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105話 ワイバーン解体作業とパーティー

俺が魔力切れで倒れて寝ている最中、手の空いてる者は領民含め全員ワイバーンの解体作業に召集された。もちろんリベルとジュナも解体作業に尽力していた。ワイバーンの体長は裕に五メートルを超えており解体作業は困難を極めた。その解体作業は騎士団と魔法師団、領民の三つに別れて行われていた。


「もっと力入れろ!」

「やってるよ!」


騎士団の一人がワイバーンの鱗を切ろうとしているが、ワイバーンの鱗が硬く刃が通らないからイライラしているのだ。


「これでやってみろ。」


そう言って手渡されのはノコギリだった。本来ノコギリは木を切る道具だから最初、手渡された本人は訝しんだ。でもその思いとは裏腹にノコギリはワイバーンの鱗を簡単に切断した。


「マジかよ…」


ノコギリの切れ味に言葉が出ないようだった。一方魔法師団は持ち前の魔法を活かして、高温の火魔法で鱗を溶かし切ったり水を物凄いスピードで射出して切ったり、風で切ったりしていた。その様子に騎士団は対抗心を燃やしていた。


「負けてられねぇぞ!」

「おー!」

「しゃあ!」


騎士団はさっきよりノコギリのスピードを二倍以上に速めた。でもその威勢は長くは続かずすぐに息が上がっていた。


一方で領民はワイバーンを解体した時に出た素材や肉、素材にも肉にもならない屑などを仕分け、運搬していた。素材は冒険者ギルドに、肉は飯屋や肉屋に無償提供されていた。このことよりウェリルがワイバーンを自分だけのものにするのではなく、領民たちと分け合う領主としての考え方も見えた。


ワイバーンの鱗と皮を全て剥がすのに一日を要した。したがって、ワイバーンの肉は一時的に氷魔法で冷蔵保存された。


夜が明け再び解体作業が再開された。ワイバーンの体から腕、足、翼を外し食用として適している部位を切り分ける。そして昨日と同様にメガフォーン家で食べきれない分は飯屋や肉屋に提供する。これの繰り返しだ。


食用肉だけでも200キロを超えており、氷魔法で貫いた腹部の肉もあると仮定したら300キロは超えていたであろう。さらに、翼や尻尾など全てを含めるとその重さは約1トンを超える。


解体作業は日が落ちるまで行われた。丸二日かかった解体作業がようやく終わったのだ。それを祝してウェリルが領民たちにこう宣言した。


「ワイバーン討伐を祝してパーティーを行う。討伐してくれたリフォンはまだ目覚めていないが、彼の功労を讃えるために…」


ウェリルが領民たちに宣言している最中俺たちのことを起こしてくれていたメイドがウェリルに耳打ちをした。その内容にウェリルはニヤリと笑い領民たちの方に振り返り言った。


「リフォンが目覚めたそうだ!今こちらに向かっている。彼が来たら割れんばかりの拍手で迎えてくれ!」


俺がリベルとジュナに両手を引っ張られ歩いているとメガフォーン領の中央広場に着いた。その瞬間拍手が俺たちを襲った。俺は多数の人からの賞賛は初めてでどんな反応をすれば良いか分からなかったが、自然と笑顔になっていた。


「三人ともこちらに。」


そう促されて俺たちは広場のお立ち台のような所に上がった。俺たちが上がるとウェリルが続けた。


「今回ワイバーン討伐を成し遂げたリフォンだ。そしてリベルとジュナの二人はリフォンを精一杯サポートしてワイバーン討伐に寄与してくれた。ワイバーン討伐の英雄たちに今一度拍手を!」


俺たちを拍手が包んだ。その高揚感と幸福感は今までに感じたことないもので、鳥肌が立った。俺たちはその拍手に対してお辞儀をした。


「乾杯はリフォンに任せても良いかな?」


ウェリルが俺たちだけに聞こえる声で言った。俺はこういう機会は生まれて初めてだったからどのような事を言えば良いのか分からず、返答に困っているとリベルが俺の肩に手を置き頷いた。俺は全て察した。リベルがテレパシーで内容を教えてくれると。俺はウェリルにやる意思を告げた。その答えにウェリルも安心したように頷いた。


(私がワイバーンを討伐できた理由はウェリルさんのご助力のおかげです。)

「私がワイバーンを討伐できた理由はウェリルさんのご助力のおかげです。」


(ウェリルさんがいなかったらきっとワイバーンには逃げられていたと思います。)

「ウェリルさんがいなかったらきっとワイバーンには逃げられていたと思います。」


(ですのでこの乾杯はウェリルさんに捧げたいと思います。乾杯!)

「ですのでこの乾杯はウェリルさんに捧げたいと思います。乾杯!」


「「「乾杯!」」」


リベルの手助けのおかげでなんとか終えることができた。すると俺たちのことを起こしてくれていたメイドがやってきて少し離れたテーブルに案内してくれた。少し待っているとワイバーンのシチューとバケット、ローストビーフのように調理されたワイバーンの肉を運んでくれた。その料理はどれも美味しく普通の肉より口溶け滑らかで頬が落ちそうになった。俺たちがゆっくりと食事を堪能していると俺とリベルにワイングラスが運ばれてきた。俺はワインなんて飲んだことがなく断ろうかどうか悩んでいたが、リベルが僕を信じてとまだ訴えかけてきた。俺はリベルを信じてワインが注がれるのを待った。


(もし苦手だと思ったら遠慮なくメイドに言ってね。)


(分かった。)


俺たちがテレパシーで会話しているとワインが注がれた。リベルが匂いを嗅いでいる姿を見て俺も見様見真似で匂いを嗅いだ。俺はワインの匂いに少しだけ抵抗があったが、このような物だと思い飲むことにした。すると芳醇なブドウの香りが鼻を突き抜けた。その感覚に俺は少し驚いたが、これはこれで良いなと思いそのまま料理とワインを嗜んだ。


「美味しかったね。」


「ね。」


「そうですね。」


俺とリベルは程よい程度に酔いが回り気分が高揚していた。そんな様子をジュナは羨ましそうに見ていた。俺は初めての酔いに戸惑いを覚えつつも、この高揚感に虜になってしまいそうになった。


「楽しんでくれたかな?」


ウェリルが食べ終えた俺たちに話しかけてきた。俺とリベルの顔が少し紅潮していることに気がついたウェリルはそのまま話を続けた。


「ワインも気に入ってくれたようで良かったよ。私はもう少し領民たちと交流しているが、三人は自由なタイミングで戻ってもらって構わない。改めて礼を言うよ。本当にありがとう。君たちがいなければメガフォーン領は終わりだっただろう。褒美も用意しているから明日楽しみにしていてくれ。」


そう言うとウェリルは領民たちの元に戻った。俺たちはもうしばらくパーティーを楽しむことにした。

次回もお楽しみに


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