01.プロローグ
「ここは、いつ来てもいいな」
若者は、うーっと言いながら背伸びをした。
西の山脈に落ちようとする太陽は、北の海へと続く大きな空をオレンジ色に染めている。
「この丘は、ハイルの丘と名付けよう」
「名前付けるの、好きだね」
「大好きなんだよ、ここが」
心地よい風が吹くその丘は、王国が収める領土を見渡せた。
若者達が見つめるその先には、ハイルの城が見えた。
「兄さんの好きな場所は、僕も好きだよ」
「アレン、俺はここに住む民が、毎日笑って暮らせる。そんな理想の国家を作りたい」
「きっと出来るよ。兄さんなら」
大陸の北の端に位置する辺境国ハイル。
周辺の国々からは、何の魅力も持たれない小さな国家だった。
主力といえば、質の良くない銅が採掘できる鉱山が1つあるだけで、あとは田畑や家畜が中心の農耕国家だ。
「で、お前は何をするんだ?」
問われたアレンは、少し間を置いて丘の先端へ歩いた。
海から丘に向けて吹く風が、アレンの黒髪を揺らす。
「僕は見てみたいんだよ。兄さんが王となり、笑顔あふれるハイルの町をね」
真っすぐ前を見つめるアレンに、アクターが並んだ。
山脈から突き刺すオレンジ色の光線が、二人を照らす。
「お前が王になってもいいんだぜ」
「はっ、何を言ってんだか、」
「俺たちは双子だ、不思議な事じゃない」
そう言われたアレンは小さくため息をついたが、
すぐに笑顔で答えた。
「僕が兄さんにかなう訳ないじゃないか。剣も魔法も、そして学問も。全部兄さんが上だよ」
「本当にそうか?」
「えっ?」
「まあいい。お前がそう言うのなら、俺が王になるまでさ」
「そうそう。それこそが、ハイルにとって希望だよ」
「希望ねえ、」
「希望だ」
アクターは腕組みをし、アレンの方を向いた。
「なあ、アレン、」
「ん、なに?」
「俺達は二人で一人だ。お前は、遠慮なんかするなよ。俺達の理想の国家に向けて、全力で突っ走るのみだ」
「ああ、わかってるよ」
「覚悟は、いいな?」
「でも、王になるのは兄さんだ。神は兄さんを僕より先にこの世に誕生させたんだからね」
「先って、少しの時間じゃないか」
「それでも神に選ばれたんだよ。兄さんがね」
「神か、」
「でも、二人で一人っていうのは、なんとなくわかるよ」
「だろ」
「僕は全てを賭けて、兄さんを守ってみせる」
「かっこつけやがって。剣術も魔法も、俺の方が上なんだろ?」
「あはは、そうだね。でも、守る!もう決めたんだ」
アクターは、アレンの肩をポンと叩いた。
「俺が王になっても、お前と俺は一心同体。二人でこの国を、どこにも負けない強い国にする。そして、もっともっと民を豊かにするんだ。いいな、アレン」
「ああ、僕達ならきっと出来るさ」
「そうとも!」
二人は固く手を取り合った。
心地よい風と、希望の光が照らすハイルの丘で。




