表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生するなら貴族の飼い猫でしょ 〜飼い猫兼相棒として異世界を旅します〜  作者: 描空
ダンジョン編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

132/190

132話 アプサラス

バチチャたちの裏切りから何とか生還した俺たちは七階に上がった。六階から七階に上がる階段の踊り場で寝ていたから体の節々が痛かった。その時は風魔法でベッドを作り出すのも無理なほど疲れていたのだ。七階に到着した瞬間俺たちは度肝を抜かれた。そこは洞窟のようになっており地面はなく水で満たされていた。その水で遊ぶように青色の人型をした、でも手や足先は魚のヒレのような形に変形している生き物がいた。その瞬間リベルが鼻息を荒げながら言った。


「アプサラスだよ!水の精霊!まさかダンジョンでお目にかかれるとは思いもしなかったよ。」


俺は初めて見る精霊の美しさに見惚れた。ジュナもユディも見惚れていたのか一言も言葉を発さなかった。そんな俺たちの視線を感じたのかアプサラスは水中深くに潜ってしまった。


「「「あーあ…」」」


俺たちは全く同じ反応をした。その反応に四人でふふっと笑い辺りを探索することにした。今までの主道と分かれ道の構造ではなく完全に洞窟となっている七階層に俺たちはどうするか作戦会議を開いた。


「とりあえず俺たちはアプサラスについて何も知らないから知ってることを教えてくれ。」


俺がリベルに頼むとリベルは話し始めた。


「アプサラスはさっきも言った通り水の精霊で基本的に無害だ。水の中で生活してるから水魔法か風魔法で自分の周りに空気があるようにしないといけないのが大変だね。でもそれ以外は特に大変なことはないかな。」


「なら先に地上に八階に上がる階段がないか探してみるか?」


ユディの提案に俺たちはまず地上をくまなく探索した。探索しても青色の綺麗な鉱石しか見つからなかった。その青色の鉱石は発光していた。手分けして探しても見つからなかった俺たちは水の中に入ることを決めた。


「俺が風魔法で水を防いで、呼吸できるように常に新しい空気を作り出すイメージするからその間アプサラス探しでもしてて。」


俺は早速イメージに取り掛かった。水を防ぐのは断絶壁を応用すれば良いが、常に新しい空気を作り出すイメージが問題だ。風魔法は空気を変質させることはできるが、術者の技量次第なところがある。俺は新しい空気がどのように生まれるのかイメージできなかった。そこで俺は妙案を思いついた。それは空気中の二酸化炭素を酸素に変えることだ。俺は強引ながらも何とか二酸化炭素を酸素に変えるイメージを確立させることができた。俺が三人にイメージできたことを報告すると三人は急いで俺の元に来た。三人はさっきまで目をキラキラさせて水の中を見ていたから早く水の中に入りたいのだろう。俺は自分たちの周りに風魔法を出現させて水の中に入った。


「きれー!」

「すげー!」

「最高ー!」


三人とも嬉しそうで俺は自然と微笑んだ。でもこんな反応になってしまうのも無理はない美しさで俺も自然と綺麗と声が漏れていた。青色の鉱石の光が洞窟の天井に反射しその光が水中に入り込み水の中は宝石のように綺麗だった。水中ではアプサラスたちがいたが、俺たちの姿を見た瞬間岩陰に隠れてしまった。でも水中にいる魚は俺たちのことを動く障害物と思っているのか特に気にしていなさそうだった。しばらく水中を進んでいると一つ重要なことを忘れていた。


「リフォン、これどうやって進むの?」


「あー…」


俺は呼吸のことばかり考えていて進み方を失念していた。俺は今俺たちの周りにある風魔法に追加でイメージを持たせるのではなく、水魔法で水流を起こしゆっくりと進めた。風魔法の方に集中しているから水魔法のイメージが適当で遅かったため、水魔法はジュナに任せることにした。それから俺たちは八階に上がる階段を水中で探していたが、一向に見つからなかった。水魔法で進んでいるから歩くより少し遅いが、地上で探索した範囲以上は探索している。なのに目線の先にはまだまだ広大な空間が広がっており、俺は魔力が持つか心配になった。そんな時一体のアプサラスが近づいてきた。


「何だお前たち!」


まだ歯が生え揃ってない女児のような声のアプサラスが俺たちに向かって言ってきた。俺はそんなことより水中でも綺麗に声が届くことに驚いた。水の精霊だからなのかは分からないが、今はそんな時ではないと心を入れ替えた。


