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117話 捜索その2

ダンジョンの大扉を開け中に入った俺たちは空気の変化に気づいた。どんよりとしているというか空気が重かった。閉鎖空間だから魔物の血の匂いや魔力が停滞しているだろう。でも今回のダンジョンは街にあってもおかしくない内装をしていた。と言っても石造なだけで何か装飾があったりするわけでない。似ている物を挙げるとするならそれはトンネルだろう。必要最低限の光源と周囲を人工物で囲まれている感じがそっくりだ。でも違う点もある。それは今いるトンネルのような道から何本も小道が枝分かれしているのだ。耳を澄ますとカチカチと何かがぶつかり合う音やギリギリと擦れる音が聞こえてきた。俺は聞かなかったことにした。


「この主道から外れたら迷うと思った方がいいぐらい入り組んでいるから、今回はずっと主道を通って十階まで行く。階層ボスは俺たちが前衛をするからリフォンたち三人は隙を見て魔法で攻撃してくれ。ある程度の怪我はターニャに治してもらえるから遠慮せず打ってくれ。」


ムーアが作戦を伝えた。作戦を聞いて俺は遠慮しないで魔法を打つのは流石に気が引けた。ウッツクルーシュの皆さんがベテランの冒険者だったとしても些細なミスが致命傷になるかも知れない。負わなくていい怪我を負わせるのは負け筋になる。だから最善の一手を見極めることが重要になる。


俺たちは魔物に一匹も鉢合わせることなく階層ボスがいるボス部屋に着いた。俺はどんな魔物がいるのか不安でムーアに聞いた。


「ムーアさん、覚えてる限りで良いので十階までの階層ボスを教えてくれませんか?」


「一階はジャリーサパって言うムカデの魔物だ。数は多いが、一匹一匹はさほど強くない。でも毒を持ってるから気をつけろ。二階はゴブリンキング、三階はオークキング、四階はラカバタって言う四足獣で、ビリヤーより少し弱いが数が多い、五階はバンダルキングって言う猿みたいな奴で、六階からはどうもランダムになってるみたいなんだ。俺の知り合いにはただのゴブリンだったって言ってるやつもいれば、ガンダって言うサイみたいな魔物だったってやつもいるから何が来るのか分からないんだ。」


俺は嫌な予感がした。見たこともない強い魔物が来るんじゃないかと今から心拍数が上がった。俺は不安でリベルとジュナを見たけど二人は楽しそうじゃんと言わんばかりの笑顔で親指を立てていた。俺は心の中で何も良くねぇよと愚痴をこぼした。


俺たちは一階のボス部屋に入った。ボス部屋は暗くカサカサと虫特有の摩擦音がしていて鳥肌が立った。俺は今すぐにでもこの不快感を取り除きたくムーアに言った。


「火魔法で一掃しても良いよな!?」


「やるなら水魔法で囲ってそのまま押し潰してくれ。じゃないとジャリーサパの体液と毒が気体となって部屋に充満する。そうなれば全員が毒に侵されることになる。」


俺は自分の行動が迂闊で愚かだったと痛感した。事前に毒を持っていることを聞いていて尚そのような行動を取ろうとしたのだ。俺には冷静さと瞬時に最適解を導き出す思考力が足りないことが分かった。そこで俺は氷魔法で凍らせる方が良いのではないかと思った。でも水魔法ならそのまま体液も毒も含め魔法を消せば良いだけだから、後処理が面倒臭くないのだと気づいた。俺はムーアに指示された通り地面から部屋の奥に向かって水を送り込み、水を一塊にしてそのまま押し潰して水魔法はそのまま消した。


「お、終わりか?やっぱり魔力量が多いやつがいると楽だな!」


ヨルディンがそう言うと同時にリベルが火魔法で部屋全体を明るくした。なぜ今まで部屋を明るくしなかったと言うと、誰も床を覆い尽くすほどの数のジャリーサパを見たくなかったからだ。誰も口には出さなかったが、火魔法で自分の周りすら明るくしなかったのが何よりも証拠だろう。俺の水魔法と同時にジャリーサパは消えたのか綺麗で大きな部屋だけが残った。地下迷宮と同様ボス部屋の奥には扉があった。俺たちはそのまま二階に進んだ。


二階も一階同様の造りとなっており俺たちは主道を進んで行った。道中ゴブリンが出てきたがなんの苦戦もなく進んだ。ヨルディンが苦戦しなさすぎてつまらないと言っていたが、逸れている二人を探すのは楽で良いとミーニャに言われていた。俺は一つ重要なことを聞き忘れていたのを思い出した。


「そう言えば、リリさんとセスタさんと逸れたのは何階ですか?」


俺が聞くとウッツクルーシュの皆さんは黙ってしまった。罠にかかって逸れたと言っていたから何階で逸れたのか分からないのかなと思ったが、それはそれでどこまで捜索に行けば良いのか見当もつかないため困ってしまった。考えても仕方ないとダンジョンをどんどん攻略していった。


ゴブリンキングもオークキングもラカバタも何の苦戦もなく、何の面白みもなく討伐できた。魔力も必要最低限しか使っておらず休憩すらいらないレベルだった。俺たちはいつの間にか五階のボス部屋前まで来ていた。


「バンダルキングは素早いから先読みすることが重要だ。俺たちが手下のバンダルは殺すからバンダルキングに集中してくれ。デカい火魔法で一網打尽とか考えないでくれよ。どの階層にリリとセスタがいるのか分からないから省エネで頼む。」


「「「はい。」」」


ムーアの問いかけに俺たちが返事をするとボス部屋に入った。そこは今までとは違いジャングルのようだった。木々が生い茂っておりバンダルが所狭しといる。その数は裕に百は超えているだろう。その中からバンダルキングを見つけ出すのは至難の業だ。今までの階層は準備運動かのような難易度の違いに驚いた。俺がどう攻略しようか悩んでいるとリベルが言った。


「これジャングル燃やしたら良いんじゃない?」


俺は目から鱗だった。隠れる場所をなくせばいつかは姿を現すだろうからだ。俺たちは火魔法使い木を燃やし始めた。バンダルたちがウキーウキーと騒がしくなってきたが、俺たちは俺の風魔法で新鮮な空気は供給できるためただひたすら待つことにした。手前から奥にどんどん燃えていくとゴリラほどの体躯のバンダルが暑がりながら姿を現した。木の上で生きる猿から木を取り上げたのだ、俺たちはすぐにバンダルキングも討伐できた。


攻略自体は難なく進んだがシンプルに時間がかかっているため俺たちはボス部屋で就寝することにした。俺が風魔法でふわふわなベッドを作り出し快適な時間を過ごせるようにした。みんなそれを気に入ったのかすぐに眠ってしまった。

次回もお楽しみに


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