02.急報
「はあはあ・・・おっ、王に・・・王に申し上げます!」
神官から定時報告を受けていたハイル王、カルハラ・ヴァン・ハイルは、玉座の間に飛び込んできた大臣の普通ではない声に顔を上げた。
「どうした、何をあわてておる」
飛び込んできた大臣は、近衛兵の視線を気にしながらも玉座に向けて小走りに近寄り、そして跪いた。
「はあはあ・・・しっ、失礼ながら、王に耳打ちしたい・・・義がございます・・・」
「耳打ち?」
肩で息をしている大臣は、切羽詰まった表情で王を見ている。
「・・・よかろう、許可する」
報告をしていた神官は、不思議そうな顔をしながら、書類を閉じ飛び込んできた大臣の後ろに下がった。
大臣は、少しよろめきながら立ち上がり、王に近づき左の耳へ顔を寄せた。
「なに!」
大きな声に驚いた神官や近衛兵は、一斉に王の方を見た。
見開いた目で王が大臣を見たその額から、一筋の汗が流れた。
「その話、間違いないのか」
(まっ、間違いございません・・・情報を提供した村人が・・・採れたばかりの金を・・・持っておりました)
「・・・発見されてどのくらいの時間が立ったのだ」
(おっ、おそらく、いっ、1日は・・・経過しているかと・・・)
「なんだと!この馬鹿者めが!」
玉座から立ち上がった王に、大臣は吹き飛ばされた。
「アドナン、アドナンはおるか!」
雷のような王の声に、入口付近にいた近衛兵の一人が王立軍の指揮官がいる部屋に飛び込んだ。
バアーン!
「アドナン様!」
ガチャーン
乱暴に開けられた扉に驚き、アドナンは口に運ぼうとしたワイングラスを落としてしまった。
「おっ、おい!何事だ!」
「王が、王がお呼びです!急ぎ玉座の間に!」
王の雷声に、玉座の間は一瞬にして緊迫の場になった。
「アドナン!アドナンはおらぬのか!」
間もなく、転がるようにして玉座の間にアドナンが入ってきた。
「こっ、ここに!」
「アドナン!ティルーヤに軍隊を派遣しろ!今すぐだ!」
「ティ、ティルーヤの村に?何ゆえでございますか?」
「行けばわかる!」
「しっ、しかし、我が村に軍を派遣するなどとは、一体何が、」
「うるさい!つべこべ言うな!すぐ行け!そして、村全体を封鎖するのだ!」
「はっ、ははーっ」
アドナンは全く訳がわからないまま、部隊を編制すべく玉座の間を飛び出した。
王は、ドサっと玉座に倒れた。
( くそー、なんたることだ・・・)
こぶしで玉座を叩く王は、眉間にしわを寄せ周りを見渡した。
「アクターはどこだ」
近衛兵と神官は顔を見合わせたが、一人の神官が前に出た。
「アレン様といっしょに、お出掛けされておられますが・・・」
「どこだと聞いておるのだ!」
「ばっ、場所までは・・・」
王ににらまれた神官は、ひれ伏した。
「ファルを飛ばせば、いいんじゃないすか?」
玉座の間の奥から声が聞こえた。
「ブライダー、お主は黙っておれ!」
「だって、それが一番話し早いっしょ。ねー、」
周りの騎士は、黙って顔を伏せた。
「あっ、あれー?」
「今発言した者、ここに来い」
王の低い声にも物怖じせず、ブライダーと呼ばれた青年騎士は玉座の前に出てきた。
「ファルとは何だ」
「えっと、アクター王子が飼ってるデカイ鳥っすよ。確か、ゴールデン・イーグルとかいう種類だっけかなー。とにかくデカイっす」
「おい!それが王に対する口の利き方か!立ったまま、しゃべりおって!貴様という奴は、今日こそ許さんぞ!」
白髭の近衛騎士団長は、腰の剣を抜いた。
しかし王の右手に制され、何か言いたそうな口をゆがめながらも、しぶしぶ剣を収めた。
「お前は、そのファルとやらをアクターの元へ飛ばせるのか?」
「あいつは、いつもアクター王子の周りを飛んでますからねー。今日はなぜか鎖に繋がれてましたけど、鎖を離すと勝手に飛んでくんじゃないすか?」
「それで、アクターにどうやって城に戻るように伝える」
「王子ならわかるはずっすよ。繋がれているはずのファルが、飛んでくればね」
「・・・よし、飛ばせ」
「へーい」
ブライダーは、両手を頭の後ろに組みながら、クルリと反転した。
近衛騎士団長は、ワナワナと震える手で、剣に手をかけ王を見たが、王は真っすぐ前を向いたままだ。
白髭の団長を横目で見て、ブライダーはニヤリと笑みを浮かべた。




