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124話 魔族の国での魔物討伐

俺たちはダンと魔物討伐に向かった。と言っても魔族の国(ラクシャスディシュ)の周りには様々な魔物がいてどの魔物を討伐しようか吟味できるほどだ。だからと言って無闇矢鱈に討伐するのではなく、人畜無害な魔物は生かし俺たちを襲ってくる魔物だけ討伐した。ある程度はエクサフォン国内と変わらないが、外界で生き残っているだけあり一匹一匹が尋常じゃないほど強かった。適当にイメージした魔法では致命傷は与えられず、きちんとイメージして感情も乗せることで確実に討伐できるというレベルだった。バルンやマガルマチなど等級がブルーの魔物でこれほどなのだからシィーやワイバーンなどの等級がレッドの魔物はどうなるのかと恐ろしかった。俺たちが討伐した魔物の肉を食べているといつの間にか周りに魔物がいなくなっていた。無駄な戦いは避ける知能はあるようでそこもエクサフォン国内との違いを感じた。


俺たちは手応えを感じておりダンにもっと強い魔物を討伐したいと申し出ると、ダンは少し考えて答えを出した。


「それじゃあダナフだな。」


俺たちはその名前を聞いたことがなく疑問符が浮かんだ。ダンが続けて説明してくれた。


「ダナフはカティファスとほとんど同じ種族の鬼だ。鬼人とは違って奴らに理性はない。でも知性はある。もし理性を持ってる奴がいたらそれは鬼人だ。鬼が鬼人に成り上がったのか、鬼人が鬼に成り下がったのか分からないが、理性を持ってる奴がいたらその時はオレの指示を待て。オレとて鬼人と正面戦闘は避けたい。と言うかほとんど勝ち目はない。鬼人はワイバーンの首をいとも容易く切り落とせる。だから龍人のオレも負けるってわけだ。でも勝ち目はある。それは魔法だ。鬼含め鬼人は物理攻撃に強い種族だが、魔法にはめっぽう弱い。だから風魔法で距離を取り魔法を打つのが唯一の討伐方法だ。分かったな。」


「「「はい…」」」


俺たちは固唾を呑んだ。ワイバーンの首を切り落とすパワーと技術、もとい戦闘力に畏敬の念を抱いた。それから俺たちはダナフを探すことになった。いつ遭遇しても良いように風魔法で飛びながら探した。しばらく探しているとダナフよりも先にワイバーンの方が数が多いのか、体が大きいから見つけやすいのか何度も遭遇した。その度に見つからないように隠れてやり過ごしていた。その日は探しているうちに日が暮れてしまったので魔族の国(ラクシャスディシュ)に戻り宿を取り夜を明かした。宿を取る時もダンが話を付けてくれなかったら苦労していたであろうからダンには感謝しかない。宿も含めエクサフォン国内の人類圏と文明の差はほとんど感じない。魔族の知能は人間と変わりないようだ。ここにいる魔族が一斉にエクサフォン国内に侵攻したらすぐに乗っ取れるだろうが、そうしないのは知性があるからだろう。人間サイドとしてはありがたいことこの上ない。


翌日俺たちは朝からダナフを探しに向かった。魔族の国(ラクシャスディシュ)を中心に半径十キロほどを探して回ったが、一向に見つかる気配はなかった。ダンが前日カティファスにダナフがいそうな場所を聞いてくれていたらしいが、気に入った場所を住処とするようでどこにいるかは分からないとのことだった。このまま探しても埒が明かないため聞き込みをすることにした。すると何人かの冒険者はバルフィー山脈の方で一体だけ見かけたらしい。俺たちはその情報を頼りにバルフィー山脈に向かった。道中ダンが険しい顔をしていたが、俺たちはダナフに会えると興奮してそんなことには気づかなかった。


バルフィー山脈の麓に着くとその標高に驚いた。ビリヤー山脈は体感でしかないがおよそ千メートルほどに対してバルフィー山脈は見上げても山頂が見えない。実際に見たことはないがエベレストを彷彿とさせる山だった。暦的にもう夏になるというのにバルフィー山脈とその周りだけはまるで強制的に冬にさせられているようだった。ダンは見慣れているのか普通にしていたが、俺たちは初めて見る光景に驚きとワクワクが溢れ出てきた。


