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justicia  作者: 清水京太郎
第一部
10/29

10.神の剣

クラスノダールは、アレンの前で跪いた。


 「その剣は、神が選んだ者しか使えない剣だ」



南の集落を鎮火させたレガテノウスのメンバーは、家の修復やらで武装を解除した。あの謎の光で、しばらくオルト団は襲って来ないだろうという判断だ。

アレンは、レガテノウスの医療メンバーに治療を受けた後、クラスノダールと共にバラック小屋にいた。

旗が飾ってあった壁は破壊されたような穴が開いていて、そこから夜空にきらめく星が見えた。


 「腕は大丈夫か?」

 

 「ああ、血も止まったし、おかげで助かったよ」

 

 「そうか。しばらくすれば、動かすことは出来そうだな」

 

小屋の中は、ロウソクの数が少なく薄暗い。

クラスノダールが入れた紅茶の甘酸っぱい香りが、小屋に広がった。


 「あまり物資が無くてな。家族を守ってくれた恩人に、気の利いたおもてなしも出来ない。許してほしい」

 

 「気にしないでくれ」

 

 「そう言ってくれると助かる」

 

 「言っておくが、僕は何もしていないぞ。雷撃でオルト団の一人を焦がしただけだ。後は、あの光で勝手に奴らが退散しただけさ」

 

 「君が俺達の家族を救ったことに変わりはない。その剣でな」

 

テーブルの上には、アレンが手にした剣が置かれていた。


 「この剣は一体何なんだ。誰かが僕に投げてくれたと思うけど・・・あ、言っておくが盗んだとかじゃないぞ」

 

 「そんなことは言ってないよ。それに、誰かが剣を投げたんじゃない」

 

 「じゃ、どうしてあそこに落ちてたんだ?」

 

 「剣が勝手に飛んでいったのさ」

 

 「はっ?」

 

クラスノダールは、破壊された壁を指さした。


 「えっ・・・まさか・・・冗談、だよな?」

 

 「君の波動に剣が反応した。君は、剣に選ばれたんだ。そして、剣が君を助けた」

 

 「それ、本気で言ってるのか?」

 

 「もちろんだ」

 

 「・・・」

 

 「じゃ、本題に入ろうか」

  

クラスノダールは、不敵な笑みを浮かべた。

心の整理が追いついていないアレンだが、今は彼の言葉を聞くしかない。

 

 「君が手にしたその剣、それはこの大陸にある神器のひとつだ」

 

 「神器?」

 

 「どうやら、この話しは北側では伝わってないらしいな」

 

 「初めて聞くよ。神器とは一体何だ?」

 

 「神が、我々人間に与えた武器だ」

 

 「神が人に武器を?」

 

 「神器はこの世界に4つある。ひとつは、聖剣オセアオン・ブロンシュ。もうひとつは、闘杖サージュ・グローク。更にもうひとつは、戦斧アッシュ・ノワール。最後のひとつは、聖杖クレセント・カルマンだ」

 

 「じゃ、この剣は、」

 

 「聖剣オセアオン・ブロンシュだ。そして、オセアオン・ブロンシュは4つの神器の中でも、ロードと呼ばれている」

 

 「ロード・・・王ってことか?」

 

クラスノダールは、頷いた。


 「これはカルス皇国の宝物殿にある古代書に書かれていることで、知っている者は少ないはず」

 

 「えっ、じゃ、あなたはカルス側の人間だったのか?」

 

 「カルス皇国聖騎士団のトップだった」

 

 「騎士長か・・・」

 

 「ここで言うのもなんだが、カルスは圧政だった。特に今のルディオスになってからは、更に酷くなってしまったんだよ」

 

 「それで反乱軍を組織したのか」

 

 「というより、ルディオスに不満を持った者が自然と集まったのさ。俺が騎士団の一番上だったので、皆俺を頼ってきた、ってとこだろう」

 

 「なるほど、」

 

アレンは出されたお茶を飲み干し、カップをテーブルに置いた。


 「痛て、」

 

 「まだ痛むのか」

 

 「痛み止めは塗ってもらっているけど、動かすと痛みが走る」

 

 「矢が貫通して、腕に穴が開いているからな。出血もそこそこあったんじゃないのか?今日はもう寝たらどうだ」

 

 「気になることが多過ぎて、とてもじゃないが寝れないよ」

 

 「まあ、そうだな」

 

クラスノダールは立ち上がり、お茶のおかわりをアレンのカップに注いだ。

お茶の注がれる音を聞いたアレンは、兄とよくお茶を飲みながら語り合った日々を思い出した。


 ーアレン、ハイルは何も無い国だ。だからこそ、いろんなことが出来るんだよ。楽しいだろ?ー

 

