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justicia  作者: 清水京太郎
第一部
8/29

08.レガテノウス

 バキ、バキッ

 

 ドサッ


 「今のは何の音だ!」

 

 「オルト団の奴らめ!もうきやがったのか!」

 

 「馬小屋の方だ!」

 

屋根に穴を開けて床に落ちたが、干し草がクッション代わりになり腰を強打しただけで何とか立ち上がった。


 「痛てて・・・」

 

 「動くな!」

 

集まってきた鋭い眼光の男達は、屋根から落ちてきた男を武器で取り囲んだ。


 「丸腰で黒髪、服は血だらけ。オルトの奴じゃねえな。誰だ、お前」

 

 「僕はアレンだ。アレン・ヴァン・ハイル」

 

 「なに!ハイルだと!」


 「オデーサ、こいつ殺していいよな!」

 

弓を持つ男が、アレンに向けた矢を放そうとした瞬間、

 

 「待て、」

 

取り囲んだ群衆の後ろから、声が聞こえた。

男達は武器を降ろし、声がした方に顔を向けた。

その男はゆっくりとした足取りで、騒ぎの中心に向け歩いてきた。


 「俺は、ここのリーダーをやっているクラスノダールだ。君、もしかして北大陸のハイル王国の王子か?」

 

 「ああ、そうだ。カルハラ王には認められてないけどね」

  

男達は再び武器をアレンに向けた。揺れる剣先が、いつでもアレンに斬りかかろうとしている。

しかし、クラスノダールが右手を軽く上げた。

男達は落胆の声で、武器を降ろした。


 「クラス!なぜだ!あのハイルの生き残りだぜ。しかも王子だとよ!」

 

 「クラーツ国も破壊され、グラソフも時間の問題だ!」

 

 「よし、こいつの息の根を止めて、奴らの見せしめにしようぜ!」

 

男が前に出てきて、アレンの首に手をかけた!

 

 「そうだ!殺せ!」

 

 「やっちまえ!」

 

 ガッシャーン!

 

馬用の水かめが、破壊された。

一瞬で静寂が戻った。

クラスノダールは、まだ水に濡れたままの剣を腰に収めた。


 「お前ら、少し落ち着けよ」


男は何か言いたそうだが、アレンから手を引いた。


 「君、そこから出てこっちに来てもらおうか」


馬小屋から出たアレンは、大勢に連行されるように、クラスノダールの後を歩いた。


 「中に入ってくれ」

 

そこはお世辞にも家とは言えないような、バラック小屋だった。

中に入ると、何枚もの板を繋ぎ合わせた木のテーブルと、手作りの椅子が散乱していた。どうやら会議の途中だったらしい。

窓が無い壁には、旗と一本の剣が飾ってある。


 「悪いが縛らせてもらう。王族には魔法があるからな」

 

アレンは木の根で作られたようなロープで手と足を縛られ、テーブルの末席に座らされた。

 

 「あんた達は何者なんだ」

 

クラスノダールは、テーブルの上座に座った。


 「俺達はカルス皇国の反乱軍、通称レガテノウスだ」

 

 「カルス皇国・・・まさか、南大陸のカルス皇国・・・なのか?」

 

 「おいおい、ここがどこか知らないとでも言うのか?」

 

 「・・・」

 

 「変わった奴だな・・・まあいい。で、お前の目的は何だ?なぜ、北のハイルから南大陸の端にあるカルスまで来た?」

 

 「なぜ僕に刃を向けるんだ」

 

 「俺の質問は無視か」

 

 「もしかして、ハイルの民が君達に何かしたとでも言うのか?」

 

馬小屋でアレンの首を絞めようとした男が、胸倉をつかんできた。


 「とぼけやがって。お前らのおかげで、北大陸は全滅したよ」

 

 「北大陸が全滅?何の話しだ?」

 

 「なんだとー!」

 

 「おい、止めろ。手を放せ」

 

 「ちっ、」

 

男は舌打ちしながら、アレンから手を放した。


 「お前には兄弟がいるよな?」

 

 「ああ、兄がいる」

 

 「そいつは、魔王だよ」

 

 「なに、」


アレンは、驚きを隠せなかった。

確かに、アクターが使おうとしてた魔族召喚魔法は、術者を魔族化してしまう代償があった。だが、それは魔法の使用から多くの日数をかけ、徐々に体を蝕んでいくもので、いきなり魔族に変身するわけではない。


 「バカなことを言うな。僕は、ついさっきまで兄と話しをしてたんだ。何が魔王だ、からかってるのか!」

 

バラック小屋に、爆笑が起こった。


 「わっはっは、こいつ何言ってんだ。じゃ、さっきまでハイルにいたってのか?」

 

 「どうやってここに来たんだ?お空でも飛んできたのかな?」

 

 「あ、それで馬小屋の屋根に落ちたのか!」

 

 「こいつはケッサクだぜ、がっはっは」

 

クラスノダールが、また右腕を上げた。

途端にその場が静かになった。

 

 「俺達は船で北へ渡っている吟遊詩人や旅商人から、ちゃんと話しを聞いてるんだ。魔族がハイルを支配したのは、3年前マランドがハイルに侵攻したときから始まったってな」

 

思わずアレンは立ち上がった!