「互いに暖め合わないとすぐに凍りつく寒さだから暑いと思うぐらいの温度で火魔法を出現させておくように。」


俺たちは互いに火魔法で暖め合いながらダナフを探した。時々魔物が見えるが、どの魔物も体が大きく体表が厚そうに見えた。この環境に適応しているのか元よりそのような生態なのかは分からないが、どちらにしてもここを住処にする理由は俺には到底理解できない。しばらく探していると吹雪の中にも関わらず火の光が見えてきた。それが冒険者の物なのかダナフの物なのか分からないため慎重に行動した。上空からでは火の光しか見えないが、歩みに合わせて動いているのか一定の速度で動いているのが分かった。でもそれだけでは判断材料に欠けるため俺たちは火魔法を消して近づき正体を確認することにした。その一瞬だけでも凍りつきそうなほど寒かったが、なんとかその正体を見ることができた。そいつらはカティファスとは角が少し違った。カティファスは一本角に対してそいつらは二本角だった。するとダンが言った。


「奴らはダナフだ。鬼人じゃない。でも今は吹雪が強すぎるから治るまで待機だ。バレないように少し離れた場所で待機するぞ。」


俺たちはダナフたちの住処から少し離れた場所で吹雪が弱まるまで待機した。俺たちはただ待機してるだけじゃ暇だったのでかまくらを作ったり雪合戦をしたりして遊びながら待機していた。吹雪が少し弱まってきた頃俺たちとは違う声が俺たちに向かって話しかけてきた。


「そこの冒険者ー!大丈夫かー?」


キリッとして遠くまで聞こえるハキハキとしたその声が俺たちの耳に届くと俺たちの間に一瞬で緊張が走った。さっきの火の光はダナフだったことは確認していたことから俺たちの頭から鬼人の可能性は抜け落ちていたため余計驚いたのだ。


「おーい大丈夫かー?」


もう一度聞こえてきたその声は先ほどより近づいていた。ダナフがいた方から聞こえてきたため俺たちはどうしようかと見つめ合うとその声の主の姿を見せた。なんとカティファスと同様に一本角だった。さっきダンが言っていたことから推測すると鬼人なのだろう。でも俺はどのような反応をすれば良いのか分からず、ダンを見るとダンは肩から力を抜いていた。鬼人は知性を持っていることから安心したのだろう。ダンが安心した様子を見て俺も安心した。


「お前ら大丈夫だったか?さっきより少し吹雪は弱まったが、まだ危険だ。俺の家に案内してやるからそこで暖まれ。」


俺たちはダンに判断を任せた。するとダンはその鬼人について行った。さらに続くように俺たちはダンの後ろを歩いた。ダナフたちの住処に着くと俺たちは唸り声を上げて警戒されたが、その鬼人がダナフたちを一瞥すると静かになった。その鬼人がここのボスだということが分かった。


「ほら食え。暖まるぞ。」


俺たちは木皿に入れられたスープを渡された。コンソメスープのような匂いに俺は警戒しながら口に含んだ。他のみんなは俺の反応を待っていた。そのスープはかなり美味しく体の芯から暖まりふーっと安堵の息が漏れた。それを見たみんなもスープを飲んだ。その鬼人は俺たちがスープを飲んでくれたのが嬉しかったのか優しく笑った。ガタイの良い鬼人の笑顔は破壊力抜群で男ながらもその笑顔にドキッとしてしまった。それから俺たちはその鬼人と世間話をしていくうちに仲良くなった。その鬼人の名前はユディというらしく年齢は二十三歳とのことだった。ユディは外界を旅し続けており今はここを拠点としているとのことだった。コタリスが住み始めたらダナフたちが勝手にユディを慕い配下となったのだそうだ。俺たちは当初のダナフを討伐するという目的をすっかり忘れユディとの談笑を楽しんでいた。

次回もお楽しみに


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