137話 猫の神様
俺は目覚めると女神と初めて会った場所と瓜二つな場所にいた。俺はもう死んでしまったのかと悔し涙を流した。仰向けで涙を流している俺に誰かが話しかけてきた。
「こんにちはリフォン君。」
俺はその声に驚き急いで涙を拭った。俺の斜め上ぐらいから聞こえてきた声に目を向けるとそこにはとても大きな三毛猫が香箱座りをしていた。俺は一瞬可愛くてニヤけてしまった。でもすぐにこの三毛猫が話しかけてきたのを思い出し返事をした。
「こ、こんにちは。」
俺はその三毛猫の正体が分からず少し構えた。
「そんなに警戒しないでよ。僕と君の仲じゃないか。」
俺はその言葉に首を傾げた。こんな大きな三毛猫今世でも前世でも見たことがなかったからだ。俺はとりあえずあははと愛想笑いをした。
「僕が誰か分かってないんだね。ごめんね君のことだからすぐに分かると思ったんだけど、まぁ死んじゃった後だし冷静に判断する方が難しいよね。」
俺は死んだという言葉をかけられて本当に死んでしまったのだと落ち込んだ。膝から崩れ落ちたが、それ以上のショックが俺を襲った。
「そ、そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ。」
その三毛猫が言った言葉に俺は反論せざるを得なかった。
「俺は死んだんですよ!それなのに落ち込まないわけないでしょ!せっかく転生させて貰ったのに…人生やり直そうと頑張ってたのに!」
俺はその三毛猫に思ってることをぶつけた。でもその三毛猫は怒ることも同情することもなく静かに聞いていた。俺が話し終わり息を整えた後その三毛猫が話し始めた。
「僕が君を転生させた猫の神様だよ。」
俺はその言葉に驚愕した。思い返してみればすぐに分かったはずなのに死んだショックで冷静に考えれていなかったのだ。俺は今までの失言と加護に対する感謝など色んな感情が入り混じり頭の中がぐちゃぐちゃになってしまった。でもとりあえず感謝は述べようと思い伝えた。
「あ、あのありがとうございました!な、なんて言うかあの…今ちょっと冷静じゃなくて、頭の中こんがらがってて、何言いたいのか何言えば良いのか分からなくて…」
俺が支離滅裂に話していると猫の神様が俺の頭の上に手をポンと優しく置いた。俺は肉球の柔らかさと毛のモフモフ具合に思わず笑みがこぼれた。すると猫の神様が言った。
「やっぱり君は笑ってる方が良いね。」
俺は少し恥ずかしくなったが、そのおかげで少し冷静になれた。俺はダンジョンで見ず知らずの男に殺されたこと、目の前にいる超デカい三毛猫が猫の神様であること、俺はこの三毛猫の加護で今まで上手くやれたことなど物事の整理ができた。だからと言って俺の死が帳消しになるわけでもなく、俺は再び落ち込み大きなため息をついた。すると猫の神様が続けた。
「話を戻すね。さっき落ち込まなくていいって言ったのには理由があるんだ。君が前世とても辛い道のりを歩んできたことは知ってる。生きるのに必死で何かを学ぶ暇がなかったことも。だから教えるね。僕の加護は猫に関することを実現できるんだ。これは女神から聞いてるだろ?」
俺は頷いた。
「君の前世の世界には猫は九つの命を持つっていう迷信があるんだ。意味としては非常にしぶといとか何だけど、猫を被ってる君なら分かるよね?」
俺はそう言われてピンときた。
「実際に九つの命があるんですか!?」
俺は期待と驚きに胸を昂らせつつ聞いた。すると猫の神様はまっすぐ俺の目を見て言った。
「そう。だから君はまだやり直せるんだ。」
俺はその優しく温かい言葉にさっきとは違う感情の涙があふれてきた。猫の神様は泣く俺の頭を優しく撫でてくれた。俺は自然と猫の神様胸元に近づいた。猫の神様は優しく胸を貸してくれた。俺はモフモフを堪能しては泣いて堪能しては泣いてをしばらく続けていた。
「もう大丈夫かい?」
俺はその優しい声に力強く返事をした。
「はい!ありがとうございました!」
「僕はいつもそばで見守ってるからね。」
優しさの権化のような猫の神様に感謝を覚えつつ目を閉じると、息苦しさを覚えた。俺はずっと息を止めていたような感覚にすぐに息を吸った。
「はぁ!」
俺は息を吸いつつ目を覚ました。俺が目を覚ますとそこには暗い表情のみんながいた。でも俺が目覚めるとみんなの表情が一気に明るくなった。
「生き返ったー!」
「リフォンさーん!」
「生き返った!?」
「起きたー!?」
リベル、ジュナ、ユディ、ルリの各々反応を見れて俺は本当に生き返ったのだと再び涙があふれた。リベルとてもジュナは俺に抱きつき、ユディとルリは驚きすぎて後退りしていた。
「ただいま!」
俺が涙ながらに言うとみんなも涙ながらに返してくれた。
「「「「おかえり!」」」」
ユディとルリも俺のことを抱きしめてくれた。俺はみんなを力一杯抱き返した。本当に猫の神様には感謝してもし足りない。しばらく抱きしめ合っているとリベルが言った。
「何で生き返ったの?」
俺は起こったことを全て話した。さらにユディとルリには俺がリベルの使い魔の猫だとは伝えておらずそこから話した。二人ともかなり驚いていたが、俺が猫の姿に戻ると信じてくれたようでルリは俺の毛のモフモフを堪能していた。ユディも話を聞いている間頭を撫でたりしていた。愛玩動物の底力を体感した瞬間でも会った。
「じゃああと七回死ねるの?」
「お前、言い方考えろよ…」
リベルの無神経な言い方に俺はつい正直に言ってしまった。俺のマジな反応にリベルもごめんと謝ってくれた。でも実際死んでも死なないみたいな感じだから騙し討ちにも使えるし、リベルたちの身代わりにもなれるというメリットはある。デメリットはちゃんと死んでるから激痛が走ることだ。こんな激痛を後七回も経験したくはない。そんな話は終わり俺たちはこのままダンジョンを続けるかどうかを話し合った。特定条件じゃなくなりいつもよりは難易度が下がったと思った俺たちはそのままダンジョン攻略を続けることにした。
次回もお楽しみに




