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justicia  作者: 清水京太郎
第一部
16/29

16.ナイフ

 「どうだ、外れそうか?」

 

 「ちっ、この鍵は今までのやつとは違うな」

 

オデーサは、少女の牢屋に掛けられた鍵の開錠に手間取っていた。


 「しかも、ご丁寧に2個もつけやがって。クソがっ」

 

少女の指が、ある部分を指した。


 「そうか!オデーサ、これだ」

 

 「んっ?」

 

クラスノダールが見ているのは、牢屋扉の開閉部の金具だった。


 「あっ、なるほど!鍵を開けるより、こいつを壊した方が話しが早いってわけか!」

 

オデーサは腰の短剣を取り、柄の部分で蝶つがいを叩いた。

錆びまくっていたそれは、3回目の打撃で外れて石の床に落ちた。

ついに、少女の牢屋の扉は開けられた。

屈みながらゆっくりと牢屋を出る少女を、クラスノダールとオデーサは跪いて出迎えた。


 「聖女様、お名前を伺ってもよろしいでしょうか」

 

 「・・・ステラよ」

 

 「ステラ様、どうか我らと共にごいっしょ下さい」

 

 「あなた達は何者?」

 

 「我らはレガテノウス。カルス皇国の反乱軍です」

 

 「そう。いいわ、行きましょう」

 

 「ありがとうございます」

 

 (カルスの反乱軍か・・・どうせ、ケガ人の手当にあたしを使うんでしょうけど・・・)


オデーサは新しい松明に火をつけ、クラスノダールに渡した。


 「では、参りましょう」

 

ステラを加えた4人は、緊急避難通路と思われる道を戻った。


 (でも、あいつの言ってた白いドラゴンって一体何なの・・・あたしと誰かを間違えてる?)


最後尾を歩いているステラは、アレンの背中にある剣を見る。


 (あの剣・・・あたしを呼んでいるのは、あの剣か・・・こいつが聖剣を抜いた?・・・ちょっと、信じられないけど・・・ま、関係ないか)

 

 「ねえ、」

 

クラスノダールは、歩くを止めた。


 「ステラ様、どうかされましたか?」

 

 「さっきのナイフ、貸してくれない?髪がジャマで、前が見えないから」

 

 「かしこまりました」

 

クラスノダールが目で合図すると、オデーサは短剣をステラに渡した。


 「どうぞ、」


 「ありがと」

 

 「切り終わるまで、お待ちしています」

 

 「気にしないで、歩きながら切れるから」

 

 「そうですか。それでは、行きます」

 

クラスノダール一行は、また歩き出した。

そして見えてきた石の階段を登り、4人は山小屋に到着。

まだ陽は高く、小屋の中は明るい。


 「あなた、名前は?」

 

声をかけられたアレンは、後ろを振り向いた。


 「アレンです」

 

 「王族でしょ?フルネームで言ってよ」

 

 「アレン・ヴァン・ハイルですが、」

 

 「そう、」

 

ステラの口角が、少し上がった気がした。

 

 「何かあります?」

 

 「背中の剣、とても美しいわね。ちょっと見せてもらっても?」

 

 「構わないですよ」

 

アレンは胸の前のバックルを外し、聖剣オセアオンを背中から降ろしてステラに渡した。

ステラは両手で受け取る。


 「綺麗な装飾ね、」

 

 「オセアオン・ブロンシュという剣らしいですよ」

 

 「へぇー、そうなんだ・・・」

 

 「でも、なぜか僕にしか使えな」

 

 ガシャーン!

 

ステラは掛け声と共に、聖剣を小屋の窓へ思いっきり投げつけた!

聖剣はガラスを突き破って、外へ落ちた。

 

 「なっ、何をするんですか!」

 

そして、ステラは両目を閉じる。


 「ぐわぁー、」

 

途端にクラスノダールとオデーサは、激しい頭痛に襲われ頭をかかえて苦しみだした!

立てなくなって、小屋の床で転げまわっている。


 「これは一体・・・きっ、君か?・・・何をしたんだ!」

 

ステラは、アレンに向けて持っていたナイフを突き出した!


 「おっ、おい!」

 

不気味な笑顔を浮かべている。


 「どういうことだ!」

 

 「お前が神に選ばれたなんてこと、あたしには関係ない。お前はママを殺した魔王の弟よ」

 

ステラは、ジリジリとアレンに近づいた。


 「あたしを誰と勘違いしてるか知らないけど、あたしはお前を殺す」


ステラの殺気に、思わず後ずさりするアレン。


 「やっ、やめてくれ。僕は君と争いたくない」

 

 「あら、そう。でも、これはママの敵討ちなの」

 

 「君は僕に必要な人なんだ!頼む、止めてくれ」

 

 「そうやって命乞いしたクラーツの人々を皆殺にしたのよね、」

 

アレンの背中が、小屋の扉にあたった。

 

 「かけがえのない人だった・・・あたしの大切なママに・・・」

 

扉に背中を当てているアレンに、ステラは距離をつめる。


 「死んで、詫びなさい!」

 

ステラは、ナイフを振り下ろした!

間一髪でナイフを避けたが、後ろに下がった勢いで扉が開き、アレンは小屋の外へ転げ落ちた。

ナイフを突き出しながら、アレンを追いかけるステラ。



 「転がりながら出てきたな」

 

 「あれは、神の剣のガキと聖女ですね。クラスは小屋の中ですか、」

 

 「見ろよ。あのガキ、剣を持ってないぞ」

 

 「ああ、ほんとですね。小屋の中で休憩でもしてたんですかねー、」

 

 「さっきガラスが割れる音がしたろ。それに聖女の手にナイフだ。あいつら、なにか揉めてんじゃねえのか?」

 

 「お取込み中のご様子ですか」

 

 「よし、神の剣を持ってない今がチャンスだ。イテハン、弓隊にあのガキを狙わせろ。必ず殺せ」

 

 「ここからだと、聖女にも当たってしまいますが?」

 

 「構うこたねえよ。ルディオス様も、あのエルフの女を殺すつもりだったんだ。流れ矢が当たってしまったって、報告すればいいだけの事だ」

 

 「はっ、かしこまりました」

 

イテハンと呼ばれた男は、チラリと後ろを見て右手を上げた。そして、アレンを指さす。


 ギリギリギリ、

 

 

微かに聞こえた音に、アレンは後ろの森を見た。


 ドックン、ドックン

 

 「うっ」

 

急な動悸に、思わず胸を押さえる。


 (この胸の痛みは・・・あの時と同じ・・・)


 「どうしたの、体の具合でも悪い?それとも、命乞いのお芝居かしら」

 

イテハンの腕が振り下ろされた!


 ガサッ、ガサッ、ガサッ!

 

森の茂みから、弓を持った兵士が一斉に現れた!

 

 「危ない!」

 

アレンはステラに飛びつき、抱きかかえながら地面に転がった!


 ヒューン、ドカッ、ドカッ、ドカッ、ドカッ、ドカッ、

 

無数の矢が小屋に突き刺さった!

何本かは開いていた扉をすり抜けて、小屋の中に入った!

ステラの集中が途切れたことで、クラスノダールとオデーサの頭痛が消えた。


 「クラス、立てるか!」

 

 「ああ、たぶんな」

 

 「外から矢が飛んできたぞ!」

 

 「床に伏せてなきゃ、当たってたな」

 

二人は足元をフラつかせて、小屋の外に出た。


 「やっと出てきたか、クラス元騎士長殿。待ちくたびれたぜ」

 

 「お前か、ルカオス、」


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