116話 捜索
俺たちは捜索に向かいながらウッツクルーシュの人たちから情報を聞いた。冒険者歴は十五年のベテランで、ダンジョン攻略にも赴いたことがあり今回もダンジョン攻略をしていたそうだ。だが、今回はいつもと内部構造が変わっており罠の位置や魔物も変わっており逸れてしまったそうだ。俺たちは初めて聞くダンジョンの話に拝聴した。なぜならウェリルの書庫にダンジョンについて記された物はなく今後必ず為になるためだ。そして次はそのダンジョンがある場所を聞いた。俺の風魔法なら歩くよりも馬よりも速く安全なためだ。
「ここから東に三十キロぐらい行った所だよ。別に聞かなくても連れて行くよ。」
ウッツクルーシュの男性二人の内見た目が若そうな男性が不思議そうに答えた。シィーを討伐したから俺たちのことを近接戦闘タイプだと判断しての反応だろう。俺たちは良い意味で裏切ることとなった。
「俺が風魔法を使えるので飛んでいきましょう。その方が逸れた方の生存率が高まります。」
俺がそう言うと一瞬嬉しそうな顔をしたがすぐに苦い顔をして言った。
「三十キロも飛んだら君の魔力が底を尽くだろ?」
「大丈夫です。魔力量には自信があるんで!」
俺がそう言っても不安なのか快諾はしてくれなかった。リベルとジュナも力説してなんとか説得できた。早速飛び立ちダンジョンに向かった。俺の魔力量が桁外れに多いとは言え、爆速で向かい魔力切れになってしまってはいけないためいつもより少し早めで飛んだ。道中俺たちは互いに自己紹介していないことを思い出し、自己紹介をすることにした。でも公爵家ということは名乗らないようにした。無駄な情報で戦闘に支障をきたすのは誰も望んでいないからだ。
「俺はリフォンです。使える魔法は火、水、風、氷で風と氷はアイテム由来です。」
「僕はリベルです。使える魔法は火と雷シィーを討伐したのは僕です。剣術を習っていたのである程度は前線は担当できますが、冒険者になって日が浅いのであまり期待はしないでください。」
「俺はジュナです。二人から魔法を教わったので半人前ですが、普通の冒険者よりはやれます。」
俺たちの自己紹介が終わり次はウッツクルーシュの番だ。
「私はミーニャ。使える魔法は火と水。でも私は前衛だからあまり魔法は得意じゃないけど、短刀と小盾の扱いには慣れてるから。」
「私はミーニャの妹のターニャ。使える魔法は火、氷、光。基本的にヒーラーポジだけど、いざとなったら戦えるから安心してね。」
俺たちは初めて俺以外で光魔法使いに出会って驚愕した。ウェリルの本によると光魔法が使えるのなら教会にスカウトされるらしく、待遇も良く死ぬ危険性も少ないことから、ほとんどの光魔法使いは教会に就職するのだそうだ。だから光魔法が使える冒険者はごく僅かなのだとも記されていた。俺たちが驚いていることに気がついたのかミーニャが言った。
「光魔法が使えるなんて凄いでしょ!本当に自慢の妹だわ!」
「姉さん恥ずかしいからやめてよ。」
ミーニャがターニャを自慢すると、ターニャは恥ずかしがり屋なのか顔を真っ赤にして照れていた。
「ん゛ん゛!今度は俺たちの番だよな?」
「あっさーせん。」
なんとも軽い謝罪をミーニャがすると気を取り直して自己紹介を始めた。
「俺はムーア。魔法は火と水を少しだけ。俺は外見通り戦士だからな。」
「俺はヨルディン。俺も魔法は火と水を少しだけで戦士だ。逸れた二人は俺が説明するよ。一人は女のタンクでリリ。魔法はてんでダメだと常に言っているし、使っているところを見たことがない。でも魔法が使えない分近接戦闘のセンスは誰よりもある。もう一人は男のアーチャーでターニャの護衛も兼ねてるセスタ。魔法は火、水、風だ。何か聞きたいことはあるか?」
俺はダンジョンのことについてもっと知りたいので聞くことにした。
「ダンジョンのこともっと詳しく教えてくれないですか?」
「それなら俺が適任だね。」
そう言ったのはムーアだった。きっと経験豊富なのだろう俺は期待して話を聞いた。
「まずダンジョンは迷宮とかと同じように階層に分かれている。塔のように登って行くタイプと地下に存在していて下って行くタイプが基本だ。稀にこの二つ違うタイプもあるから注意が必要だ。今回は塔タイプだからこのまま飛んでいたら見えてくるはずだ。
魔物のは数え切れないほど生息していて討伐し切るのは不可能に近い。だからある程度区切りをつけて逃げるか、魔物が引くまで殺し続けるかなんだ。進めば進むほど難易度は高くなっていく。俺たちは十階も行けたら万々歳って感じだ。
内部構造は基本単純な洞窟だったりするんだが、時々文明を感じるダンジョンもあって今回は後者だった。罠があるかも知れないと慎重に進んでいたんだが、結果はご覧の通りだよ。大体こんな感じだけど他に聞きたいことある?」
俺はすぐに聞いた。
「十階でどの程度の魔物が出るんですか?」
続けてムーアが答えた。
「十階だとイエローかグリーンレベルの魔物だけど、数が多すぎるから持久戦になって負けるんだ。俺たちも無茶して何度か危険な目に遭ったから、これ以上は行かないようにしようって決めたんだ。」
そんな話をしていると奇妙なデザインの塔が見えてきた。何が奇妙なのか断言はできなが、言い表せない奇妙さが滲み出ていた。俺以外も気がついたのか各々深呼吸などで覚悟を決めている。ダンジョンの麓に着くと何が奇妙なのか分かった。魔力感知に長けていない俺でも分かるほどの魔力がダンジョン全体から漏れ出しており、それがダンジョンの周りの空気に影響を与えて奇妙なデザインに見えたのだ。俺たちは腹ごしらえを済ませダンジョンに足を踏み入れた。
次回もお楽しみに