11話 ハーリーと一緒
異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!
「ひーーーまーーー。」
リベルは部屋のベッドの上でゴロゴロしながら言った。昨日からマリー先生が俺の魔法を実験するから事前指導が無くなったからだ。
「リフォン、暇だよー。」
(リーンの授業について行けば良かったじゃん。)
(事前指導の奴が一緒に授業受けるのは流石に気が引けるじゃん。)
コンコンコン
誰かが扉をノックした。
「あ、あのリベルさんいますか?」
この声はハーリーだ。手紙の一件を聞きにきたのだろう。
「どうぞ。」
「失礼します。」
ハーリーが部屋に入ってきた。ハリスはまだリベルに慣れていないようでハーリーの後ろに隠れていた。
「あの、先日の手紙の件で。」
「ああ、その事か残念だけどまだ返事が来てないんだ。ごめんね。」
「そうでしたか…なら要件は無くなったので失礼します。」
(お茶にでも誘ったら?ハーリーなんか暗いぞ。)
(うん。分かってる。)
「ハーリーお茶でもどう?」
「えっと、じゃあご一緒しても良いですか?」
リベルは俺を抱き抱え喫茶店に向かった。
(喫茶店なんていつ知ったんだ?)
(リーン兄さんに教えてもらったんだ。時々利用してるらしくて結構気に入ってるんだって。)
「ねぇリベル、あなた事前指導に選ばれてたよね?私なんかに時間使ってて良いの?」
「ああ、その事か。リフォンの魔法が特殊でその実験をするからって僕の事前指導は出来ない日が多くなるって言われたから時間余ってるぐらいなんだよね。」
「なんか残念だね。私から見てもリベルの魔法は学園で学ばなくても良いぐらいだと思ったけどね。」
客観的に見てもリベルの魔法のレベルはかなりようで俺も鼻が高い。
「着いたよ。ここは兄さんから教えてもらった店なんだけど雰囲気も良くてオススメだよって言ってたから来たんだ。」
「そ、そうなんだね。」
(おいリベル、それなんだか口説いてるみたいだぞ。その気は無くても勘違いする女の子が出てくるかもしれないから気をつけろよ。サラサラの髪、整った顔、華奢な体。男の俺でも良い男だって分かるから思わせぶりな態度はやめとけよ。)
(え?う、うん。分かった。)
「いらっしゃいませ。二名さまですか?」
「ああ、そうだ。」
「こちらへどうぞ。」
俺たちは席に促され座った。
「注文が決まりましたらお呼びください。」
雰囲気は日本に似ているが内装はヨーロッパのようなレンガ作りで木造建築とは違った趣がある。
「リフォンは…何か食べれるのある?」
俺はメニュー表を見たが読めなかった。そんな俺を見てリベルがテレパシーでメニューを読んでくれた。流石にスイーツ系は猫の体に毒なのでミルクを頼んでもらった。リベルたちはコーヒーをハリスはケーキを頼んだようだ。
「お待たせしました。コーヒーお二つとケーキ、使い魔用のミルクです。失礼します。」
使い魔が当たり前な世界だからミルクは日本でペット用のお皿として用いられている広いお皿で届いた。元人間としては複雑な気持ちだ。
「聞きたかったんだけど、ハーリーは実技試験どうだったんだ?」
「まぁ、自信は無いけど結構出来たよ。リベルに比べたらまだまだだけどね…」
「なんかごめん。」
(なんかごめん。)
俺も一応謝っておいた。
「二人は何の魔法が使えるの?」
「私は火と光で、ハリスは氷が使えるの。」
光魔法を使える人は初めて出会った。どんな魔法が使えるのか気になる。
(リベル、光魔法の事をもっと聞いてくれ。)
(リベルも光魔法使えるんだっけ、分かったよ。)
(グロウたちから聞いたのか?)
