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110話 子爵領での休日その2

シュルラーでの宴の後俺たちは宿に泊まり一晩を明かした。飯屋ジャンタで朝食を済ませるために向かった。


「久しぶりだね!元気にしてたかい?」


「「「お久しぶりです。」」」


それから朝食を食べながら近況報告をしていると俺たちが贈ったフライパンと包丁を使ってくれており、なんだか嬉しくなった。俺たちが食べ始めるとジュナが、俺がワイバーンを討伐したことを話してしまい女店主は卒倒してしまった。俺たちはそんな事になるとは思わず、すぐに椅子に座らせ気休め程度の光魔法で気分が良くなることを願い使った。すると光魔法が効いたのか次第に顔色も良くなってきた。


「ごめんね。まさか坊ちゃんたちがワイバーンなんて討伐するとは思わなかったから…」


「俺も討伐できるとは思いませんでしたよ。」


俺が笑いながら言いその場の雰囲気は良好なものになった。朝食を食べ終え侯爵領に行くことを伝えるとまたしばらくお別れだねと少し寂しそうな顔をしていて胸がギュッとなった。


「また来ます。」


「待ってるよ!」


俺が言うと女店主は笑いながら応えた。俺たちはそのままジャンタを後にした。そしてそのまま冒険者ギルドに向かった。昨日討伐したマガルマチの換金のためだ。俺たちがギルドに着くとそこには肉と素材、骨に分けられたマガルマチだった物があった。見事な解体業に俺たちは見惚れた。俺たちが手伝ったワイバーンとは違い手際の良さが解体された物からひしひしと伝わった。肉や素材の断面から骨に一切肉が残っていないことが何よりの証拠だ。俺たちがまじまじと見ているとおじさんが話しかけてきた。


「素材はうちで買い取るが肉と骨はどうする?肉なら飯屋に売れば金になるし、干し肉にすれば保存食にもなる。骨も素材になるがうちで買い取ろうか?」


俺たちは即決することはできず話し合う時間をもらった。


「どうする?マガルマチの骨がどう活かせるのか分からないし買い取ってもらうのもアリだと思うけど。」


「少しだけ自分たち用に取っておいて後は買い取ってもらおうか。」


「賛成でーす。」


骨は決まり次は肉だ。


「肉はどうする?ある程度の量は自分たちの干し肉にするかそれとも干し肉と交換してもらう?」


「一部はそうするけど大部分は飯屋と肉屋に寄付しよう。ウェリルに倣うんだ。」


「リベルさんは良い領主になりますね。」


「えへへ〜そうかな〜」


褒められたリベルの顔は年相応なニヤケ顔になり感情のコントロールができていないようだった。


「それじゃあ自分たちが食べる分だけの干し肉とマガルマチの肉を交換してもらって、それ以外の肉はシュルラーの飯屋と肉屋に寄付するので良いな?」


「「はーい。」」


俺たちの意見は合致しおじさんにその旨を伝えた。するとその場にいた人全員が驚愕していた。冒険者にとっては魔物を売ったお金が生活費であり何より大切だからだ。でも俺たちは違う。国王から貰った大金貨があるからお金には困っていないのだ。肉も俺たちだけでは手に余る量だからだ。


「肉をタダでやって良いのか!?」


「はい。皆さんにもお裾分けしましょうか?」


俺がそう言うと皆一斉に首を縦に振った。あまりの素直さに俺は吹き出しそうになった。でもこれがこの世界の常識だ。いつ死ぬか分からない。いつお金を稼げるか分からない。そんな世界だからこそ誰もが貪欲で強欲なのだろう。それでも人間だからその欲を必死に抑え猫を被っているのだろう。今の俺のように。


「ギルドに干し肉ってありますか?あるなら交換してもらいたいんだけど。」


「どれぐらい欲しいんだ?成長期だから多い方が良いか?」


「そうですねそれじゃあ十キロほど。」


「りょーかい十キロね…って十キロ!?成長期の男にしては多くないか!?それに十キロなんて運ぶのも大変だぞ。」


おじさんの気遣いも虚しくリベルの判断が変わることはなく早く十キロ持ってくることを催促されるだけだった。


「とりあえず十キロ持ってきた。生産コストとか諸々込みで二十キロ貰うが文句ないな?」


「はい大丈夫です。」


十キロの干し肉と少しの骨をファンタジーリュックに入れて俺たちは冒険者ギルドを去った。まだ昼前だったから子爵領を回る時間は十分にあった。


子爵領に戻り昼食を食べ今までに行ったことない店や通りに足を運んだ。俺たちはアクセサリーや日用品、雑貨など様々な物を見たり買ったりしているとあっという間に日が沈んだ。楽しい時間というのはあっという間で俺たちは離れに戻った。屋敷に入るとメイドたちと執事たちがなんだか探し物をしているように辺りを見渡していた。俺たちは手伝おうと話しかけた。


「何か探し物ですか?良かったら手伝いますよ。」


俺が話しかけるとそのメイトが叫んだ。


「いらっしゃいましたー!」


その一言に屋敷中の窓が開きメイドや執事たちが顔を出した。その顔は安堵に包まれており俺たちは何が起こっているのか理解できなかった。するとウェリルが走ってこちらに向かってきた。何が起こっているのか事態を把握するためにウェリルに聞こうと思ったが、その必要はなかった。


「もう出て行ってしまったのかと思ったよ!授与式の話をした後すぐにいなくなってしまったから嫌だったのかもと思って…本当に良かった…」


俺の肩に手を置きそう言うウェリルの顔は暗くてあまり分からなかったが、青い顔をしていたと思う。


「す、すみません。昨日貰ったアイテムの試運転がてら魔物討伐に行って、その魔物をシュルラーに持って行って…」


俺は起こったことを事細かく説明した。心配をかけるつもりや授与式が嫌なんてことは絶対ないと念押ししておいた。俺の言葉を聞いたウェリルは胸を撫で下ろした。俺たちは自分たちの無責任な行動が多くの人たちに迷惑をかけてしまった事を実感し猛省した。その日の寝つきはいつもより悪かった。

次回もお楽しみに


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