111話 子爵領での休日その3
俺たちがシュルラーで過ごしていた日、メガフォーン家総出で俺たちのことを探していたらしく授与式の準備が一日滞ったのだ。だから今日準備が終わらなかったら明日も休日という事になった。当初の予定から少し変わってしまったが、俺たちにとってなんら問題はない。従って俺たちは子爵領での休日を楽しむことにした。と言ってもこの世界は前世と比べて娯楽が発展しているわけではなく、本を読んだり勉強したり魔法を使ったり買い物をするのが一般的な娯楽だ。リベルとジュナは退屈だから魔物討伐に行こうと催促してきたが、俺は学園長の魔導書を読むのに忙しいと断った。二人は膨れっ面で文句を言っていた。なら仕方ないと俺は二人と一緒に面白く魔法を学べないかと考えた。そこで一つの案を思いついた。
「二人に良い提案をしよう。俺が学園長の魔導書から学んだ魔法を使うからそれを当てるゲームをしよう!」
「「…うん!」」
二人は最初好ましい反応を見せなかったが、すぐに表情が明るくなり元気に返事をした。
子爵領から少し離れた草原に俺たちは行った。そこは子爵領から少しだけ離れた場所だったが、別に大丈夫だろうとそこに決めたのだ。
「それじゃあまず火魔法からやるから頑張って探してみてね。」
「「はーい!」」
俺は魔導書の最初の方にある火を青色に変える火魔法を使った。初めて見たリベルとジュナはおーと子どもらしい反応を見せた。二人がこのゲームの趣旨を忘れている事に気がつき探してと言うと二人は思い出したかのように魔導書のページをめくった。するとすぐにその手を止めてリベルが言った。
「火を青色にする魔法でしょ。」
「せいかーい!徐々に難しくしていくから頑張って探せよー。」
俺が次の魔法は何にしようかと考えていると良いのを思い出した。それは火と風魔法の応用で火魔法の周りを風魔法で囲み見えづらくするものだ。俺が少しイメージに時間をかけているとリベルが少し難しい魔法だと見抜き俺の手を凝視した。俺がその魔法を出現させるとリベルが違和感に気がついた。でも風魔法で見えづらくしているから何の魔法を使っているのか判断するのは困難を極めているようでページをめくる手が止まった。
「「降参。」」
二人がそう言うと俺は流石に難しすぎたと反省して魔法の解説をした。
「今のは風魔法がメインで手のひらサイズの火の玉を作ってそれを風魔法で隠してたんだ。俺はまだまだだ。学園長の魔導書には一度に十個これが作れてやっと一人前って書いてあったからな。」
「「分かるわけないよ!」」
「こ、今度は分かりやすいやつにするから…」
二人に少し怒った顔で言われて俺は少しへこんだ。次は分かりやすい雨を降らせる魔法を使う事にした。
「あっ雨…リフォン風魔法で雨除け作って。」
俺が降らせた雨にリベルがそう言われて俺は不服だった。それでも俺は仕方なく風魔法で雨除けを作った。雨除けと言ってもただ空気の板を俺たちの上に作った感じだ。俺が二人の回答を待っていると二人はまだ魔法使わないのと言わんばかりの顔をしていた。俺は気づいていないんだなと悲しく思い雨を止めた。二人はこんなにすぐに止む雨を不審に思ったのかジュナが恐る恐る聞いた。
「もしかして今の雨、リフォンさんの魔法だったりします…?」
「うん。」
俺がそう言うと二人の表情は一気に明るくなった。局所的にとは言え雨を降らせることができるのは自分でも凄いと思うから二人もそう思っているのだろう。
「凄いな…でもこれ何の役に立つんだ?」
「ぐっ!」
リベルの言葉の刃が俺に突き刺さった。正直言って雨を降らせるより水魔法を直接相手に打った方が相手を濡らして氷魔法で凍らせることができるしほとんど役に立たない。強いて言うなら農作物を育てるのに使えるぐらいだろう。
「次は何ですか?」
ジュナが俺を急かした。俺が次の魔法は氷魔法に決めたけど何か良い魔法はないかと思い出した。そこで俺はかき氷を作り出す魔法を思い出し、ファンタジーリュックからコップを取り出しそこにかき氷を出現させた。
「何これ?」
「何ですかこれ?」
二人の予想外な反応にかき氷はメジャーではないことを知った俺は少し以外だった。夏の暑い時期に氷を食べる風習はあったであろうが、それを削る発想はなかったのだろう。まぁそんなことは気にせず、雑貨屋で買ったメープルシロップやリンゴなどを取り出し盛り付けた。そこそこなクオリティとなったかき氷を三人で食べて幸せな時間を過ごした。
離れに戻る前に街の雰囲気がいつもと違い人が多く何やら騒がしい事が分かった。勲章の授与式に合わせて露店を開いたりするだろうからその準備だろう。いつもと違う街並みを見るのが楽しみだと思いつつ準備がかなり進んでいる事から授与式は明日であろう。
次回もお楽しみに