(そうだよ。)
俺がわざわざ猫耳生やしてグロウたちに伝えた意味が無いじゃないか。まあそれほど神経質になる必要はないか。
「ハーリーはどんな光魔法が使えるんだ?僕は使えないけど興味があるんだ。」
「まだ簡単なものしか使えないけど、回復と施錠と浄化だね。」
俺は光魔法には浄化まであるのかと驚いた。
「かなりすごくないか?そもそも光魔法が珍しいのに今の歳で…何歳だっけ?」
「十四歳よ。そういうリベルは?」
「僕は十二歳だよ。」
この世界の子供たちはかなり大人びており日本にいたら二十歳と見間違われるほどだ。
「ねぇ、リベル。リベルはいつリフォンを召喚したの?」
「半年ぐらい前だったよね?」
リベルが俺に問いかけてきた。具体的な日数は覚えていないがそのくらいだったはずなので元気に返事した。
「ニャー!」
「半年ぐらい前だって。ハーリーはいつ?」
「私は一年と二ヶ月前。あの時の衝撃は今でも覚えてる。私はそんなに使い魔召喚の適性は高くなかったの。でもどうしてもって両親に頼んだら渋々了承してくれたの。その結果ハリスが来てくれたから本当に嬉しかったの。」
ニコニコと話していてハリスの事が好きなんだなと思った。
「ハリスの事が大好きなんだね。」
リベルと思ってる事は一緒だった。その一言を聞きハーリーとハリスは赤面して顔を両手で隠した。
「あ、あのリベルさん一つお聞きしても良いですか?」
「何?」
人見知りのハリスが珍しくリベルに話しかけた。
「リフォンは何て猫種何ですか?他の猫の使い魔とは違うから気になって。」
「リフォンはメインクーンって猫種なんだって。大きくて毛並みも良くてかわいいよね。」
リベルはニコニコしながら俺の事を撫でて応えた。
「わ、私も撫でて良いですか?」
「良いと思うよ。良い?リフォン。」
「ニャー。」
俺は良いよと言ってるつもりで応えた。
「ありがとう。」
ハリスは体が小さいから全身で俺の毛並みを堪能している。
「私も良い?」
ハーリーも俺を撫でてる二人を羨ましがってか聞いてきた。俺は仲間外れにするわけにはいかないのでハリスと同様に返事した
「ニャー。」
「ありがとう。リフォンって本当に優しいよね。」
そう言いながら撫でるハーリーの手は巧みに頭や顎を撫でてきて声が出そうなほど気持ちよかった。
三人は周りのことなんて露知らず俺の事を撫でているから周りにいるお客さんと店員さんが羨ましそうに見ているのに気づいていない。
「リフォンはいつまででも撫でれるね。」
「また撫でさせてくれる?」
ハリスが聞いてきたので俺は甘えた声で返事をした。
「ニャー。」
俺を撫でるタイムは終わり提供された品物を片付けた。俺たちは店を出て宿舎に戻った。
「今日はありがとう。私が元気ないって分かったから誘ってくれたんだよね。」
「後押ししてくれたのはリフォンなんだ。」
「ニャー。」
リベルは恥ずかしそうに応えるがその顔も女の子を虜にするには申し分ない。
「ありがとうリフォン。」
ハーリーは最後に俺を撫でて部屋に戻った。俺たちも部屋に戻りベッドの上でゴロゴロしていると電話が鳴りリベルが受話器を取った。
「もしもし。リーン兄さんどうしたの?ああ、手紙の返事が来たんだ。そっちに取りに行くね。」
リーンからだったようでリベルはリーンの部屋に手紙を取りに行った。
しばらくするとリベルが帰ってきた。その手には二通の手紙が握られていた。
(二通も来てたのか?)
(僕に一通とハーリーに一通だね。ハーリーに渡しに行きたいけど部屋どこか分からないから今度で良いか。)
(リベル宛の内容は?)
(読むね。ハーリーさんからの手紙を受け取りその日のうちに子爵家に手紙を送ったから安心しろ。話は変わるがリーンから事前指導に選ばれた事を聞いた。マイヤーたちにも話したら褒めちぎっていたぞ。もちろん私も二人のことを抱きしめてやりたくて仕方がない思いだ。二人なら大丈夫だと思うがこれから先手を抜く事は無いように。健康に気をつけて学園生活を送ってください。だって。)
(手紙からでもグロウっぽさが伝わってくるな。)
(確かにお父様って感じだよね。夏帰った時が楽しみだね。)
(そうだな。とびっきりの褒美があるかもな。)
俺たちは二人で笑い合った。
次回もリフォンの猫生をお楽しみに。