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justicia  作者: 清水京太郎
第二部
24/29

24.新たな旅立ち

 「で、あれからもう何日も経つけど、」

 

 「・・・」

 

 「獣一匹出てこないじゃねえか・・・」

 

 「・・・」

 

 「どうなってんだよ!」

 

 「おかしいですねー、」

 

その道は、ボトルム国領からアバディンへ続く真っすぐな道だ。

周辺は小高い山が続き、野盗が潜むには格好の地形。

レガテノウスの隠れ里を出発したアレン一行は、32回目の夕暮れを迎えていた。

アレン達4人と、地理に詳しいレガテノウスのメンバーを加えた話し合いの結果、

ステラの国クラーツへ最も短期間で到達できる行き方は、ボトルムからアバディンへ向かい、ウベナそしてオラニアを経由する工程と結論づけた。


 「ここは主街道なのに、誰一人すれ違っていないのはどうも変だな」

 

馬車に揺られながら、後方を見つめるリフィールがつぶやいた。


 「御者のおっさんよ。この道は野盗がでるって言わなかったっけ?」

 

 「えっ、ええ。わたしの経験では、アバディン国へ行くまでに3度はでくわすハズですが・・・」

 

 「ちっ、」

 

ライカルは、大きくため息をついた。


 「あーあ、魔力が溜まってきちまったぜ。ったく、野盗が出る前に俺が爆発しそうだよ」

 

ふてくされたライカルは、足を組んで目を閉じた。


 「おおっ!」

 

御者の声に、ライカルは飛び起きた!


 「出たか!盗賊か!」

 

 「いえ、村です。アバディンの手前にあるエドフ村が見えてきました」

 

 「なんだよ、村かよ」

 

二馬が引く馬車の前から、夕焼けのオレンジのシルエットに浮かぶ教会の十字架が見えた。


 「やった!じゃ、今日は野宿しなくてもいいのね!」

 

 「そのようだな」

 

馬車は、村の入り口と思われる手前で止まった。

御者は馬車を降り、馬に水を与えた。


 「ん?」

 

 「どしたの、ライカル」

 

 「何か妙だな」

 

リフィールはアレンの前に立ち、背中の斧に手をかけた。


 「アレン様、ちょっと変な感じがします」


見渡す限り民家はあるが、人の気配がまるでない。


 「廃村か?」

 

 「違うな」

 

 「どうしてわかる」

 

 「あれを見ろよ」

 

リフィールが指さした方向をライカルが見ると、小屋にヤギがいた。

口をもごもご動かして、何かを食べている。

ライカルは、馬車に置いた杖を手に取った。


 「やっと面白くなってきたじゃねえか」

 

 「お前が期待している事には、おそらくならんぞ」

 

 「なんでだよ、」

 

アレン達は、村の中へと入っていった。


 「これは、あれだわね・・・襲われたんじゃなくて、」

 

 「逃げ出した」

 

 「きっとそうよ」

 

強い風が、開けっ放しの民家の扉をバタンと閉めた。

アレン達は、何件かの家の中を覗いて見たが誰もいない。テーブルの上には、カビが生えた食べかけの食事が放置されている。


 「最近いなくなったようだな」

 

 「様子からして、あわてて出ていった感じでしょうか」

 

 「一体何があったんだ」

 

 「アレン様、どうしましょうか」

 

 「もうじき夜になる。申し訳ないが、今日はどこかの空き家に泊まらせてもらおう」

 

 「かしこまりました。我らと御者が休めるような家を探してまいります」

 

 「頼んだ」

 

リフィールは軽く一礼すると、サッと消えた。

陽が沈んだばかりの群青の空に、白く一番星が輝いていた。




謎の村人喪失から、一夜が明けた。

原因がつかめないまま、アレン達は出発の用意をした。

表へ出ると、御者は既に馬車をスタンバイさせている。


 「皆さん、お揃いですね」

 

 「今日もよろしくお願いします」

 

 「アレン様、目指すアバディンはもう目の前ですよ」

 

アレン達を乗せて、馬車は動き出した。

 

 「リフィール、結局この村には誰もいなかったわね」

 

 「そうですね、」

 

 「何があったのかなー、」

 

 「アバディンへ行けば、原因をつかめるかもしれませんよ」

 

レガテノウスを出発してから、ずっと天候には恵まれた。

今日も澄み切った青空が続く彼方に、やがて城壁が見えてきた。



 「止まれ」

 

2人の門番が、持っている槍を交差させ馬車を止めた。

アレン達は、馬車を降りる。


 「全員通行証を見せろ」

 

リフィール、ライカル、そして御者の3人は正規の大陸通行証を持っていたが、アレンとステラのそれは、レガテノウスが偽造したものだ。


 「目的はなんだ」

 

 「わたしは親族がアバディンに暮らしているので会いに来ました。後ろの4人は旅人で、途中で馬車に乗せたんですよ」

 

 「旅人?」

 

質問した門番が、御者の後ろにいるアレン達を見た。

それぞれの武器は、事前に馬車の荷物の下に隠してある。

ステラは、耳を隠すための帽子を手で引っ張り深くかぶった。

 

 「お前ら、本当に旅人か?」

 

 「なんだt」

 

ステラが、素早くライカルの口を手で押えた。


 「4人いっしょってわけじゃないのですよ。街道で偶然出会っただけです」

 

リフィールは手ぶりを交えて、穏やかに話した。

門番はアレン達の中に割って入り、まるで臭いをかぐように顔を近づけた。

キツイ口臭に、ステラは思わず顔をそむける。

馬車の中も、なめるように確認した。


 「ふん、こんなタイミングでアバディンを訪れるとは、運の無い連中だ。ま、いいだろう、通れ」

 

城壁内にいる門番が、槍を垂直に持ち替えた。


 「では、入らせていただきます」

 

御者は馬車に乗り、馬に鞭を入れた。

アレン達は、そのまま歩いて城壁を通過しようとした。


 「待て」

 

城壁内の門番が、腕を伸ばしアレンを止めた。

 

 「なんでしょうか」

 

 「もう一度通行証を見せろ」

 

アレン達は、通行証を見せた。


 「貴様とこの女の通行証だけ、やけに新しいな」


ライカルは、まずいという表情を浮かべた。


 「この通行証、一度も使ったことないんじゃないか?それに、その黒髪。お前、南大陸の人間じゃないな」

 

外にいた門番は、ただならぬ雰囲気に駆け寄ってきた。


 「どうした、何かあったか?」

 

 「この黒髪のガキ、怪しいぞ」

 

 「なに」

 

二人の門番は、アレンの顔前に槍を突き出した。


 「何をもめている」

 

白い鎧をまとい、透き通った薄いブルーの瞳の銀髪の青年が現れた。

鎧の胸には、アバディンの国章が描かれている。


 「これは、スタイザ様」

 

門番達は槍を納め、スタイザと呼ばれた青年に頭を下げた。


 「何事だ」

 

 「はっ、この黒髪の男ですが南大陸の者ではなく、通行証もまっさらで偽造ではないかと思われます」

 

 「なんだと」

 

スタイザと呼ばれた青年は、アレン達を見るなりニヤリと笑みを浮かべた。


 「衛兵を呼べ。この者達を城へ連行する」

 

 「ははっ!」


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