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justicia  作者: 清水京太郎
第一部
20/29

20.蝶

リフィールは、身に着けていた服を引きちぎり、ライカルの腕と足を縛った。

そして、芋虫のように地面に転がす。


 「おっさん!何しやがる」

 

 「お前は危険だ。ゆえに、まずは自由を奪った」

 

 「まずは、って何だよ」

 

 「これから、お前が殺そうとした我が主の元へ行き、お前の処遇をお伺いする」

 

 「なんだと!」

 

 「もし我が主がお前を殺せと言うのなら、『喜んで』と答えよう」

 

 「そうかい。なら、早く行った方がいいぜ」

 

 「なぜだ、」

 

 「死にかけてんぜ、主殿」

 

 「なんだと!」

 

 シュッ!

 

木の葉を舞散らせて、リフィールの姿は消えた。


 「きっ、消えやがった・・・」

 

次の瞬間、リフィールはアレンの前に砂埃を上げて出現した。


 「我が主!これは一体!」

 

 「うわぁ!あなた、なに!どこから来たのよ!」

 

リフィールは、アレンを突き刺しているナイフを見た。

そして顔を上げ、鋭い視線をステラに向ける。


 「あなたは聖女ですね」

 

 「そっ、そうだけど・・・」

 

 「どうして、我らの主を回復させないのですか」

 

 「・・・あっ、あなたも呼ばれて来たのね」

 

 「どうしてですか、」

 

 「そっ、それは・・・こいつが・・・ママの敵だから・・・」

 

 「おい、エルフ女!なんだ、その反応は!俺の時と全然ちげーんだけど、」

 

 「うるさい!このバトルジャンキー!」

 

 「いくらそのおっさんがイケメンだからって、露骨なんだよ、てめーは」

 

 「だまれ!魔法オタク」

 

 「お前・・・腕と足を縛ったはずだが、」

 

ライカルは、不敵に笑った。


 「あれくらいで、この俺様をどうにか出来ると思ってんの?」


 「そうか。今度主に魔法を撃つ素振りを見せたら、即斬るぞ」

 

 「わあってるよ。さすがの俺様も、神器を持つ者には逆らわないぜ」

 

 「ウソじゃないだろうな」

 

 「んなことより、大丈夫か、こいつ」

 

リフィールは、アレンの手首を握った。


 「おっさん、医者か?」


 「脈が微弱で不整だ。もう、長くない」

 

 「マジか!」

 

 「今、笑ったか?笑ったな」

 

リフィールは、背中の斧に手をかけた。

 

 「笑ってないって!真顔だよ、真顔」

 

 「聖女よ、もう一刻の猶予もありません。今すぐ我らの主を救ってください」


リフィールは、真剣な眼差しでステラを見つめた。


 「いっ、・・・イヤよ」

 

 「だから、なんで顔赤くしてんだよ」

 

その時、荒い呼吸のアレンが口を開いた。

 

 「みっ、みんな・・・」

 

 「おっ、しゃべりやがった」

 

 「はあはあ・・・みっ、皆は・・・僕を・・・殺したいんだろ・・・」

 

 「ああ、そうさ。てめーの兄貴は、俺の故郷をズタボロにしやがったからな。弟のおめーも同罪だ」

 

 「・・・」

 

 「はあはあ・・・だったら・・・殺すがいいさ・・・」

 

 「おい、聞いたかおっさん。主様のお墨付きをもらったぜ。これで俺がこいつを殺しても、文句はねえよな」

 

 「気のせいだ」

 

 「何が気のせいだ!ふざけんな。遠慮なく、いかしてもらうぜ!エルフ女、次はジャマすんじゃねえぞ」

 

ライカルは、杖を持つ手を上げた。

 

 「・・・だっ、だけど・・・こっ、これだけは・・・言わせてくれ・・・」

 

 「なんだよ、」

 

 「もっ、もし・・・僕の・・・あっ、兄が・・・本当に魔王だとしたら・・・はあはあ・・・たっ、倒せるのは・・・聖剣が使える僕だけだ・・・」

 

 「うっ、」

 

 「その通りです、我が主!」

 

 「・・・」

 

 「そっ、その僕を・・・殺してもいいのか・・・・・・」


 「・・・」

 

 「おい、わかったらその手を降ろせ」

 

 「ちっ、くそったれめ」

 

ライカルは、手を降ろした。


 がはぁ、

 

アレンは、大量に吐血した。

ステラの足元に、アレンが吐き出した赤い血だまりができた。

リフィールは、目を閉じてアレンの脈を読み取った。


 「もうダメだ。あと10数えたら死ぬ」

 

 「おっ、おい!いきなりかよ!」

 

 「10」

 

 「ちょっと待て!勝手にカウントダウンすんな!」

 

 「9」

 

 「エルフ女!こいつマジで死ぬぞ!」

 

 「はぁー?さっきまで殺そうとしてたくせに、急に何言ってんのよ!」

 

 「8」

 

 「こいつがいなけりゃ、魔王倒せないって話しなんだよ!」

 

 「そんなこと、やってみないとわかんないじゃない!」

 

 「7」

 

 「6」

 

 「もし、マジで聖剣が必要だったら、どうすんだ」

 

 「そっ、それは・・・」

 

ステラの手が震えだした。

助けるのか!このまま殺すのか!苦悩の表情で、ステラはギュっと目を閉じた。

 

 「5」

 

 「こいつ死んでもいいんだな!魔王倒せなくなるぞ!」

  

その時、真っ白な蝶がどこからかヒラヒラと舞い降りて、アレンを刺しているナイフの柄に止まった。


 (・・・白いアゲハ蝶・・・まさか、神の化身なの・・・)

 

白い蝶は、ナイフの柄の上で羽を閉じたり開いたりしている。


 (・・・ママ・・・あたしは、どうすればいいの・・・ママ、教えて!)


 「4」

 

 「おっ、おい!エルフ女!」

 

 「3」

 

 「何とか言えよ!」

 

 「2」

 

 「おいって!」

 

 「1」

 

 「あー、もうダメだ!間に合わねえ!」

 

ステラの震えが止まった!と同時に、緑色の光がアレンを包み込んだ!


 「0」

 

 

目を閉じていた蒼白のアレンは、再び太陽の光を見た。

ナイフに止まっていた白い蝶は、いつの間にか姿が見えなくなった。


 「・・・僕は、助かったのか」

 

ステラは、アレンを突き刺していたナイフを抜いた。

抜くと同時に開いた傷は完全に閉じ、なにも無かったような皮膚になっている。

アレンは、起き上がった。


 (これが聖女のチカラか・・・やっぱスゲーぜ)

  

 「君が助けてくれたんだね」

 

 「ねえ・・・これだけは約束してよ」

 

うつむいたステラの頬に、一筋の涙が流れた。


 「必ず魔王を倒して」

 

アレンは、自身の足で立ち上がった。


 「ああ、約束する。そのために、神は僕を選んだ。兄を止められるのは、僕だけだ」

 

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