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119話 捜索その4

俺が全員に風魔法をかけてターニャが全員を氷魔法で覆い暑さ対策を施した。俺たちは灼熱の溶岩地獄の中冷静に判断する力は徐々に落ちていくと考え素早く行動に移した。ラヴァーチプカリーの元に飛んでいった瞬間俺は氷魔法のイメージを始めた。ラヴァーチプカリーの頭部を完全に貫ける大きさ鋭さスピードを兼ね備えた氷魔法をイメージするのにあまり時間はかからなかった。ワイバーンの時と同じ要領でイメージすれば済む話だからだ。リベルもジュナも飛んでいる最中にイメージを終えており後はラヴァーチプカリーの元に行くだけとなった。


少しするとラヴァーチプカリーが見えてきた。その様相に皆息を飲んだ。溶岩をまるで水浴びのように扱うラヴァーチプカリーに絶句したのだ。俺はその様子を見て今の氷魔法じゃ貫けないと確信した。ラヴァーチプカリーの体表は明らかにワイバーンより硬そうだったのだ。俺は今の氷魔法をさらに威力のあるものに変えるにはどうすべきか悩んだ。前世の知識の乏しさが仇となった。ある程度の知識があればより良いイメージをできていたのだろうが、今の俺ではあまりにも学がなさすぎる。そんな俺が思いついたのはとても単純だった。それは氷魔法を円錐形にしてその底面を殴ることだ。爆発の威力を利用しようとも思ったが、氷魔法が大きすぎて爆発をとても大きく威力のあるものにしないと意味がなく、それをイメージする時間もなければ力量も足りないため殴るというシンプルな結論に辿り着いたのだ。


「お二人とも準備は良いですか!?」


ジュナの掛け声に俺とリベルは頷いた。その瞬間ジュナはニヤリと笑い津波のような量の水魔法を出現させた。ラヴァーチプカリーはジュナの水魔法に気がつき口から溶岩を吐いた。その溶岩が防波堤となり少し波の勢いが落ちた。ジュナもそれに気付きさらに多くの水魔法をラヴァーチプカリーに押し付けた。ラヴァーチプカリーは溶岩でなんとか押し返そうとしたが、その努力虚しくラヴァーチプカリーは水浸しになった。でもラヴァーチプカリーの体表が高温過ぎるせいでたちまちジュナの水が蒸発していく。もたもたしている暇はないと感じたリベルはすぐに雷魔法を打った。使い魔競技会で使った雷魔法の二倍以上の威力に俺は感心してしまった。


「「「今だ!」」」


みんなの掛け声の後俺はラヴァーチプカリーの頭部めがけて氷魔法を打った。でも厚い体表に拒まれ致命傷にはならなかった。みんなグッと言葉にならない声を漏らした。でも俺だけは違った。俺はすぐに拳の形をした氷魔法を出現させて円錐形の氷を殴った。何度も何度も殴った。その度にガンガンという体表とは思えない音に俺は挫けそうになったが、諦めず何度も殴った。殴りすぎて円錐形の氷が砕けた瞬間俺は絶望した。ラヴァーチプカリーを討伐できなかったと思った。でも俺の考えは良い方に裏切ってくれた。なんとラヴァーチプカリーの頭部を貫通して地面にぶつかった衝撃で砕けたのだ。俺はそれを見た瞬間全身から緊張と力が抜け、蛇の脱皮殻のごとくフニャフニャになって地面に横たわった。地面にあった溶岩はいつの間にか姿を消しており火傷を負うことはなかった。


俺が目を覚ますとそこには何もないボス部屋が広がっていた。部屋の中央にリベルたちが談笑しているだけの空間で俺は溶岩がどこに消えたのか不思議に思った。ムーアたちが俺に気づくと干し肉を入れたスープを手渡してくれた。俺は落ち着くためにもそのスープを飲んだ。朝の味噌汁を思い出して懐かしさに浸っているとターニャが口を開いた。


「奴を殺した瞬間に倒れたけどもしかして魔力切れ?」


俺はターニャの心配そうな顔とは真逆の笑顔を見せて言った。


「緊張と力が一気に抜けただけですよ。安心し過ぎて眠っちゃったんです。安心してください。」


俺がそう言うとみんな安心したのか微笑んでくれた。それから俺がラヴァーチプカリーを討伐したことを褒めてくれたり、魔力量を褒めてくれたりして俺は上機嫌になった。ムーアから聞いた情報によると六階はラヴァーチプカリーの魔力の影響を受けて溶岩地帯に変化していたらしく、俺が討伐したから魔力がなくなり元の空間に戻ったのだそうだ。精霊に近いとは言え魔力だけで空間に影響を与えられることに驚愕した。


準備も休憩も終わった俺たちが七階に向かおうと扉を開けた瞬間誰かが飛び出してきた。


「うわーん!助からないと思ったよー!」


少し低めだが女性の声だった。その口調はどこか幼さを感じた。恐怖からか人に会った安心感からかは分からないが、人間の奥底に眠る本性を見たような気がした。


「おいリリ!迷惑…だろ…って」


俺はリリという言葉にハッとした。俺たちが探していた人たちはリリとセスタだ。それも男性と女性一人づつ。このことから導き出されることは依頼完了ということだ。俺たちはウッツクルーシュの皆さんの再会を喜んだ。会えて嬉しいのか涙を流していた。ベテランの冒険者とは言え涙腺は鍛えられないのだろう、いつも頼り甲斐の会ったムーアがボロボロと涙を流しながら号泣している。その様子にこっちまで泣きそうになった。ジュナは実際に涙ぐんでいた。そんな感動の再会は小一時間続いた。ウッツクルーシュの皆さんが泣き止むとダンジョンの魔物が襲ってこないうちに早く出ましょうと言い、風魔法で今まで登ってきたダンジョンを爆速で駆け降りた。


「本当にありがとう!君たちがいなかったらきっと二人とは再会できていなかったよ。俺たちが用意できる物ならなんでも言ってくれ。君たちにはそれ以上の恩がある。改めて言わせてもらうよ。本当にありがとう。」

「「「ありがとう。」」」


ダンジョンから出た後ムーアが言った。その言葉に続いてウッツクルーシュの皆さんも謝意を述べ頭を下げた。なんだかいたたまれない気持ちになり俺たちは頭を上げてもらった。とりあえずここじゃ安全じゃないとのことで侯爵領に戻ることにした。


とりあえず冒険者ギルドで夕飯を奢ってもらいそこで報酬の話をすることになった。夕食を食べている間俺たちはリリとセスタに一口ごとにありがとうと言われていてなんだか変な感じだった。報酬の話に戻るが、俺たちは物欲がないわけではないが、何か欲しい物があるわけでもないので俺たちに救ってもらったことを広めてもらうことにした。これの意図は俺たちの実力を広めるという面もあるが、この一件で俺たちみたいな冒険者の偏見をなくすという面もあった。子どもの冒険者は実力不足だと思われたり半人前だと思われたりする。そのような偏見は俺たちには当てはまらないとリベルとジュナがご立腹だったらしく他の冒険者にも俺たちの実力を知ってもらう意図があったそうだ。

次回もお楽しみに


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