これが兄の口癖だった。


 「前向きだな、」

 

 「えっ、俺がか?」

 

 「あっ、いや、なんでもない。ひとり言だ」


今日という日は終わろうとしているが、ほんの少し前までハイルにいた自分が、今はすごく遠い存在のように感じた。

ここは見知らぬ異国の土地、カルス皇国・・・

アレンは、ため息をついた。


 「どうした、やっぱり疲れたんじゃないのか?」


 「それより、オルト団の奴らが言ってた『呪いの剣」っていうのは、この剣のことだよな」

 

 「ああ、そうだ」

 

 「聖剣なのに、なぜ呪いの剣なんだ?」

 

 「その剣を抜こうとした者は、これまで3人いたが、全員その翌日に死んだからさ」

 

 「えっ、死んだ?」

 

 「まあ、はっきり言って偶然なのかもしれない。だが、その剣はさっきも言った通り神器だ。普通の剣じゃない、特別なんだ」

 

 「あの光もそうなのか?」

 

 「その神の剣は、別名『光の剣』とも呼ばれている」

  

 (なるほど・・・だから皆逃げたのか・・・)

 

アレンは、テーブルに置かれた聖剣オセアオン・ブロンシュを持ち上げた。


 「確かに剣帯の装飾は国宝級だが、いたって普通の剣に見えるけど・・・」

 

 「それは、間違いなく使う者を選ぶ神の剣だよ」

 

 「本当にそうか?」

 

 「だから、俺の妻は君の前にひれ伏したのさ」

  

アレンは立ち上がり、オセアオン・ブロンシュをクラスノダールの前に突き出した。


 「抜いてみてよ」

 

 「おっ、おいおい、冗談はよせよ。俺に死ねと言うのか?」

 

 「これは神の剣だろ?呪いなんて、あるわけないじゃないか」

 

 「呪いじゃなくて、神の怒りかもしれないだろ?」

 

 「怒り・・・まあ、確かにそうかもだけど・・・」

 

 「頼むから、剣を置いてくれ」

 

アレンは少し不満げに剣をテーブルに置き、椅子に座った。


 「僕が神に選ばれる理由なんてどこにも無いのに・・・やっぱり、誰でも抜けるんじゃないのか?」

 

 「オルト団が逃げまわる姿を見たんだろ?それは、まるで悪魔でも現れたって感じじゃないか」

 

 (言われてみれば、確かにそんな顔してたっけ・・・)

 

 「誰も抜けなかったし、怖くて抜けなかった。そんな伝説の剣を、君がいとも簡単に抜いたんだ。そりゃ、逃げるさ」

 

アレンは、テーブルの剣を抜いてみた。

ロックが解除されるカシャンという音がした。

音を聞いたクラスノダールはビクッっとなり、思わず椅子から立ち上がって逃げ出しそうな体制になった。


 「もしかしたら、僕は呪いで死ぬかもね」

 

 「けっ、剣を抜いたんだ・・・死ぬはずがないよ・・・きっと」

 

アレンは、ゆっくりと剣を引き上げた。

シャーという金属音と共に、白銀の美しい鏡の刀身にアレンの顔が映った。

アレンは途中で止め、また剣を鞘に戻した。


 「かっ、かなり長い年月が過ぎていると思うが、見たろ今の刀身・・・傷ひとつ無い、鏡のような刀身を」

 

 「ついさっき作られたような美しさだな」

 

 「とてもじゃないが、これは人間が作れる代物じゃない。わかるだろ?」

 

 「・・・そうだな」

 

 「きっ、君はその剣を使うことができる・・・光らせることも・・・もういい加減、認めたらどうだ?」

 

 「・・・」

 

その時、バラック小屋の扉がギィーという音を出した。


 「神の剣を抜いた者が現れたそうじゃな、」

 

 「あっ、アルカル様」

 

アルカルと呼ばれた老人は、開けたバラック小屋の扉を閉めた。


 「そなたが、その剣を」

 

 「あっ、はい」

 

 「アルカルと申します。元カルス皇国の神官長ですじゃ」

 

アレンは、思わず椅子から立ち上がり頭を下げた。


 「これは大変失礼しました。わたしは、北大陸ハイル王国のアレン・ヴァン・ハイルと申します」

 

 「ほう、ハイル国の王太子殿ですかな?」

 

 「いえ、わたしには王位継承権はありません。王太子は兄のアクター・ヴァン・ハイルです」

 

アルカルは、急に鋭い視線をアレンに向けた。


 「ほー・・・つまり、魔王の弟君ですか」

 

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