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転生するなら貴族の飼い猫でしょ  作者: 描空
ダンジョン編
130/136

130話 バチチャ

ダンジョンに着くとそこは前と何にも変わっておらず、少し安心感を覚えた。ユディは初めて見るからかいつもより目を大きく見開いていた。俺たちは何の躊躇いもなくダンジョンに足を踏み入れた。すると無機質な声が聞こえてきた。


「特定条件が満たされためダンジョンを封鎖します。このダンジョンは只今よりダンジョンボスを討伐するまで封鎖されます。皆様のご健闘を祈ります。」


俺たちは初めて聞こえてくる声とその内容に仰天した。


「え!?どういう事!?」


「リフォンさん助けてくださいー!」


「これが普通じゃないのか!?教えてくれ!」


みんな慌てすぎてまともな判断ができていない。かく言う俺も、心拍数が一気に上昇しており焦りを隠せていない。でもリベルたちがこれだけ取り乱しているからか少しだけ冷静になれた。


「みんな落ち着け!焦っているだけじゃ何も変わらない。冷静に分析して何をするべきか考えろ!」


俺は焦りながらも何とかそれっぽい事を言いみんなを落ち着かせた。


「そうだねもっと冷静にならないと。」


「で、でも俺たちどうなるんですか?」


「今の声が言っている事が事実なら俺たちは閉じ込められたってわけだ。」


ユディの発言の後みんなが少し考えた。俺も考えたが良い案は思いつかなかった。


「とりあえず出られないか試してみない?」


リベルが入ってきた扉に手をつきながら言った。俺たちは魔法を撃ったり扉を押したりしたが、全く意味がなかった。俺たちが魔法を撃っても傷一つつかなかったことから、俺たちよりも高度な魔法使いの魔法がかけられていると推測した。


「ダンジョンボス討伐するしか出る方法はなさそうですね。」


ジュナの諦めと覚悟の決まった声が俺たちの覚悟も決めさせた。幸い俺たちはかなり訓練してきたことからかなり強くなったが、慢心することなく常に警戒心を持ちながら行動することにした。


「そう言えば特定条件って何だろうね。」


リベルの言葉にみんなが足を止めた。


「確かに、条件って何だ?鬼人がいることか?」


俺がユディを見ながら問いかけるとユディは答えた。


「流石にそれはないんじゃないか?確証はないが、俺一人が条件になることなんてそうそうないだろ?」


「鬼人一人が条件とは考えづらいから僕たち以外にも誰かいるのかも。」


「例えば誰ですか?」


ジュナがリベルに聞くがリベルはもちろん俺とユディも見当がつかないため答えられなかった。


「とりあえず先進も。考えても分からないだろうし。」


俺がそう言うとみんなゆっくりと歩き出した。しばらくの間会話はなかった。各々何が原因でこんな事が起きているのか考えているのだろう。特定条件というのがどのようなものか分からない以上、俺たちが閉じ込められた理由も分からないためとりあえずダンジョン攻略に専念することにした。


一階二階三階と順調に進み五階まで攻略し終えた俺たちはユディに六階からランダムになる事を説明した。


「じゃあずーっと弱い魔物の可能性もあるのか?」


「そう。でも前回俺たちはラヴァーチプカリーって言うかなり強い魔物に当たった。攻略したのはその階だけだったから次がどうなっていたか分からないが、用心するに越したことはない。例えビリヤーだったとしてもソイツが普段狩ってるビリヤーとは限らない。もしかしたら似ているだけの別種の可能性もある。だから油断はしないように。」


俺は念には念を押して六階に上がった。するとそこは今までの階層と同じ主道に分かれ道が多数ある構造だったため安心した。前回のように強い魔物ではないと思っていた。そんな俺たちの前に小人のような小さな生き物が姿を現した。ソイツは身長四十センチほどの小さな体をしていた。俺たちは見たこともないその生き物に厳戒態勢になった。攻撃をしてきたらすぐに反撃できるように魔法のイメージも完璧にした。そんな俺たちの事を見て小人は言った。


「そんなに警戒しないでください。私は女王様に皆様を連れてくるように遣わされたただのバチチャです。攻撃しようなんて考えておりません。ですからどうか剣をお納めください。」


