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128話 連携訓練

ユディが仲間になったのは良いが俺たちには決定的に欠けているものがある。それは連携だ。俺たちはまだ出会って日も浅いし一緒に戦う機会も少ない。だからここを離れる前にある程度連携は取れるようになっておく必要があると考えた。したがって、俺たちはベテラン冒険者のダンに指導を仰いだ。


「良いけどオレあんまりパーティメンバーのこと見ないから曖昧だぞ。」


俺たちはその言葉に少し不安に感じたが、今頼れる人はダンだけだったためお願いした。それから日夜問わず俺たちは連携訓練を行った。ユディとダンが組み手をしている所に俺たちが弱い魔法を打つ練習やユディが危険になった時魔法を打って助けるといった連携の手前であるパーティメンバーを助ける手立てを教わった。俺たちは今まで近接職がいなくても魔物討伐はできたが、人狼族など魔法使いでは反応できないスピードを有している敵と相対した時ユディのような近接職が必要なのだ。俺たちは悪戦苦闘の末何とか三日でものにした。やっと本題の連携訓練を始めることとなった。


実践訓練の前にダンが授業のような形でパーティの動き方や陣形を教えてくれた。俺たちのパーティは近接職一、魔法使い三というバランスの悪いパーティだ。近接職がもう一人いればもっとマシになるそうなのだが、俺たちの人脈にユディと同等かそれ以上に近接戦闘に長けた人はいないため諦めた。

陣形はユディが前に立ち真後ろ左右斜め後ろに俺たちが立つ形が一番マシらしく、俺たちが反転すれば後方も警戒できるためこれを基本の形とすることになった。動き方としてはユディが近接を相手にしつつ俺たちが後ろから魔法を打つというのが普通のパーティの動き方なのだが、そうすると俺たち魔法使いを守る人がいなくなりそこから瓦解する。したがって、俺たちは相手の動きを見てから行動する後手タイプの戦術を取るしかなかった。例えば、相手の魔法使いが魔法をイメージしている間に俺たちは相手の魔法使いより早いスピードでイメージして攻撃する必要があるというかなり難易度の高い戦術だ。幸い俺たちの魔法の練度はかなりのものでそうそう負けることはないが、その慢心が敗北につながることは容易に想像できるため俺たちのパーティにもう一人近接職を勧誘することが決まった。


俺たちの連携訓練は苛烈を極めた。毎日魔物の群れと戦い多数を相手にするにはどうすれば良いのかを頭ではなく体に叩き込んだ。その訓練の間すぐに魔物を討伐したら訓練にならないと言われ俺たちは最低限の魔法しか使えなかった。でも、そのおかげで俺たちの動きは格段に良くなりある程度のスピードの攻撃は避けられるようになった。と言っても基本はユディ頼りになることが多いから俺たちはとにかく早く魔法をイメージできるように訓練した。そんな生活を続けていたらいつの間にか特認実習は残り半年となっていた。その頃にはダンからも一人前の冒険者と遜色ないとお墨付きをもらっており、俺たちはさらに成長することができた。


俺たちはダナフたちにかなりの間お世話になったからお礼をすることにした。一度魔族の国(ラクシャスディシュ)に戻り食生活を豊かにする調味料や住処の防衛のための武具を購入した。ユディに何か欲しがっている物はないかと聞くと薪を取りに行くのが面倒だという意見が多数出ていたらしく大量の薪も買っておいた。それらを全てファンタジーリュックに詰め込みダナフたちの住処に戻った。ユディにダナフたちを中央広場に集めてもらいお礼の品を渡した。ユディが俺たちからのお礼の品だと言うと、ダナフたちは抗争の後に行った宴ほど歓喜しており俺たちの方まで嬉しくなった。何人かのダナフは俺たちを抱きしめて感情を伝えてくれた。こんなに喜んでもらえるとは思わず驚いたが、お世話になった分を返せたのならそれで良いと思った。


ダナフたちは俺たちがここを離れることを知ると宴を開いてくれた。ユディを通じてじゃないと意思疎通できなかったはずなのに今となってはダナフたちが何を言っているのか何となく理解できた。その日の宴は抗争の後の宴より長く続き、翌日の朝になってもまだ続いていた。俺はこんなに感謝されていたのだと実感し、感極まってしまった。でも大の大人である俺がリベルたちに涙を流している所を見られるのは恥ずかしく思い一人静かに泣いた。


宴も終わり俺たちがここを離れるとなると一人のダナフが首飾りのような物を差し出した。俺たちはそれが何か分からずユディに聞いた。


「これはダナフの一族に伝わる伝統的な贈り物で、村を去る英雄や恩義を感じている人に対して村全員からの感謝を込めて贈るネックレスなんだ。他のダナフたちにもこのネックレスは伝えられていて、このネックレスを持っている者はダナフから認められたって証でもあるんだ。」


ユディが嬉しそうな笑顔で言うが、そんな大層な物を貰って良いのかと困惑した。するとそのダナフがそれを察したのか俺の手からネックレスを取り直接首に掛けてくれた。俺はダナフにありがとうと伝えた。ダナフも分かってくれたのか満面の笑みを見せてくれた。俺はダナフたちに全員に感謝を伝えそこを後にした。互いが見えなくなるまで手を振り別れを惜しんだ。俺たちは本当に良いダナフたちに会えたと感動した。

次回もお楽しみに


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