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12話 一足先に

異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!

「明日は何しようかなー。」

 リベルはやる事が無く毎日を退屈に過ごしている。グロウからきたハーリー宛の手紙も渡し予定、やる事がゼロになったのだ。

(リーンと一緒に授業受けたらいいだろ。最近やる事無くなったって嘆いてるけど。)

「暇だから明日からリーン兄さんについて行こっと。」

 前までは恥じらいというか遠慮というかそのような感情で授業について行って無かったのだが、人間暇には勝てないようで遂に授業を受けることにしたのだ。

(リーンに電話しとけよ。急には迷惑だろうから。)

(はーい。)

 暇すぎて幼児退行したのかと思うぐらい思考していない。

 ―その日の夕方、リベルがリーンに電話をし明日から授業について行くことになった。

「おはようリーン兄さん。」

「ニャー。」

 俺はリベルにいつもより早く叩き起こされ少し眠い。

「来たか。今日は一限が魔法演習だ。久しぶりにマリー先生に会えると思うぞ。」

 リーンの言葉を聞きリベルは文句言ってやろうという顔をしている。俺たちは魔法競技室に向かった。

「ねぇリーンさんの隣にいるかわいい子誰?」

 俺たちは案の定好奇の目で見られている。そんな状況をよく思わなかったマリー先生が生徒たちを一喝する。

「浮かれるな!今日からリーンの弟リベルとその使い魔が授業に参加する。あの二人はお前らより優秀だ!せめて上級生として敬われる態度をしろ!」

 あんなマリー先生を見るの初めてで俺とリベルは驚いた。そんな俺たちを見てリーンが囁いた。

「マリー先生は基本優しいけど怒る時は怖いって有名な先生だよ。」

 俺とリベルは怒らせないようにしようと心の中で誓った。

「今日は前回から引き続き魔法適性を伸ばす授業だ!各自気を引き締めて行うのに。」

 マリー先生が指示を出しこちらにやってくる。

「ごめんね。二人に構う時間が無くて。でも授業に来てくれたら時間取れるから早く来て欲しかったんだよ。言うの忘れててごめんね。今日は何したい?」

 他の生徒たちと俺たちに対する接し方の違いに風邪をひきそうになった。

「先輩たちがやってるのは何なのですか?」

「あれは文字通り適性を伸ばす訓練さ。生徒たちが持ってるアイテムは、自分が持ってる適性を伸ばす事が出来るんだ。使い方はずーっと魔力を流すだけだ。」

 俺はその言葉にゾッとした。魔法を使うだけでかなり疲れるのにそれを途切れる事なく魔力を流すとなると疲労感はスポーツなどとは比べ物にならないほどだ。

「それって滅茶苦茶疲れないですか?」

 リベルも俺と似たような疑問を持ったようで聞いてくれた。

「疲れるけどあのアイテムに魔力を流すと内部で魔力を解析、鑑定、改良して体に戻って来るんだ。」

 かなりハイテクっぽいけど一人一つあるのは流石エクサフォン学園といったところか。

「でもなんかそれ変な感じしませんか?」

「最初は少し違和感を感じるが慣れるさ。ところで何したい?先輩たちがやってるのは定員オーバーだから出来ないよ。」

 リベルは残念そうにした。リベルは何かを思いつきマリー先生に提案した。

「先生の魔法を見せてください!」

「私のかい?」

「そうです。学園で教師をしているぐらいですからその実力を見てみたいです。」

 マリー先生は頭をかきながら渋々了承した。

「ついてきな。」

 俺たちはマリー先生について行くと実技試験の会場に来た。そこには俺とリベルの魔法の痕跡が残っていた。俺は疑問に思いリベルにテレパシーをした。

(あれって俺たちの魔法だよな?)

(そうだね。)

(何でそのままなんだ?)

(さぁ?聞いてみるよ。)

「先生。何で僕たちの魔法の痕跡がそのまま残ってるんですか?」

「何でってそりゃ国王推薦の審査材料だからだよ。」

(まだ審査してなかったんだな。)

(そうらしいね。)

「まぁ、とりあえず業務に支障出ない程度に収めるけど全力じゃないからな。そこの所ちゃんと理解しておいてくれよ。」

 そう言うとマリー先生は手に大きな火の玉を作りカカシに投げつけた。

 バン!!!

 その威力はカカシを壊すのには十分だった。

「おおー!」

 リベルは感嘆の声を上げた。俺も喋れたら同じ声を発していたであろう。

「こんなもんだ。競技室に戻るぞ。」

「先生一つ聞いても良いですか?」

「どうした?」

「魔力はどれぐらい使ったのですか?」

 リベルはカカシを壊すのに魔力のほとんどを使い倒れたがマリー先生は顔色一つ変えていないので気になったのだろう。

「六割ぐらいだ。」

 この世界の基準がまだ分からないがこのカカシをいとも簡単に壊せる人間は世界にどのぐらいいるのか気になる。

(なぁ、リベル。あのカカシってどれぐらい硬いんだ?)

(魔法防護にもレベルがあってホワイト、イエロー、レッド、ブラックの順だよ。光魔法だから白色のホワイトが一番高いレベルなんだ。それであのカカシはイエローだったかな?)

