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justicia  作者: 清水京太郎
第一部
14/29

14.奪還作戦

次の日は、朝から雨だった。

雨の中、アルカルの葬儀を終えたクラスノダール、オデーサ、そしてアレンの3人は、カルスに捕らわれている聖女の娘奪還作戦を練った。

しかし、カルス皇国の城及び周辺の警備体制、戦闘に参加できるレガテノウスの人数、そして聖剣オセアオン・ブロンシュの未知数な戦闘力。

今ある要素から、最適解を導き出すのは困難だった。


 「でも、いくら大陸のためとはいえ、ルディオスにとって存在価値の無くなった聖女を奪還しても、レガテノウスに意味がないのでは?」

 

 「アレン、それは違う。俺達みたいな小物に捕虜を奪われることが、ルディオスに恐怖の種を植え付けることになるのさ」

 

 「だが、アレンの言う通りだ。そんな回りくどいやり方じゃなく、直接ルディオスを狙ったらどうだ?俺達もいつまでも流浪の民ってわけには、いかないだろう」

 

 「オデーサ、この人数で城に直接殴り込みをかけるっていうのか?」

 

 「俺達全員とアレンの聖剣があれば、俺は正面突破でいけると思う。というか、それしかないぜ」


 「全滅したら、どうなる。ここにいる女や子供は、行き場を失うことになるぞ」

 

 「俺達は神の剣を使う者を手に入れた。これは決着をつけろという神からの合図だ。確かに全滅は怖い。だがもう俺達も俺達の家族も、覚悟を決める時だろう。3人だけで聖女奪還なんて、俺は反対だ」

 

ルディオスか聖女か、正面突破か奇襲か、決行は早朝か昼か、はたまた深夜か。

決定打を欠くまま、堂々巡りの時間が過ぎた。

午前中からの会議は、いつしか雨も止んだ夕方になっていた。


 「クラス!」

 

バンっと乱暴に扉があけられ、男が飛び込んできた。

 

 「大きな情報をつかんだ!」


雲間から射す夕日のオレンジが、扉から入ってくる。


 「どうした!何があった!」

 

 「ルディオスが城を出た!」

 

 「なに!」

 

 「奴は何のために城を出たんだ?」

 

男は扉を閉め、興奮冷めやらぬ様子でテーブルの前にある椅子に座った。


 「どうやら、南大陸の国の代表が集まって、何かの会議が開催されるらしい」

 

 「会議か!」

 

 「国の代表といえば、クラーツとグラソフを除けば6カ国になるな」

 

 「集まる先は、アバディンだ」

 

 「アバディンというのは?」

 

 「ああっ、アレン、君は知らないだろうが、南大陸は全部で8つの国で構成されている。北側から言うと、クラーツ、グラソフ、オラニア、ウベナ、ベルシフ、アバディン、カルス、そしてボトルムだ」

 

 「カルスの右側に位置するのがボトルムで、その上にある国がアバディンなんでさ」

 

そう言うと、入ってきた男はオデーサが差し出したお茶をグイっと飲んだ。


 「あっ、熱っ」

 

 「あわてんなよ、サクリル」

 

 「すまねえ。この吉報を一刻も早く伝えたかったんだよ」

 

 「で、その会議が行われるのはいつだ?」

 

 「3日後の日曜日だ」

 

 「3日後・・・じゃルディオスは、かなり前に出発してるってことか」

 

 「もっと早く伝えりゃよかったんだが、ルディオスの野郎、どうやら内密に城を出やがったようで、情報をつかむのが遅れたんだ」

 

 「敵対勢力に知られたくなったってことか、」

 

 「移動の道中は、最も暗殺されやすいからな。クラス、どうする。これは奴を殺る千載一遇の機会だぞ」

 

クラスノダールは立ち上がり、部屋の隅に置いた地図を持ってきた。


 「日曜日までにアバディンの首都クラールに到着となると、今このあたりを移動しているはずだ」

 

 「ボトルムに入っちまったか、」

 

 「昨日のオルト団の襲撃。おそらく、その前々日あたりに、ここの近くを通っていたことになるな」

 

 「ってことはつまり、あのオルト団の襲撃は俺達の目をそらすオトリだったということか」

 

 「そういう事になりそうだな」

 

 「どうりで、いろんな情報が簡単に入ってきたわけだ。奴ら、わざと襲撃情報を俺達に流しやがったのか・・・くそっ!クラス、こりゃ完全にやられたな」


 「全くだ、」


クラスノダールは、大きくため息をついた。

 

 「だが、アバディンからの帰りは狙えるんじゃねえか」

 

 「まあ、無理だろうな」

 

 「そりゃどういうことだ」

 

 「行きは決められた日時があるが、帰りはいつでもいい。俺達がいるこの近辺を、わざわざ危険を冒して通るようなマネはしないだろう」

 

 「、ベルシフ経由か」

 

 「ベルシフは平原ばかりで、山岳地帯がない。奇襲は丸見えってことさ」

 

 「ちぇっ、くそったれめ!」


 ドン、

 

オデーサは、テーブルをこぶしで叩いた。

クラスノダールは、クルリと背を向けて板で補修したばかりの壁に向かった。

そこには、少し斜めになっているレガテノウスの旗があった。

これまでの時間で、意見はでつくした。

後はリーダーであるクラスノダールが、どう決断するかだ。


やがて、


 「よし、決めた」

 

 「聞かせてくれ」

 

オデーサ、アレンそしてサクリルは、クラスノダールの方を向いた。

 

 「俺とオデーサ、そしてアレンの3人でカルス城の地下牢を奇襲し、聖女を奪還する」

 

 「ルディオスは狙わない、ってことか」

 

 「ああ。ルディオスは神の剣を得た俺達が、帰りの道中で奇襲してくるとおそらく読んでいる。そして、それを想定しての対策もとっているに違いない」

 

 「・・・なるほど。もう神の剣の情報は、奴に知られてるってか」

 

 「それに、」

 

 「それに?」

 

 「俺がいた時代の副騎士長ルカオス。きっと奴も、ルディオスに同行しているはずだ」

 

 「ルカオス、今の騎士長だな」

 

 「あいつの強さは異常だ。しかも冷酷ときている。まともにやりあったら、ここにいるメンバーでは誰も勝てないだろう」

 

 「ここには、神の剣を持つ男もいるけどな」

 

 「アレンもそれなりに剣技に優れていると思うが、ルカオスの強さは完成された強さだ」

 

 「神の剣でも勝てないか、」

 

 「それは分からない。神の剣の強さを誰も見た者がいないからな」

 

 「ふむ、」

 

 「ここはルディオスの裏をかいて、聖女奪還に行く」

 

 「・・・裏をかけてるといいがな」

 

 「オデーサ、ここまで議論を重ねたんだ。後はもう出たとこ勝負さ」

 

 「まあ、そうだな」


オデーサは、ため息をつきながら立ち上がった。


 「ここのボスはクラス、お前だ。お前が決めた作戦に、俺達は従う」

 

 「アレンもそれでいいな」

 

 「わかった、」

 

 「よし。決行は、3日後の日曜日だ」

 

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