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justicia  作者: 清水京太郎
第一部
22/29

22.森の爆発

 「うっ、」

 

キーンという耳鳴りと、軽いめまいを伴いながらアレンは目を開けた。

まだ混濁する意識の中、頭を横に2,3回振った。

音もなく風に揺れるカーテンが、穏やかな午後の日差しを遮っていた。

サイアクな気分だが、リズミカルに揺れるカーテンに心が和んだ。


 (ここは・・・)

 

ベッドから起き上がった。身体が石のように重い。

木の床に足をつけた。ベッドの脇に、聖剣と揃えてある靴が見えた。

身体の重心が、安定しない。

立ち上がろうとしたが、またベッドに腰が落ちた。

ため息をつきながらも、記憶の糸をたどる。


 「確か、ステラに必ず魔王を倒してと言われて、」

 

その後の記憶が無い。

カーテン越しに窓の外を見ると、見える景色にどこか見覚えがあった。

 

 ガチャ、

 

 「あっ!」

 

 「あなたは、」

 

 「よかった・・・本当に・・・よかった・・・」

 

 「あの時の、」

 

 「・・・はい、クラスノダールの妻、ユーリです」

 

 「じゃ、ここはレガテノウスなんだ」

 

 「いっ、今暖かい食べ物を持ってきますね」

 

涙を手で拭きながら、ユーリがドアを閉めた、その時、


 ドドーン!

 

突然、爆発音が聞こえた!

同時に家が、ガタガタと振動する。

アレンは、急いで窓から外を見た。

遠くの森で白い煙が上がっている。


 「あっ!」

 

同じ場所で閃光と共に爆発が見えた。

木々が吹き飛び、地面の土と共に空中に舞っている。

アレンは思わず、身をかがめた。


 ドーン、ガタガタガタ、

 

遅れてきた爆発音と衝撃波が、また家を振動させた。

カーテンが激しく揺れている。窓ガラスは今にも割れそうだ。


身をかがめたままでいたが、どうやら次は無さそうだ。

ゆっくり頭を出して、窓から外を見た。

青い空に高く昇った白い煙が見える。

アレンは、靴と剣を取り窓から外へ飛び出た。


 (誰の仕業だ、またオルト団の奴らか・・・しかし、今の爆発、尋常じゃないぞ)

 

煙を目指して全力で走ったが、足元がおぼつかない。

息が切れて、足が止まった。


 「ハァハァ、くそっ、全然息が続かない」

 

流れてきた汗を腕で拭き、足を引きずりながらアレンは走った。

やがて、根っこがむきだしの大木が幾重にも重なる中、背を向ける人の姿が見えた。大きく陥没したベージュの地面が、その男の前に広がっている。


 (爆発の魔法か・・・こんな広範囲な魔法を使うなんて何者だ。まだ少年のようだが・・・)

 

 「やっと目を覚ましたのか。永遠に、閉じたままかと思ったぜ」


 (え、ウソだ・・・こんな距離があるのに・・・どうしてわかった・・・)

 

ライカルはクルッと向きを変え、遠くにいる驚いた顔のアレンを見た。


 「わかるんだよ、その剣を持ってりゃな」


アレンは、その男の元へ近寄った。

 

 「君のその声、聞き覚えがあるぞ」

 

 「そうだろうな、」

 

 「君は僕のことを知っているのか?」

 

 「ああ、知ってるさ。お前は、ハイル王国の王子。そして、俺の故郷グラソフをズタボロにしやがった魔王の弟だ」

 

 「君は、魔族に滅ぼされた国の民か」

 

 「そうだ。そして、神器サージュ・グロークを持つ者」

 

 「神器だって!」


 「アレン様、お目覚めになられたのですね」

 

 「うわぁ!」

 

背後から急にかけられた声に、アレンは思わず飛び上がった。

 

 「驚かして申し訳ございません。わたしは、神器アッシュ・ノワールを持つ者、リフィールでございます」

 

 「あっ、あなたも神器を」

 