俺たちは驚いたが、バチチャという生き物が好戦的ではないと分かり警戒体制を解いた。


「それではご案内しますのでついてきてください。」


バチチャが頑張って歩いた道のりを俺たちは一歩で埋めてしまい何だか小動物を愛でるような感覚に陥った。歩くのがあまりにも遅いバチチャを抱え道案内をさせることにした。俺が抱えた時バチチャは高い高いと喜んでおり本当に小動物のような愛くるしさを持っていた。


「こっちです。」


バチチャは分かれ道の方を指差した。俺たちは今まで分かれ道には足を踏み入れた事がなく少し躊躇った。するとバチチャが俺たちの心情を察したのか一人で歩き始めた。


「私が先導しますので皆様は私の後についてきてください。」


そう言いバチチャは歩き始めた。俺たちは慎重に一歩づつ歩みを進めた。分かれ道は明かりがなく火魔法で光源を確保するとバチチャが見やすくなりましたと喜んでいた。俺は光がなくても見えるのかと不思議に思ったが、人間じゃないのだからそんなこともあるかと思い慎重について行った。そのまましばらく歩いていると広い空間が広がっておりそこには無数のバチチャがいた。俺にはその光景が虫のように見えて少し鳥肌が立ってしまった。


「こちらです。足元に気をつけてください。」


俺たちは無数のバチチャを踏まないようにさらに慎重に歩みを進めた。しばらく歩いていると部屋のようになっている所についた。


「女王様連れてきました。」


案内をしていたバチチャがそう言うと中から少しだけ大きなバチチャが出てきた。


「待っておりました。どうぞこちらへ。」


俺たちはそのまま流れに流されそうになったが、ユディが止めた。


「俺たちに何の用だ?」


すると女王が話し始めた。


「本来この階層は私たちだけだったのですが、皆様が来られて特定条件が満たされたため、新たな魔物がここに来ました。それは私たちと近縁種のアンディーバチチャです。私たちの住処は奴らに乗っ取られてしまったのです。だから取り戻していただきたいのです!」


女王の熱量は相当なもので俺たちの心は少し揺らいだ。でもユディは違った。


「俺たちに何の利益があるんだ?」


「私たちに用意できる物なら何でも用意致します。ですのでどうかお力添えください。」


俺たちは一度話し合う時間をもらった。


「俺はやめておいた方が良いと思う。」


「どうして?」


ユディの考えに対してリベルが問いかけた。


「奴らが言っている事が事実だとしても俺たちが手を貸す理由はない。それに特定条件というイレギュラーな事が起こっている以上何が起こるか分からない。奴らはある程度知性を持っている。だから競合して俺たちを陥れることを考えているかも知れない。」


ユディの言い分はもっともだ。でも俺たちはアンディーバチチャに会った事がないため判断しかねていた。バチチャたちが言っている事が事実なのかそうでないのかも分からない以上、リスクを犯す必要はないと考え俺たちは手を貸さない選択を取った。


「すまない。俺たちはお前らの事をよく知らないから第三者として傍観しておくよ。」


「そうですか…それなら私たちと協力してアンディーバチチャを討伐するのはどうでしょう?ここの階層ボスは奴らです。寝込みを襲えば一瞬で奴らを葬り皆様は次の階層に進めます。それでも協力して頂けませんか?」


俺たちはもう一度考える時間をもらった。


「どうする?」


「俺は反対だ。」


「僕は賛成。」


「俺も賛成です。」


ユディは反対、リベルとジュナは賛成と意見が分かれてしまった。俺もユディと同じく反対なのだが、リベルとジュナは早く攻略したいと顔に書いてあり、二人だけでも引き受けかねない。俺は二人を何とか説得できないかと試行錯誤したが、無理だった。二人はリスクよりリターンを取るタイプらしく俺とユディは困った。そこで話し合いバチチャを前後から挟む形なら全体を見渡せて不審な動きをすぐに見抜けると考えた。ユディもそれなら最悪の事態は防げると納得してくれた。女王にそう伝えると満足げな顔で了承してくれた。

次回もお楽しみに


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