使い魔競技会の使い魔程度しか情報はないだろう。そんな人たちを説得できるとは思えないけど、ルナとは契約を結んでるから大丈夫なのかと思ったが、やはり心配だ。俺がそんな考えを巡らせているとルナが俺の手を握って言った。


「我はリフォン様のことをもっと深く理解したいのです。学園での生活やご学友、学校行事など我には知らないことが多すぎます。我とリフォン様は契約を結び一生涯の付き合いとなります。学園はご卒業なさられればそれで終わりですが、我とはそうではないのです。一分一秒を共にしてより深くリフォン様のことを知りたいのです。どうか我を信じていただきたいのです。」


(しもべ)にこれだけ言わせておいてダメと言える主人がいるはずもなく、ルナが俺に対してどう思っているのかも話してくれた。俺は主人としてその思いに答える必要があると感じ、全てを話すことにした。


「分かった。ルナがそこまで俺のことを思ってくれてるのなら俺もその思いに応えるよ。」


俺はリベルの使い魔であること、猫であること、猫被りなどは俺独自の魔法であること、学園では猫であったこと、使える魔法、公爵家であること、話しておいた方が良いことと今までの旅路を話した。ルナはかなり驚いていたが、俺が真剣に答えているため事実だと飲み込み静かに聞いてくれた。


「これが俺の全部だ。」


俺がそう言うとルナも真剣な眼差しで言った。


「我も全てを話します。我らカタリア家は悪魔の中でもかなり高位な家柄です。それこそ公爵家であるリフォン様のように。ですが、我はそのような家柄ゆえ幼い頃からみっちりと教育されてきました。我は自我を抑え込み家に尽くそうと考えていましたが、ダメでした。我は次第に家系を恨むようになりました。もっと自由に生きたい、家柄に囚われたくないと。その結果、我は家を飛び出し、国を飛び出し外界を転々としました。

そしてリフォン様と出会ったのです。最初は、カタリア家に対して恨みを抱いたまま死ぬぐらいなら、契約を結び生きながらえることを選んでいました。それに契約することでカタリア家と離れられるのではないかとも思いました。ですが、リフォン様の言葉、態度、我に対する思いを聞いて変わりました。貴方とならきっと楽しい生涯になると。家に囚われていた我が馬鹿馬鹿しいと思い知らされました。我も貴方のように自由に自分のやりたいことをしたいです。」


きっとルナに味方はいなかったのだろう。一人で耐えてきたルナに対して、俺は言わば神の一手だったのだろう。頼れて、家から離してくれる、そんな存在に出会えば俺だってその人に縋る。だからルナは俺を慕いここまで言ってくれたのだ。俺はルナと一生涯を共にすることを心に誓った。

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