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113話 門出

授与式が終わった翌日俺たちは子爵領を離れるためにお世話になった人たちに挨拶をしに行くことにした。ウェリル、騎士団、魔法師団にはこの一ヶ月様々なことを教えてもらった。ウェリルからは領主としての立ち振る舞い。騎士団からは前衛職の魔法の考え方。魔法師団からは一人一人の魔法に対する思い、使い方、考え方を教えてもらった。俺たちは騎士団から挨拶に向かった。


いつも通り俺たちが訓練をすると思っているのか騎士団は俺たちの指示を待っていた。俺は説明しなくちゃいけないと思いつつももう少しだけここにいたいなと思うところもあった。リベルは察してくれたのか話し始めた。


「僕たちは今日で子爵領を離れます。騎士団の皆さんには大変な思いをたくさんさせたと思います。ですが、それ以上に皆さんは強くなっているはずです。僕たちがいなくてもワイバーンを倒せるぐらい強くなっていると信じています。今までありがとうございました。」


騎士団は静かに拍手をした。きっとウェリル伝いに俺たちがもうすぐ辞めることを聞いていたのだろう。次はジュナが話し始めた。


「今までありがとうございました。講師を勤めるにはまだまだだったと思いますが、皆さんの役に立てていたのなら幸いです。俺たちも強くなりますから、皆さんも俺たちに負けないぐらい強くなってください。」


また騎士団は静かに拍手をした。最後は俺だ。


「一ヶ月という短い期間で皆さんに教えられたことは少ないと感じています。本当ならもっとここにいて皆さんの成長を見ていたかったです。ですが、未だ俺たちは未熟で皆さんを教える立場に相応しくありません。世界中を旅して強くなって帰ってくるのでそれまで待っていてください。その時は俺たちの旅の思い出を聞いてやってください。きっと面白くハラハラドキドキするような内容だと確信しています。皆さんの成長を楽しみしています。今までありがとうございました。」


俺が深々と頭を下げて礼を伝えると二人より拍手が大きかった。俺たち三人を送り出す拍手だと感じて心が温まった。俺たちがその場を離れるまで拍手が鳴り止むことはなかった。次は魔法師団だ。先ほどの騎士たちのように俺たちの指示を待っていた。またしてもリベルから話し始めた。


「僕たちは今日ここを去ります。皆さんには僕たちのできる限りを教えてました。僕たちがいなくなっても訓練を怠ることなく、いずれはワイバーンを討伐できるぐらい強くなってください。僕はあなたたちをそこまで評価しています。今までありがとうございました。」


騎士団同様静かな拍手だった。でも騎士たちと違うのは魔法使いたちの中には涙ぐんでいる者がいた。騎士たちは一切そんな反応は見せなかったから少し以外だった。次はジュナだ。


「今までありがとうございました。リフォンさん、リベルさんと比べると頼らない講師だったと思います。ですが、次に会う時は二人に引け劣らない魔法使いになっていると思うので楽しみに待っていてください。そして皆さんはそんな俺に引け劣らない魔法使いになってください。」


先ほどのしんみりした雰囲気をジュナが少し和らげてくれた。そのおかげで魔法使いたちに笑顔が見えた。その雰囲気のまま俺が話し始めた。


「皆さんには本当にお世話になりました。毎日魔法を教えると同時に俺たちも共に成長していました。今の俺たちではもう教えることはありません。必ず強くなって帰ってきます。その時に強くなった皆さんを見せてください。驚かせてください。ワイバーン討伐にこだわらずダンジョン攻略や迷宮攻略にも目を向けてみてください。もしかしたら俺たちに会えるかも知れません。今までありがとうございました。」


俺が話し終えると騎士団同様一段大きな拍手が俺たちの背中を押した。俺たちはそのままウェリルの部屋に向かった。俺たちが部屋に入るとウェリルは何かを察したのか書類から手を離した。そしてウェリルは儚げな顔をしながら言った。 


「もうか…」


「はい。もう騎士団と魔法師団の皆さんには挨拶してきました。」


「この一ヶ月間本当に世話になった。これが報酬だ。ワイバーン討伐の報酬を金額としても支払いたくて、講師分に上乗せした結果だ。」


そう言うとウェリルは一人一人に金貨を二枚づつ手渡した。本来の講師ならもっと安いだろうがワイバーン討伐の具体的な価格が気になる。でも流石にこの場で聞くようなことではないので聞かないようにした。


「お世話になりました。強くなって戻って来ます。その時を楽しみにしていたください。」


「楽しみにしているよ。」


俺が言うとウェリルは期待を込めた笑顔で俺の肩を叩いた。俺たちがメガフォーン家の庭から風魔法で飛び立つと屋敷にいる人たちが俺たちのことを見送ってくれた。


俺たちは沼地を越え左手にシュルラーを見ながら森林を越え侯爵領に着いた。いつも通り門番がいたので俺たちは冒険者カードで身分を証明し侯爵領に入った。他の領地と比べて領地を守る壁が大きいことが分かった。日も暮れていたので俺たちは宿を取り早めに眠ることにした。

次回もお楽しみに


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