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101話 契約

俺たちが騎士団の後衛担当の依頼を終えてからしばらく経ち今後の依頼や収入源をどうしようか話し合っている最中、宿の扉を誰かがノックした。俺たちはこんな経験初めてだったので身構えた。ジュナに至っては火魔法を出していた。俺は流石にそれはダメだとジュナを止めて宿の扉を開けた。そこには思いもしない人物が立っていた。


「ウェリルさん…?」


そこには子爵領当主のウェリル・メガフォーンが立っていたのだ。その様子にリベルとジュナも驚きを隠せなかった。俺たちが動揺しているとウェリルが話始めた。


「今回は三人に話があるんだ。私の屋敷まで来てくれないか?」


俺たちは何か大変な事態なのではないかと思い、ウェリルの屋敷に赴いた。


屋敷に着くとメイド、執事たちに出迎えられた。ペタフォーン家で見慣れていたが、ジュナは初めての体験に目をキラキラさせていた。普通の人からしたらメイドや執事は滅多にお目にかかる機会はないだろう。


屋敷の中に入るとペタフォーン家とは一風変わった内装に驚いた。メガフォーン家は木造だったのだ。この世界では石造が普通だと考えていたからより一層驚いた。ただ木造だからと言って石造に劣っているわけではなく、内装に使われている木々はまるで高級旅館の檜風呂のような光沢を放っていた。前世ではお目にかかることができなかったような代物に出会えて俺は幸福だなと実感した。しばらく歩くと一室に通された。


「用意するから少し待っていてくれ。」


ウェリルがそう言い部屋を後にするとリベルとジュナが喋り出した。


「今まで見てきた木造の家はどれも裕福な家庭ではなかったからその素晴らしさを実感することができなかっけど、メガフォーン家に来て僕の浅はかな考えは一変したよ。」


「ですよね!今は冬のはずなのに屋敷の中はポカポカですごく過ごしやすいですし、落ち着く感じがしてリラックスできます!」


そんな話をしているとウェリルが部屋に戻ってきた。


「私の屋敷をそこまで褒めてくれる人はそういないからこちらまで嬉しくなってしまうよ。」


ウェリルはいつも顔が強張っていたから怖いイメージを持っていたけど、褒められて緩んだ顔はどこか少年ぽさを感じた。


「気を取り直して、三人を呼んだ理由は私個人の依頼だ。」


俺たちはどんな依頼なのか息を飲んだ。


「その依頼というのは、私専属の冒険者になってもらいたい。」


俺たちはその依頼にどう反応して良いか分からず、微笑んでみたり頷いてみたり考え込んでみたりした。俺たちの様子にウェリルの表情は曇った。そこでリベルが問いかけた。


「どんな内容ですか?」


ウェリルは待ってましたと表情を明るくして内容を読み上げた。


「まず、以前のような魔物討伐が主な依頼となる。そして次は私の騎士団ならびに魔法師団の特別講師だ。これだけの役回りだから報酬は弾ませてもらう。どうかな?」


俺はかなり良い条件に思えたが、一つ重要なことを見逃すところだった。


「期間はいつまでですか?」


俺が聞くとウェリルは表情を変えず言った。


「いつまででも。三人が特認実習をしていることは知っておりますゆえ長期間は求めていない。だから短期間でと思っている。だが、上限は決めていないから次に向かうまでと思っている。」


かなりの好条件に俺たちは即答した。


「「「お願いします。」」」


俺たちの即答にウェリルは今日一の笑顔を見せた。


「こちらこそよろしく頼む。」


俺たちはウェリルに騎士団と魔法師団の元に案内してもらった。騎士団では素振りをしている騎士たちがいた。そしてその騎士たちを教えていたのが騎士団長のディーノだった。遠目から見ても分かる筋肉に俺は見惚れていたらみんな魔法師団の所に向かっており俺はリベルに名前を呼ばれすぐにそっちに走った。魔法師団では俺たちがやっていたような指先に小さな火の玉を出す訓練や各々使える魔法を大きくそして高密度に出現させていた。こちらも騎士団と同じく魔法師団長のモーディが教えていた。


俺たちが見た限り指導者もいるし統率も取れているから俺たちを雇った理由なんてないように思えたのだが、それを察したのかウェリルが話してくれた。


「実は…ディーノとモーディがどうしても三人を雇ってくれとうるさくて…その二人だけなら良かったんだけど、騎士団も魔法師団も三人に魅了されたらしく、全員で抗議に来られたもんだから渋々三人を雇ったわけだ。」


俺たちはまさかそんな理由で雇われたとはつゆ知らず目が点になってしまった。そんな俺たちの反応を見てウェリルは申し訳ないと頭を下げた。俺たちはウェリルが謝る必要はないと頭を上げるように言ったが、ウェリルは少しの間頭を下げていた。


俺たちはひとしきり騎士団と魔法師団の施設を見せてもらいどんなことを教えられるか考えた。でも俺たちはまだ年端もいかない若人だ。大人に教鞭を振るうことは至難の業だ。だからと言って依頼を受けた以上中途半端は許されない。俺たちは自分ができる限りのことをした。リベルは繊細なイメージが得意なことから技術担当。ジュナは魔法の威力が高いことから火力担当。俺は使える魔法の種類が多いことから先見の明の先見を取った先見担当となった。


そんなことをしているとあっという間に日は沈んでいた。ウェリルは俺たちの真剣さを間近で見てくれており、君たちを雇って良かったと言ってくれた。そしてウェリルが去り際俺たちに向かって言った。


「誰も使ってない離れがあるからそこを使ってくれても構わない。私も滅多に立ち入らないから何があるか分からないが、危険はないはずだ。存分に使ってくれ。」


俺たちは宿代が浮いて尚且つ収入も得られることに歓喜した。早速宿から荷物を運び込み離れに移した。そんなことをして落ち着いていると一気に一日の疲れを感じて俺たちは泥のように眠った。

次回もお楽しみに


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