「僕たちはダンジョン攻略をしている冒険者だ。もし貴方たちが仕えている者がいるのならその者の元に案内して欲しい。危害を加える気はないと伝えてくれ。」


「ん?よく分かんないけど分かった!」


歯抜け声でも、俺たちの事を確認しに来るようなやつだから子どもではないと思いたかったが、さっきの反応を見るに子どもだと確信した。俺たちはさっきのアプサラスが戻ってくるまでここで待っている方が良いのか、アプサラスが向かった方向になら向かって良いのか分からず待つことにした。しばらくするとさっきのアプサラスが戻ってきた。


「ご案内しなさいって!ついて来て!」


小さい子を見ているような感じで俺たちは癒された。アプサラスは俺たちの速度に合わせて進んでくれた。しばらく進んでいると海底都市のような空間に着いた。俺たちはその光景に言葉が出なかった。都市全体が沈んでしまったこと、その都市の美しさ、アプサラスが普通に過ごしている光景全てに感動したのだ。


「ここが私たちの街!長老の家はもう少し先だから逸れないようにしっかりついて来てね!」


俺たちがアプサラスの後をつけるとさっきまで普通にしていた他のアプサラスが家の中に逃げるように入ってしまった。警戒させるのは普通だが、ここまでとは思わず少しショックだった。


「長老、連れて来たよ!」


その家は他の家より大きく十人程度人がいても窮屈しない広さの場所で待っていると奥の部屋から成人女性のような見た目のアプサラスが出てきた。妖艶な雰囲気を纏っており、さらに端正な顔立ちまで備える彼女を見ていた気がついた。彼女らは衣服を一切纏っておらず全裸のように見えた。と言っても人間のように胸の先に突起があったりはせずつるんとしていた。目のやり場には困るが、ギリギリセーフと言ったところだ。


「貴方たちがダンジョンを攻略する冒険者ですか。私はこの街を治めている者です。貴方たちは私たちに危害は加えないと言いましたが、何が目的ですか?」


誰が答えるか目配せしているとリベルが答えた。


「僕たちは次の階層に行きたいだけです。貴方は高い知性を持っていると本を読んで知っていました。ですのでもし知っていましたら次の階層に行ける階段がある場所を教えていただきたいのです。」


「それだけですか?」


「はい。」


リベルが真剣な眼差しで言うと長老が答えた。


「それならミーラアヤースクという青色の鉱石を取って来ていただけませんか?私たちアプサラスが地上で活動できる時間はごく僅かですので、お手伝いしていただきたいのです。これなら双方に利がありますでしょう?」


交渉上手な長老だと感心しているとリベルが答えた。


「量はどのくらいを所望ですか?」


「貴方たちが持って来れる量でお願いします。その様子ですしここまで来るのも一苦労でしょうから、一度お休みになって魔力が回復なされてから持って来てください。私たちは急いでおりませんので安全第一でお願いします。地上まで案内してあげなさい。」


「あい!」


あまりの親切さに裏があるんじゃないかと疑ったが、ユディが何の反応も示していないことからきっと大丈夫だと思い信用することにした。しばらく水面に向かって上昇しているとアプサラスが言った。


「ミーラアヤースクってとっても硬いんだよ!だから掘る時は物陰に隠れて魔法を撃つのが良いって長老が教えてくれたんだ!お兄さんたちは知ってるよね?」


「もちろん知ってるとも。」


知っていると答えたのはユディだけだった。俺が知っているのは魔法ばかりで、ついこの間子爵領で本を読むまでエクサフォン国について知っていたことは一割にも満たなかったと思う。今に至っては鉱石ということもありリベルとジュナも知らなくて当然だろう。尚更長老が鉱石のこと教えてくれても良かったんじゃないかと思った。


「暇だから毎日様子見に来るから頑張ってね!バイバーイ!」


いつの間にか水面付近まで上がっておりアプサラスは手を振って街に帰って行った。俺たちは感謝を告げる暇すらなかった。とりあえず地上に上がり魔法を消した。初めて使う魔法で尚且つ常に魔力を消費する魔法だったためかなりの魔力を消費していた。俺はファンタジーリュックの中からジャーキーをいくつか取り出し食べた。今日はきちんと風魔法でベッドを作り出しその上で寝た。

次回もお楽しみに


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