 

 「さっ、3年前!」

 

 「そうだ」

 

 「・・・いっ、いま大陸歴何年だ」

 

 「572年だが、」

 

 (なんだって・・・じゃ、あの一瞬で3年が過ぎたというのか・・・)

 

 「どうした?」

 

 「それは本当か?」

 

 「ああ、嘘じゃない」


  一瞬で3年が過ぎた・・・

  そんな事あり得ない・・・

  しかし、あいつはマランドがハイルに侵攻したのを知っている・・・

  

  まっ、まさか・・・兄さんの、あの魔法、

  空間だけじゃなく、時間も超える魔法だったというのか・・・

  

 

 「どうした、なぜ急に黙る」

 

 「・・・クラスノダール、だったっけ」

 

 「そうだが?」

 

 「いま理解したよ・・・なぜ兄が魔王なのかもね」

 

 「そうか、それは良かった。じゃ、お前が兄貴の罪を全部背負おうって言うんだな」

 

 「いや、それは出来ない」

 

 「なんだと、」

 

その時、バラック小屋の扉がバアンと開いた。


 「クラス!奴らが来た!」

 

 「どっちからだ!」

 

 「北だ!数は、おおよそ200」

 

 「全部北側に集中させてきたか。よし、お前ら、準備しろ!」

 

 「おおーっ!」

 

クラスノダールの声を合図に、集まったレガテノウスのメンバーは次々と扉から外へ飛び出した。

あっという間に、バラック小屋は誰もいなくなった。

アレンが後ろを振り返ると、半開きの扉から男が現れた。


 「俺はリーダー補佐役のオデーサだ。俺達は今、カルス皇国が雇った傭兵の奴らと戦争になってる」

 

オデーサは、ズボンのサイドポケットからナイフを取り出し、アレンを縛っているロープを切った。


 「・・・逃がしてくれるのか、」

 

 「どういう事情か知らんが、お前は人間だ。魔族とは関係無いだろう。俺達の戦いに巻き込まれる前に、どこかへ逃げろ」

 

 「すっ、すまない」

 

 「俺が逃がしたなんて言うなよ」

 

 「ああ、わかってるよ」

 

 「後、この小屋を出て道沿いを右へ行け。そっちが南だ、間違っても左へは行くなよ。じゃ、気を付けてな」

 

そう言い残して、オデーサは闇夜に消えた。

アレンは縛られていた手首をさすりながら、言われた通り道沿いを南へ歩いた。


 (兄さんの転移魔法で、僕は3年後の未来へ転送された・・・・・・兄さん・・・3年の間に、一体何があったんだ・・・・・・教えてくれ、兄さん・・・ハイルは今、どうなっている・・・)

 

 

 ガシャーン、

 

 キャー

 

 (悲鳴?)

 

前方に見える明かりに、人が争っているシルエットが浮かんだ。


 「誰か!誰か助け」

 

 ブシュ!

 

 ドサッ

 

 「よし、この辺り一帯の小屋に火を放て!」

 

持っている松明に火をつけ、男達は次々とわらで作られた家に放火していった。


 「ははー、さすがによく燃えますね」

 

 「レガテノウスの奴ら、まさか俺達オルト団が二手に分かれているとは夢にも思わねえだろうな」

 

 「言われた通り、カルスの騎士を混ぜて人数合わせてしておきやした」

 

 「ふふ、騙されてきっと北側へ集中させてるぜ」

 

燃える小屋の中から、人が出てきた。


 ブシュ!

 

 ギャー!


 「殺せ殺せ!お前ら、こいつらは人間じゃねえ、ネズミだ!出てきたら、全部駆除しろ、いいな!」


燃える炎にあぶりだされ、赤ん坊を抱いた若い女が出てきた。


 「また、ネズミが出てきたぞ!」

 

 「わははー、死ねー、ドブネズミめ!」

 

男は、剣を振り上げた!


 バチバチバチ!

 

 「ぐわぁ、」

 

 ドサッ、

 

剣を振り上げた男は、雷撃を全身に受け白い煙を出しながら倒れた。

 

 「まっ、魔法!」

 

 「誰だ!」

 

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