133話 ミーラアヤースク掘り
洞窟に響く轟音で目が覚めた。俺は何が起こっているのかと辺りを見渡したらリベルがミーラアヤースクに雷魔法を撃っているのが視界に入った。俺はアプサラスたちの長老にミーラアヤースクを掘ってこいと言われたのを思い出し安心した。でも流石に俺が起きるまで待っていてくれても良いんじゃないかと腹が立った。俺が顔を洗いに水面に近づくと昨日の幼いアプサラスが急に飛び出してきた。
「おはよ!昨日はよく眠れたか?」
俺は吃驚して肩がビクッとなったが、気にせずそのまま続けた。
「おはよう。眠れたけど寝起きは悪かったな。」
俺はそれだけ言うと顔を洗った。冷たい水が俺の眠気を洗い流してくれた。
「さっきのドーンっていうおっきい音?」
「そうだ。俺がまだ寝てるのにリベルが急に初めたんだ。もうちょっと待ってくれても良いと思うんだけどなぁ。お前はどう思う?」
俺がアプサラスに聞くとニッコリ笑って答えた。
「私もリベル?と同じようにする!だって驚かせるの好きだもん!」
俺はこいつが女児なのを忘れていた。このぐらいの年齢ならそう言うことが好きだと分かるはずなのに聞いた俺がバカだった。俺はアプサラスに返事することなく朝食を食べることにした。俺が起きる前に肉を卵で包んだオムミートとと呼べば良さそうな朝食が作られており、火魔法で全方向から火を当てて温めて食べた。そんな俺の様子を見ていたアプサラスを不憫に思い食べるかと聞いたら何度も縦に首を振った。
「少し熱いかも知れないから気をつけろよ。」
俺はアプサラスが常に水の中にいる精霊なことから人間にとっては適温でも、アプサラスにとっては熱い可能性を考慮して言った。一口食べて熱かったのか今度は念入りに冷ましてから頬張った。
「美味しー!」
俺に報告するように言ってきたアプサラスの笑顔の可愛さに口角が緩んでしまった。そんな俺を見てアプサラスが笑った。俺は無意識にアプサラスの頭を撫でていた。
「全部食べて良いぞ。」
「ありがと!」
俺はアプサラスの笑顔でお腹いっぱいになったので残りはあげてミーラアヤースク掘りを始めた。俺は先に始めていたリベルに何かコツはないかと聞くことにした。
「リベル、何か掘りやすいコツとかある?」
「特にないけど僕の氷魔法はミーラアヤースクの硬度に負けて掘れなかったよ。リフォンの氷魔法ならいけるんじゃない?高火力過ぎなかったら大丈夫だよ。」
「オッケー。とりあえず向こうからこっちに向かって掘るから。」
「はーい。」
俺はリベルの返事を聞いてから歩いて向かった。改めて見るとここの洞窟の壁にはトカゲやアリのような小さな生き物がいることが分かった。ここの環境になるべく影響の出ないように採掘しようと思った。リベルの反対側に着くとミーラアヤースクと自分の周りを風魔法で囲い最低限周りに影響が出ないようにした。そしてさっきリベルが言っていたミーラアヤースクの強度に氷魔法が負けたという言葉を信じて、逆に氷魔法の強度を上げる訓練になるんじゃないかと考えた。試しにいつもの感じで氷魔法を撃つとリベルが言ってた通り氷魔法が負けて粉々になった。ワイバーンの体表を貫いた強度とはいえ鉱石には敵わなかった。俺は氷を圧縮して強度を上げてみることにした。するとミーラアヤースクが真っ二つに割れた。幸先の良さに俺は思わずガッツポーズをした。俺は三人はどうしているのか見た。
「頑張って後三個掘ったら交代だから。」
「頑張ってまーす。」
リベルとジュナはいつも通り順調そうにこなしていた。一方ユディはというと。
「魔法が使えない俺の分まで頑張ってくれーい。」
「ユディはその硬そうな角とか爪使えないの?」
「流石に無理だって!」
リベルの質問にユディがツッコミ口調で返していた。俺は楽しそうな三人を見ながら淡々とミーラアヤースクを掘っているといつの間にか三人の目の前まで来ていた。
「早いね流石リフォン!」
リベルが褒めてくれたが、俺は何にも考えず三人を見ながらやっていただけだから素直に喜んで良いのかと思った。でもせっかくの褒め言葉だからと素直に受け取ることにした。
「ありがと。もう私に行くか?少しとは言え魔力消費してるから休んでからにするか?」
俺がジュナに聞くとジュナは少し目を瞑ってから言った。
「少し休んでからにします。万が一魔力切れになったらいけないので。」
ジュナの堅実な答えに同意し今日はゆっくりすることにした。そんな時あの幼いアプサラスの声が聞こえて来た。
「もう掘れたの!?凄いね!もう持って行くの?」
「魔力消費が気になるから明日持って行くよ。長老にはそう伝えておいてくれるか?」
「はーい!またねー!」
そう言うとアプサラスは街に戻った。俺たちは今日をエンジョイした。昼食を食べた後、二人チームに分かれて風魔法で作ったボールを使い水上バレーをしたり、一緒に泳いだり、一部を凍らせてスケートっぽいことをしたりした。その一時はここがダンジョンの中なんて忘れて純粋に四人で遊ぶことを楽しんでいた。
次回もお楽しみに




