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justicia  作者: 清水京太郎
第二部
28/29

28.疑念

 「待て!」

 

 「なんだ?死ぬのが怖くなったか、聖剣を持つ者よ」

 

 「お前は、この国を破壊するために来たわけではない」

 

 「だから、なんだ」

 

 「場所を変えさせてくれ」

 

 「なにっ?」

 

 「この城は壊したくない」

 

 「なんだそれは。俺に何の得がある」

 

 「お前達は人間を滅ぼし、この地上を支配するつもりだろ」

 

 「まあ、そうだが」

 

 「だったら、城は支配した場所の拠点の守りとして必要になるはずだ。それを壊すのは、不合理だぞ」

 

 「何を言うかと思えば、守りだと。全く意味がわからんな。魔族が支配した後、誰が俺達を攻撃するのだ」

 

 「肝心な事を忘れてるぞ」

 

 「なんだと、」

 

 「天界だ。天界は人間には手を出せないが、魔族となれば話しは別だ。天から降りて、お前ら魔族を必ず攻撃する」

 

 「それは、お前の希望だろ」

 

 「天上神は、我ら人間を作った。その人間が全て滅ぼされたとなると、黙っているはずがない。違うか?」

 

 まあ、確かにこの人間の言う事にも一理ある

 それに天界とは、いずれ決着を付ける必要があるからな・・・

 

リゲルの闘気は小さくなり、城の振動も止まった。


 「いいだろう。場所を変えてやる」

 

 (もしかして、アレン様は時間を稼ぐ作戦か・・・)

 

 「あそこにしよう」

 

リゲルが指さしたのは、北の森で一部平地になっている所だ。

茶色の地面が、円形になっているのが見える。


 「まずお前らが移動しろ。俺はここに残り、お前らの移動を見届けてから向かう」

 

 「俺達が逃げ出すとでも思っているのか」

 

 「人間など信用していない。何を企んでいるか、わからんからな」

 

 「いいだろう。だが、この城は絶対に壊すなよ」

 

 「ある程度時間が経っても貴様らが現れないときは、容赦なく破壊する」

 

アレンはくるりと背を向け、剣を背中に収めた。


 「移動しよう」

 

真剣な顔をしたライカルは、何も言わずアレンの後に続いた。

4人は北の森へ向かうべく、城の中庭を歩いた。

後ろを振り返ると、リゲルが城から見ている。


 「アレン様、これは時間稼ぎですか?」

 

 「いや、単純に城を壊されるのが嫌なだけだよ」

 

 「そうですか・・・対峙してわかりましたが、あの魔物かなり厄介です。弱点がどこにあるのか、検討がつきません」

 

 「ライカルの魔法には頼れないし、俺とリフィールで倒すしかないだろう」

 

 「御意。お任せください」

 

 「ステラ、」

 

 「なに?」

 

 「君の回復魔法は、どのくらいの距離まで届くんだ?」

 

ステラは、首を横に振った。


 「あたしは戦場の前線で治療したことがないのよ。回復魔法がどのくらいの範囲まで届くのか、わからないわ」

 

 「そうか、わかった。じゃ、ステラとライカルは距離を取って、後方で俺達を見ていてくれ。ライカルは、間違っても魔法を撃つなよ」


ライカルは答えず、真剣な顔で前方を見ている。

ステラは、何も言わないライカルを不思議に思った。


 「ライカル、どうしたの?」

 

 「何がだよ」

 

 「いつもだったら、『アレン、俺をなめんじゃねえ!』、みたいな事を言うと思うんだけど。もしかして、元気ない?」

 

 「あのブタの魔物に歯が立たないからって、落ち込むなよ」

 

 「リフィール、てめえは黙ってろ」

 

リフィールは、両手を広げた。

その後も無言だったライカルは、急に立ち止まった。


 「リフィール、ちょっと話しがある」

 

 「ん、なんだ?さっきは黙れと言ったくせに」

 

 「アレンとステラは、先に行ってくれ」

 

 「なによ。内緒の話しなんかやめてよね」

 

 「いいから行けよ」

 

 「なんですって、」

 

アレンは、ステラの手を握った。


 「行こう」

 

 「ちょ、ちょっと・・・いきなり、びっくりするじゃない・・・」

 

アレンはステラに微笑み、二人は手を繋いだまま歩き出した。

ライカルは、アレンの背中が見えなくなるのを確認した。


 「で、なんだ。内緒の話しというのは」

 

 「とぼけんな、リフィール。お前も気付いてるんだろ」

 

 「・・・アレン様のことか」

 

 「ああ、そうさ」

 

リフィールは、小さくため息をつく。


 「きっと、気のせい」


 「そんなわけあるか!紛れもねえ事実じゃねえか!」

 

ライカルは、リフィールに詰め寄った。


 「見ただろ。アレンは神器の聖剣で攻撃した。それで、あの程度だ」

 

 「・・・」

 

 「あの戦闘力、平均的な騎士よりちょっとマシなくらいだ。とてもじゃないが、神に選ばれた人間じゃない」

 

 「何が言いたい、」

 

 「ハッキリ言うぜ。アレンは、神に選ばれた者じゃねえ。あいつは普通の一般人だ」

 

 「聖剣を抜けるのは、神に選ばれた者だけだ。忘れたのか」

 

ライカルは、手元にあった草をプチっと抜いた。


 「思うんだけど、聖剣は壊れちまったんじゃねえのか」

 

 「おい、なんて事言うんだ!神への冒涜だぞ!」

 

 「事実を言ったまでさ」

 

 「壊れてなんかない。現に俺達は、聖剣に呼ばれて集まったじゃないか」


 「攻撃するところだよ」

 

 「えっ?」

 

 「攻撃する機能というか性能というか、その部分が壊れちまったんじゃねえのかって言ってんだよ」

 

 「そんなこと、あり得るのか」

 

 「じゃ説明しろよ!なんでアレンは神器の聖剣を使ってんのに、あんなにヘボなんだ!あいつが俺達の中で、一番強いはずじゃねえのか!」

 

 「そっ、それは・・・」

 

ライカルは、口にくわえた葉っぱをペッと吐き出した。


 「あれじゃ勝てねえぜ、あのブタ野郎に」

 

 「・・・だが、もう避けては通れないぞ」

 

 「そうだな、」

 

ライカルは、大きくため息をついた。


 「あのブタ野郎の親分みてえな奴もいるみたいだし・・・神の使徒っても、魔族から見りゃ大したことなかったのかもよ」

 

 「もう行こう。これ以上遅れると、ブタが暴れるぞ」

 

 「リフィール、」

 

 「なんだ、」

 

 「ここで終わりかもな、俺ら」


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