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justicia  作者: 清水京太郎
第一部
9/29

09.白い光

 「無抵抗の民を殺すとは、おまえら正気か!」

 

 「なんだ、てめえは」

 

武器を構える連中の後ろから、リーダーとおぼしき人物が前に出てきた。


 「この辺りの人間じゃねえな。その黒髪、北大陸か」

 

 「ボス、こっ、こいつだ!魔法を使ったやつは」

 

 「王族か」

 

ボスと呼ばれた男は、剣を抜いた。


 「なんで王族がここにいんのか知らんが、俺達のジャマするってんなら死んでもらうぜ」

 

 「お前がこの集団のボスか。こんな酷いことしやがって!今すぐここから手を引け!さもないと、」

 

アレンは、右腕を前に出した。


 「おっと、魔法は撃たない方がいいぜ」

 

 「なに、」

 

 「あれを見ろよ」

 

男が顎で指した方を見ると、赤ん坊を抱いた若い女の喉元にナイフが突き付けられていた。ナイフを持つ男の足元には、まだ白い煙が上がっている。


 「お前が俺達に魔法を撃てば、あの女は死ぬ。あの男に魔法を撃てば、女は助かるかも知れねえが、お前は俺達が殺す。さあ、どちらか選べよ」

 

ボスと呼ばれた男は、不敵な笑みを浮かべた。

 

 「・・・貴様、汚いぞ!」

 

 「そうよ、俺達は汚いのさ。金のためなら、人殺しだろうがなんだってやる。それが俺達、オルト団だ」

 

 (オルト団・・・北側に集中させたんじゃなかったのか・・・)

 

 「スキだらけだな!死ねー!」


いきなり男は斬りかかってきた!

素早い動きだが、その剣をギリギリのところでアレンはかわした。

が、しかし、


 ブシュ!

 

 「あうっ」

 

闇夜から飛んできた矢が、アレンの左腕を貫通した。

苦痛で顔をしかめ、傷口を押さえたアレンは思わず膝をついた。

押さえた指の間から、血が流れている。


 「へっ、俺に気をとられたな。その腕の痛み、もう魔法は使えまい」

 

 「くっ、くそー」

 

 ドカッ、

 

 「がはぁ」

 

アレンの背中に、容赦なく男の靴がめり込んだ。


 「戦場に丸腰でノコノコ来やがって、バカめ。魔法なんざ、遠くで撃つから意味があんだよ。接近戦にはこいつだぜ」

 

そう言いながら、男は自分の剣をなめた。


 「どこのおぼっちゃんか知らねえが、あの世で後悔するんだな」

 

男はアレンを踏みつけたまま、剣を振り上げた!


 「くたばれー!王族め!」


アレンの瞳に、振り下ろされる剣がスローモーションで映った。


  死ねない・・・こんなところで死ねない・・・

  僕は見るんだ、ハイルがどうなっているのか・・・

  そして会うんだ、兄さんに・・・

  まだ死ねない、こんなところで・・・こんなところで・・・

 

 「死んでたまるかあーー!」

 

 ヒューン、バキッ!

 

 「ぐはあ、」

 

あと少しでアレンの首を斬っていた男は、何かに体当たりされ、持っている剣ごと吹き飛ばされた。

地面に顔を打ちつけ、男は回転しながら数メートル先で止まった。

アレンは、顔を上げた。


 (なっ、何が起こったんだ・・・)

 

ふと前を見ると、1本の剣が落ちている。


 (この剣は、確か・・・)

 

それは、バラック小屋の窓の無い壁に飾られてあった剣だ。

アレンは剣帯に収まったままの剣を、血が流れる左手で取り、ふらつきながら起き上がった。


 (誰かがこの剣を投げてくれたのか・・・)


辺りを見回すが、そのような人物はいない。

ホコリを被っているが、ダークブラウンの見事な装飾の剣帯に収まっていた。

アレンは、ゆっくり剣を抜いた。

カシャンというロックが解除された金属音の後に、白銀の美しい刀身が姿を現す。

吹き飛ばされた男はゆっくり立ち上り、切れた口からブッと血を飛ばした。


 「痛てえな・・・何なんだ、今のは!お前の魔法か!」

 

起き上がった男を見て、アレンは不思議に思った。


 (この剣があたったくらいで、あんなに吹き飛ぶものなのか・・・)

 

 「妙なマネしやがって、覚悟はできてんだろな!」

 

オルト団のボスは、ナイフを持っている男の方を向いた。

 

 「おい、お前!その女をやれ!」

 

ボスの声に、我に返った男はナイフを振り上げた!


 「死ねえー!」

 

 「待て!やめろ!!」

 

その瞬間、アレンの頭にハイルで首をはねられ、血しぶきを上げる親子の姿がフラシュバックした。

空に向かって、血の帯を引きながら舞う2つの首。

男は、ナイフを女めがけて振り下ろした!


 「やめろおおおーー!」

 

 ピカー

 

 「うわぁー」

 

一瞬、辺りは昼間にように明るくなった。

ナイフを振り下ろした男は、強烈な光を全身に受けた。


 「うわはー、めっ、目がぁー、」

 

男はナイフを捨て、目を両手で押さえながら転げまわった。

 

 「いっ、今の光は・・・」

 

 「剣だ・・・あっ、あいつの剣が光った・・・」


 「それって・・・まさか・・・」

 

 「呪いだ!呪いの剣だあー!」

 

 ガシャン、ガシャン、ガシャン、


オルト団の男達は、次々と武器を捨てた。

 

 「逃げろー!」

 

 「ちょ、ちょっと待て!お前ら、逃げるんじゃねえー!」


ボスを残して、あっという間にオルト団は闇夜に消えた。

予想外の出来事に、アレンは驚きを隠せない。


 (・・・何が起こったんだ・・・今の光は、一体・・・)

 

右手に持った剣を見たが、光ってはいない。ごく普通の剣だ。


 (この剣が光った・・・のか?)


 「おっ、お前・・・もっ、もしかして・・・」

 

 「えっ?」

 

 ガシャン、

 

ボスの手から、剣が落ちた。


 「もしかして、何だ」

 

アレンは、ボスに近寄った。


 「うわあー、来るな!」

 

 「おい!待て!」

 

オルト団のボスは、後ろを向いて逃げ出した。

光を全身に浴びた男は、うつぶせたまま動かなくなっている。

アレンは、ナイフを突きつけられた女に近寄った。


 「あのー、大丈夫ですか?」

 

 「ヒイー、」

 

赤ん坊を抱いた女は、なぜか地面にひれ伏した。


 「あっ、あれっ、ちょっと・・・どうしたんですか、」

 

女は小刻みに震えながら、ひれ伏したまま何も答えない。

アレンが理解に苦しんでいると、クラスノダールが闇夜を走ってきた。


 「君は、さっきの・・・おい、腕をケガしてるじゃないか」

 

 「大丈夫だ。そんなことより早く火を、」

 

アレンは自分の服を引きちぎり、出血している腕にぐるぐると巻いた。 

クラスノダールは後ろから走ってくる部下に、燃えている小屋を消化するように命じた。


 「あなたー!」

 

赤ん坊を抱いた女は、クラスノダールに抱きついた。


 「無事だったか!」

 

 「この方に助けていただきました」

 

そう言った女は子供を抱えながら、改めてアレンの前で地面にひれ伏した。


 「おい、いくら命を助けてもらったからって、そこまですることないだろう」

 

 「あなた、あれを」


女の目線の先には、アレンが持つ剣があった。


 「あっ、あの剣は!」


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