 「聖女含めた我ら3名、アレン様に呼ばれて参上しております」

 

 「僕が呼んだ?」

 

 「はい、その聖剣オセアオン・ブロンシュが、今も我ら神器を持つ者を呼んでおります」

 

アレンは、手に持っている聖剣を見た。


 「これが君達を、」

 

 「まだ、お顔が青いようですね。お休みになられた方が、よろしいかと具申致します」

 

 「僕は、どのくらい眠っていたんですか?」

 

 「カルス皇国で倒れられてから、一週間が経ちました」

 

 「そっ、そんなに・・・」

 

手に杖を持ったライカルが、アレンの前まで来た。


 「これから俺達は、ステラの杖を探しに行く。あいつの神器をな」

 

 「カルスに奪われたのか?」

 

 「いや違う。ステラの母親が持っていたらしいぜ」

 

 「そうか、まだ聖女じゃなかったから」

 

 「場所は、クラーツだ」

 

 「幻惑の森の近くの国だな」

 

 「そうだ。杖が見つかったら、次はアレン、お前の兄貴をぶちのめしに行くぜ」

 

 「・・・」

 

 「もちろん、いいんだよな」


ライカルは、アレンをにらんだ。


 「ああ、それでいい」

 

 「ここからクラーツまで長旅だ。ま、とりあえず元気になってくれ」

 

 「明日出発しよう」

 

 「なんだと、マジで言ってるのか」

 

リフィールは、アレンの前に跪いた。


 「アレン様、そのご様子では万全ではありません。どうか、しばらくはご静養なさってください」

 

 「リフィールさん、」

 

 「リフィール、で結構でございます」

 

 「リッ、リフィール」

 

 「ははっ!」

 

 「僕は一日も早く、兄の元へ行きたいんだ。時間が経てば経つほど、兄の魔物化が進むんだよ」

 

 「しかし、」

 

 「大丈夫だ、心配ない。今夜は、体力がつく物をたくさん食べるさ」

 

 「・・・かしこまりました」

 

 「へっ、無理するのはいいが、途中でヘバったりすんじゃねえぞ」

 

アレンは、キリッとした瞳でライカルを見た。


 「君の名は?」

 

 「ライカルだ」

 

 「よろしく、ライカル」

 

 「ああ、こちらこそよろしく。平和の国グラソフをぶっ壊したアレンさん」


リフィールは跪きながらも、背中の斧に手をかけた。


 「ところで、ステラは来てないみたいですね」

 

 「聖女は、ここに来て以来ずっと案内された小屋にこもっております」

 

 「そうですか、」

 

 「アレン様、」

 

 「なんですか?」

 

 「わたし達に、敬語はおやめください」

 

 「えっ、でも・・・」

 

 「あなた様は、我々の主でございますので」

 

 「えっ、主?僕が?」

 

 「はい、」

 

 「そっ、そう・・・なんですか?」

 

 「そうです」

 

ライカルは、あきれた顔で何も言わず横を向いた。


 「わかった・・・そうさせてもらうよ」

 

 「我らに、なんなりとご命令ください」

 

 「じゃ、さっそくだけど、今から集まって、これからの事を話しませんか」

 

 「承知しました」

 

アレンは、横を向いているライカルを見た。

 

 「ライカル、」

 

 「なんですか、アレン様」

 

 「どうして君は、森を爆発させたんだ」

 

 「簡単な事さ」

 

 「なんだ、」

 

 「溜まり過ぎた魔力の消費、いわゆるガス抜きってやつだ」

 

 「あんな強力な爆発魔法。レガテノウスの民に、死傷者が出ているかもしれないぞ」

 

 「心配すんなって。ちゃんと計算して撃ってるから、」

 

 「計算?」

 

 「どこも割れてないだろ?ガラス」

 

 「だからと言って、」

 

ライカルは、アレンの肩をポンと叩いた。


 「そんな恐い顔すんなよ。行こうか、作戦会議ってやつだろ」


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