(あれでイエローだったらホワイトなんて歯が立たないな。)

(ホワイトはエクサフォン城をメインに他は極僅かだよ。)

 ホワイトの魔法防護を張るのにはかなりの労力と魔力そして時間がかかるだろうし国王の敵対勢力に渡るのを防ぐ目的もあるのだろう。

「二人とも止まってないで戻るぞ!」

「あ、はーい!」

 俺はリベルに抱き抱えられ競技室に戻った。

「二人ともどこに行ってたんだ?」

 リーンが訝しげな目で見てきた。

「マリー先生の魔法を見せてもらってたんだ。」

「そうか。どうだった?」

「流石エクサフォン学園の教師って感じだったよ。」

「そうか。次は魔法学だ。」

 リーンがついて来いとジェスチャーをして俺たちを先導してくれた。

「ハイネ先生。お話は聞いてると思いますが伝えておきます。こっちが弟のリベルとその使い魔のリフォンです。二人は常に私のそばに置いておくので何か不都合があったら言ってください。」

「君たちがそうか。教師の間でも有名になってるよ。よろしくね。私はハイネ・テラフォーン。君たちは敬うべき人だとは分かっているがこの学園では身分は皆等しいとされているから一生徒として扱うよ。」

「はい。よろしくお願いします。ハイネ先生。」

「もうすぐ授業が始まるから席について。」

 その教室は階段教室で俺たちは一番前の左側の席に座った。リベルが板書を取るだろうから俺はリベルの膝の上に座った。でもそれだけじゃつまらないので俺も授業内容を頭に入れる事にした。

「前回の続きから行くけどリベル君は仕方ないからそうなんだ程度に聞いてくれたら良いからね。」

「はい。」

「それじゃあ、魔法を効率良く使うコツと魔力消費を抑えるコツについて話すよ。まず前者は、魔法のイメージを最小限にそして感情を昂らせる。これが一番効率が良いとされている。だがそれは人によって違うから絶対にこれに従わなければいけないと言うわけではない。そして後者は、蛇口から水を少量ずつ出すイメージだ。もしくはホースの口を小さくして量を減らすイメージだ。こうする事で無駄な魔力消費を抑えられる。ここまでで何か質問がある人はいるかな?」

「はい。」

 リベルが手を挙げた。

「リベル君。」

「さきほどマリー先生の魔法を拝見したのですが、マリー先生は魔力を六割程度使ったと申していました。ですが僕は自分がどれほどの魔力を持っているのかが分かりません。それは経験を積んでおおよそでしか分からない物なのか視覚的にわかる物なのか教えて欲しいです。」

 俺も自分の魔力量とリベルの魔力量がどれぐらいあるのかは気になる。

「リベル君はまだ魔法診断を受けていないから分からないだけで入学したらその診断を受ければ視覚的に分かりますよ。」

「そうですか。ありがとうございます。」

 リベルは安堵と不満の感情が混ざった表情をしていた。

「それでは今日の授業はここまで。」

「リベルお昼食べに行くぞ。」

「うん。」

 俺たちはリーンに連れられて食堂にやってきた。食堂は毎日千人を超える生徒が利用するためとても広い。

「すごく広いけどその分人も多いね。」

「だけどその分種類も多いいから食べ飽きる事は無いぞ。」

 適当な席に座り画像付きのメニューを見てみたがそこにはラーメンに酷似した麺類、焼き魚、ハンバーガー、丼といったご飯物、フレンチ、定食など多種多様な料理がある。その下に小さな文字が書かれている。でも読めないのでリベルに読んでもらった。

(その小さい文字は何て書いてるんだ?)

(使い魔用の物もあります。だって良かったね。)

 俺は心躍られたが麺類を食べるのはかなり厳しそうで猫の体を恨んだ。

「リベルは何にする?」

「僕はこのハンバーガーにしてみるよ。リフォンは?」

(焼き魚にするよ。)

「リフォンは焼き魚だって。」

「分かった。注文してくるよ。」

 リベルは慣れない環境でソワソワしていた。そんなリベルを見かねてリベルの膝の上に乗り癒す事にした。

「ありがとうリフォン。」

「ニャー。」

 リベルはいつものように俺の事を撫でリラックスしていると俺たちの料理を持って帰ってきた。

「ありがとう。」

「良いよこのぐらい。」

 俺たち三人が食事をしていると周りの視線が気になった。

(何で周りの奴ら見て来るんだ?)

(分からない。使い魔と同じ食卓を囲まないのかも?)

「気にしなくて良いぞ。リフォンが珍しいからか、リベルがかなり歳下だから見てるだけだ。」

 周りの小さな声は俺にだけ聞こえていてその答え合わせをする事にした。

「ねぇねぇ、あの三人マジヤバくない?ちょーかわいいんだけど。」

「あの三人ってまさか公爵家?雰囲気あるよな。」

「公爵家って地位も凄いのに顔まで良いし、魔法の腕も一流なんて結婚できたら玉の輿確定だよね。」

 といった様々な声が聞こえてきた。流石にリベルとリーンにこの事は伝えない方が良いと思い心の内に秘めておいた。

「リーン兄さん、この後の予定は?」

「今日の授業はもう無いから特に無しかな。」

「じゃあ明日は?」

 なぜかリベルは必要にリーンの予定を聞いている兄弟仲は良好だが最近はあまり関わりが無かったから寂しかったのかと思ったが当たったようだ。

「一日暇だけど遊びに行きたいのか?」

「…うん。」

 俯いて応えるリベルの頭を優しく撫でてリーンは言う。

「じゃあ遊びに行こうか。」

 このやりとりを見て周りが黙っている訳もなく俺の耳には兄弟愛を見て感極まる者やリベルをかわいく思う者、リーンの意外な一面に驚愕する者など様々だ。

 俺たちは宿舎に戻りリーンは寮に戻った。リベルは疲れたのか部屋に入ると俺を抱き抱えたままベッドに寝転んだ。そのまま何もせず何も言わずに泥のように眠った。俺も動けないのでそのまま寝た。

次回もリフォンの猫生をお楽しみに。


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