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106話 余波

ワイバーン討伐を終えてから三日経った。俺たちはいつもと変わりない日常を過ごしていた。そんなある日、俺たちの元にディーノがやってきた。


「三人にご助力願います!」


俺たちはただならぬディーノの気迫に動揺した。俺たちは何かを発することなくディーノについて行った。俺たちは何かが起こったことは理解できていたが、実際に何が起きているのかは分からずただ走った。しばらく走っているといつの間にか子爵領から出ており、断絶壁の方に向かっていることに気が付いた。俺たちは最初何のために呼ばれたのか分からなかったが、その現状を見てすぐに理解できた。なんと断絶壁に穴が開いていたのだ。すぐにワイバーンが明けたものだと分かったが、俺の風魔法は学園長ほどの練度はないし、これがどのようなイメージを持っているのかも分からない。俺はやる前に諦めようとしていた。でも俺がやらなかったら魔物たちが侵入する可能性は十分にある。俺がどんなイメージを持たせているのか思考を巡らせているとディーノが叫んだ。


「騎士団防御陣形!」


俺はその言葉に前を向くと、そこには今まで見たことないほどの魔物の群れがいた。一部だけがこちらに気づき向かってきていた。俺が魔物たちを討伐しようとするとリベルが俺の前に手を出し止めた。


「リフォンは断絶壁に集中して!」


俺はその言葉に断絶壁のイメージに集中した。空間を俺の風魔法で断絶するイメージをした。でもそんな単純なものではないと思い、強度を上げた。何度も何度も繰り返し強度を上げた。前提として俺の風魔法じゃ並みの魔物にも破られるぐらい脆い。だからその脆さを補うために風魔法を何重にも重ねるイメージを持たせたのだ。きっと俺と学園長の練度の差は年齢の差よりも離れているだろう。その練度の差を埋めるためには物量しかないと踏んだのだ。ワイバーンが開けた穴と同じぐらいの風魔法を作っては穴を埋めた。俺が良いだろうと思って手を止めて、リベルたちがどこにいるのか見渡すと断絶壁の外にいることに気がついた。俺は顔面からサーッと血の気が引くのが分かった。俺は考えるよりも先に行動していた。


「こっちに来い!」


自分で作った風魔法の一部を剥がし人が通れるぐらいの隙間を作ったのだ。でも魔物の手はとどまることを知らない。今誰かが欠れば全滅という場面だった。前衛を張ってくれている騎士たちは次第に体力が尽き始めた。俺は誰にも死んで欲しくない一心で騎士たちの前にいる魔物の群れめがけて火魔法を打った。魔物たちを一時的に退けることはできたが、前衛の騎士たちにも少し影響があったようで、着弾した瞬間騎士たちの熱っ!という言葉が聞こえてきた。申し訳ないと思う反面一瞬の隙ができたから騎士団は少し下がることができた。


「今全員が通れるほどの穴を開けました!俺の魔法が魔物に命中した瞬間飛び込んでください!」


ワイバーンと戦ったおかげかいつもより少しだけ冷静だった。戦いの場面を俯瞰できているかのような感覚だった。俺はどこに魔法を打つのが最適か瞬時に理解した。俺はバルンのような大型の魔物付近に大きな火の玉を打った。狙い通りその大型の魔物が中型の魔物たちの障壁となり騎士たちが安全に断絶壁の内側に避難できた。リベルとジュナは各々魔物を討伐しながら下がってきて騎士たちの後すぐに避難した。俺は魔物が入ってくる前に断絶壁の穴を塞ぎ、魔物が入ってこれないようにさらに上乗せして幾度か風魔法を使った。魔物たちが俺の風魔法に向かって突進していたがガラスにぶつかるように拒まれていた。俺はひと段落ついたことから大きなため息を吐いた。


「お疲れ様。」

「お疲れ様です!」


二人の労いの言葉に俺は一気に力が抜けた。慣れない高度な魔法に大勢の命を預かる立場に俺は心労が溜まっており、もう何もしたくなくなったのだ。俺の心情を察してかリベルが俺のことをおんぶしてくれた。俺は程よい温もりと揺れに眠ってしまった。


俺が目を覚ますと深夜だった。二人は俺の両隣で眠っていた。俺は今の今まで眠っていたせいで眠くなく、メガフォーン家を探索することにした。難なく二人の間から抜け出し本館に向かった。足音を出さないように風魔法で飛びながら移動した。


本館に入るとそこは昼間とは打って変わって不気味な雰囲気だった。夜だからいつもと見え方が違うのだ。静寂の中いつもと違う雰囲気に俺はワクワクしていた。とりあえず行ったことのある所から回ってみた。そこまで変わったことはなく面白みに欠けていた。


次は行ったことがない所に行くことにした。それは二階だ。今まで何の用もなかったし一階だけで事足りるから二階に上がる機会がなかったのだ。ワクワクしながら登ると二階の質素さに驚いた。ペタフォーン家なら装飾があったり絵画があったりしたが、メガフォーン家はそれらの類が一切ないどころか、意図的に置いていないように思えた。俺が味気のない廊下を進んでいくと聞き慣れない音が聞こえてきた。ほんの僅かだけ聞こえるそれは女性の嬌声のように聞こえた。俺は深夜探索なんてするものではないなと思い、聞こえてないフリをして離れに戻ることにした。


離れに戻った後半日寝ていたせいか、先ほどの嬌声のせいか分からないが、全然寝ることができなかった。

次回もお楽しみに


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