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justicia  作者: 清水京太郎
第二部
26/29

26.北の森

 「よっしゃ、俺の出番だ!」

 

ライカルは、リフィールの足元にある杖を手にしようとしたが、リフィールは足で踏んだ。


 「おい、どういうつもりだ」

 

 「あわてるな。ここはアバディン領内、まず王の見解を伺うのが筋だ」

 

 「ちっ、」

 

立ち上がったライカルは、ソファにドサッっと座りなおした。

スタイザは、ソファに座っている王に近づいた。


 「いかが致しましょうか」

 

 「単騎というのが気になるが・・・どこから接近しておるのだ、北の森からか?」

 

 「いえ、空からです」

 

 「なにっ」

 

スタイザは、飛び込んできた兵士に歩み寄った。

 

 「ワイバーンのような飛行する魔物に騎乗しているということか!」

 

 「報告からすれば、自らの羽で飛んでいるようです」

 

 「なんだと、」

 

飛行系の魔物となると、一般的に上位種が多い。

しかも単騎で襲撃に来るとなると、かなりの実力があると想像できる。

ハルファ王は、立ち上がった。


 「もっと詳細な情報をすぐ集めよ!今どの位置で、いかほどで城に到達するのか。どれくらいの高さを飛んでいるのか」


 「ははっ」

 

スタイザは、飛び出ようとする兵士に付け加えた。

 

 「後ろに追随する兵団の有無も確認するんだ。空だけなく地上もな」

 

 「かしこまりました!急ぎ確認します!」

 

飛び込んできた兵士は、すぐに出て行った。

突然の急報に応接室はざわついたが、ライカルは笑みを浮かべてハルファ王に言った。


 「王様よ、おれは神に選ばれた魔導士だ。陸だろうが空だろうが関係ねえ。俺の一撃で吹っ飛ばしてやるぜ」

 

 「心強いお言葉、ありがとうございます。ですが、我が軍もかなり減ったといはいえ、まだ3000程の兵士がおります。自分の城は自分で守る。このモットーで、これまで統率してまいりました。まずは、我らにお任せいただけないでしょうか」

 

ライカルは、大きくため息をつき両手を広げた。


 「そうかよ、わかった。じゃ、お前らでなんとかするんだな。言っとくが、俺は頼まれても手出ししないからな」

 

そう言うと、ライカルは出された茶菓子をバリバリやけ食いした。

アレンは、ハルファ王に向けて言った。


 「とにかく続報を待ちましょう。行動を決めるのは、それからで」

 

 「わかりました」


しばらく沈黙の時間が続いた。

リフィールは飲みほした紅茶のカップを置き、王に尋ねた。


 「ハルファ王、」

 

 「なんでしょうか」

 

 「それはそうと、どうしてアバディンには人がいないのですか?途中の村にも、全くいませんでしたが」

 

 「・・・お恥ずかしい話しですが、我らの神官長の造言が原因なのです」

 

 「造言?」

 

 「魔物の軍団はクラーツ、グラソフと続けざまに破壊しましたが、次に狙われるのはウベナ、オラニアではなく、このアバディンだと、神官長が民衆に言い回ったのです」

 

 「そりゃ造言じゃなく、ガチだったんじゃねえか」

 

 「どうして、神官長はそのようなことを」

 

ハルファ王は、首を横に振った。


 「わかりません」

 

 「わからない?」

 

 「半年ほど前、神官長は自からクラーツ、グラソフの現況を見てくると、配下5人の神官と共に視察の旅にでました」

 

 「それで、どうなりました?」

 

 「視察から帰ってきたのは、神官長一人だけでした。そして、彼は明らかに普通ではなくなっていたのです」

 

 「普通じゃない・・・それはどういう・・・」

 

 「なにかに憑りつかれたというか、正常な会話が出来ない状態でした」

 

 「・・・」

 

 「帰った次の日から、彼はアバディンの町や村を回り、民衆に向かって、『今すぐ逃げろ、魔物の軍団が攻めてくる』と叫んだのです」

 

 「それで誰もいなくなったと・・・それは、いつ頃の話しですか?」

 

 「神官長が帰ってきたのは、今から3週間程前のことです。民衆の間で彼の造言が、あっという間に広がり、ここ首都クラールはおろか、周辺の村々まで誰一人いなくなりました」

 

 「3週間前ってことは、最近ですわね。でも、ボトルム国からここへ来るまでに避難する人に一度も会わなかったけど、それはなぜかしら?」

 

 「それは、神官長が逃げるのは南のボトルムではなく、西のベルシフだと言ったからです」

 

 「なにか根拠があるですか?」

 

 「錯乱状態からの適当な発言でしょう、根拠などありません」

 

 「・・・で、その神官長は今どこに、」

 

 「民衆への不安を扇動した罪で捕え、城内の牢屋に閉じ込めましたが、もう手遅れでした」

 

 「そうですか・・・しかし、それは結果的に造言ではなく現実のものとなってしまったわけですね」

 

 「神官長が言いふらしたのは、魔物の軍団が攻めてくるというものです。もし本当に魔物が単騎ということであれば、アバディンへの侵攻というより、なにか別の目的があるのではないかと、」

 

 「別の目的、ですか・・・」

 

 「なんだよ、別の目的って」

 

ライカルは組んだ足をブラブラさせながら、王に質問した。

 

 「わたしの個人的な見解ですが、現れたタイミングからして、あなた方、神の使徒の皆様に関係があるのでは」

 

4人は思わず顔を見合わせた。

 

 「フッフッフッ、ガアッハッハッハッ、」


ライカルは、満面の笑みで立ち上がる。


 「そうだろ!やっぱそうじゃねえか。俺達の客だよ」

 

ライカルは、再びリフィールの前に仁王立ちした。


 「足、どけろよ」

 

無理やりサージュ・グロークを奪い取った。


 「王の見解は、今伺ったぜ」

 

 「なんだと」


 「俺様がどれだけ恐ろしいか、アバディンの連中にも見せてやるとしよう」

 

 「申し上げます!」

 

扉の向こう側で声がした。


 「来たか!入れ」

 

 「ははっ」

 

兵士の男は、扉を開け中に入ってきた。

先程、乱暴に扉を開けた兵士だ。


 「聞こう」

 

 「はっ。魔物は単騎であり、後方に軍団らしきものは、空及び陸とも確認できませんでした」

 

 「魔物と城との距離は」

 

 「ここより約1キロ先の北の森上空を、停止飛翔しております」

 

 「停止?移動していないということか」

 

 「同じ位置で空中で停止しております。また、地上からかなり高く、弓はおそらく届きません」

 

 「王よ、1キロであれば城のバルコニーから確認できます」

 

 「よし、移動しよう。神の使徒の皆様も、ごいっしょくださいますか」

 

リフィールは素早くアッシュ・ノワールを背負い、オセアオン・ブロンシュをアレンに、両手で手渡した。

 

 「もちろんです」


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