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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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第85話 武術訓練

火の季節()の2か月目、日本でいう8月は ほぼ毎日ケーテさん達の家族と過ごしていた。


午前の授業が終わって 昼食&お昼寝を終えれば、再びギルドに戻り、訓練場でケーテパパのタディさんか お兄さんのガルスさんとの組手が始まる。

ケーテさんは お母さんのテーアさんかタディさんと打ち合いをしている事が多い。


平日の午後なので、冒険者が使うこともなく ほぼ貸切状態なので、時々サブマスやギルマス、エデル先生も顔を出して参加してくれる。


「おお、ヴィオは武器を作ったんだな。 武術訓練の時間もそれを使うか?」


「ん~、授業の時は 木剣か 刃のないのを使うでしょう? 私のは刃がついてるから危ないし、止めときます。

あっ、エデル先生、今の武術訓練でやっているアスレチックコースなんですけど、あのコース上で組手というか対戦をするのは駄目ですか?」


相変わらず武術訓練の授業ではアスレチックコースを作っているんだけど、毎度コースは多少変えても 慣れてしまって 落ちることがなくなってきている。

今は3番目の壁に挑戦するためのルートみたいな扱いだ。


「ん?コースで?」


「おお、そういえばケーテから聞いたが、授業で面白いことをしているらしいな。どんなものか見せてもらえるか?」


私の提案に 先生は???となっているけど、内容が聞こえたタディさんがコースを見てみたいと言い出した。

サブマスとギルマスも 面白そうだと賛成し、私とサブマス、ギルマス、ケーテさん、エデル先生で授業で使っているアスレチックコースを作り出す。


「ええっ!? ケーテ、土魔法は得意属性じゃなかったよな? 無詠唱でそんな事ができるようになってるのか?」


「ええ、この魔法は授業で毎回使っているもの。レンとハチだって 上手いわよ」


自分がいた時よりも学び舎のレベルが上がっていると驚いているガルスさんだけど、今通っている生徒たちは風と土はもれなくレベルアップしていますよ。


3番目の壁は作らなかったし、5人で作ったので然程時間がかかることなくコースの再現が出来た。

お父さんも初めて見たから 驚いていたけど、森のコースを再現するつもりで作ったという話はしてたから納得している。

ケーテさんのご家族が1周体験してみたところで さっきの続きだ。


「で、このコースの彼方此方で組手をすれば足場も悪いなかで対戦する訓練になるかなって。

例えば 紅組と白組とかに分けて、チーム戦をしてもいいかなって」


ゴール側とスタート側からお互いに攻めて、陣地の旗を獲ったら勝ちとかね。

そう提案すれば ギルマスが乗った。


「面白そうじゃねえか。

あ~、ほら、カルタでもトランプでも お前らは対戦するのに慣れてるしな。

このコースも随分複雑になってきたが、皆慣れてきてるし 危険がないと思ってただの遊びの延長みたいになってきてるしな。足腰体幹は鍛えられてるけど、武器訓練が出来てないのは銅ランクになってから困るからな」


サブマスの冷えた目線を感じて 直ぐに理由を説明してくれたギルマス。危機察知能力が高いですね。

確かに 元々は武器訓練が出来ない私が 足腰体幹を鍛えたくて 隅っこで始めた事だったしね。

ギルマスの提案にエデル先生も納得したらしく、明日以降の授業ではそうしようと言ってくれた。



「じゃあ、今居るメンバーでもやってみようか。ケーテとヴィオで分かれるだろ?武器の特性で考えれば俺とテーアも別だな」


「ん?じゃあ儂はエデルと別にするか」


其々大人たちが、自分の得意武器で分かれていく。

テーアさんはバスタードソードではなく、槍という事で分かれるんだね。二人とも武器保管の場所に行って 長い棒を持って戻ってくる。

お父さんとエデル先生は 何も持ってないから 格闘ってこと?

ガルスさんは ギルマスと、木剣を持っている。

私とケーテさんは武器は違うけど子供枠で別チームって事だね。


「では、私が審判ということですね。もし多少怪我をしても回復してあげますので安心してください」


サブマスは回復要員というか審判役をしてくれるらしい。


私、お父さん、ギルマス、テーアさん組

ケーテさん、エデル先生、ガルスさん、タディさん組に分かれる。

其々のスタート地点に盛土を作り、そこに旗を立てる。


「あっちの旗を獲れば勝ちよね? どうする、正攻法で行く?それとも旗だけを狙いに行く?」


「おい、テーア。 とりあえず今回は 正攻法でいくところだろ。足場の悪い中でどれだけ戦えるのか、ってのがこの訓練の醍醐味なんだぞ?」


まずは作戦会議の時間が設けられたんですが、ここは正攻法だけではないんですね?

驚いていると ギルマスがツッコんでくれました。

冒険者は正攻法だけで攻めてもダメだってお父さんがコッソリ教えてくれましたが、とりあえずココは訓練の場所なので、今回はお互いの対戦相手とちゃんと組み合って、その上で旗を狙いに行きましょうとなりました。


あちらの作戦会議も終わったところでスタートです。

ケーテさんも長い棒を持っているけど、私は授業でも格闘で行くつもりなので無手です。結界鎧は纏っているし、身体強化もガッツリかけてるけどね。


コースは2~3人が一緒に走れるように横幅もそれなりに増えてはいるけど、お父さんが先駆けて飛び出していった。

大柄なのに、ムササビみたいに音もなく駆けていくのは超絶格好良い!

あちらもエデル先生が お父さんの動きを見て先陣を切っているみたい。


2つ目の壁の手前、平均台の辺りで かち合ったお父さんたちは ガシっと両手を組み合わせ 睨み合う。

力比べなのか、二人の二の腕がモッコリしているなか、エデル先生の蹴りがお父さんを狙う。

だけど、読んでいたのか お父さんは軽く飛退きながら後ろ蹴りを仕掛ける。


おお!なんかすごい!


「ヴィオ、足元見ろよ?」


ギルマスの声に飛び石が終わるところだった事に気付く。危ない危ない。

テーアさんはタディさんと、ギルマスはガルスさんと 正面衝突したところでお互いの武器で対戦が始まった。

私は2つ目の壁を上ったところでケーテさんとかち合った。


「私たちは壁の上って事ね、ヴィオとの手合わせは初ね。父さんたちとの対戦を見てるから 油断はしないわ」


キリリと真剣な表情で向き合ってくれるケーテさん。

学び舎にいた時のような 5歳の幼女に対しての視線ではなく、ちゃんと対等に見てくれているのが嬉しい。

壁の上は平均台よりは幅がある、だけど高さは2メートルほどもあるから、足元も気を付けてないと危ない。

ケーテさんは尻尾と両足の三点で体のバランスをとっているようだ。


ただし槍がわりにしている長い棒を振り回すには この幅は不安定だろう。バランスを崩さない事を考えれば 攻撃方法は限られる。

ケーテさんはこの壁に上る前の場所で待っていても良かったくらいだ。


しばらく見合っていた私たちだけど、ケーテさんが棒をまっすぐに突き出してくる。

タディさんと訓練をしているおかげで、突きの速さには随分慣れた。

真っすぐ突き出される棒を正面に捉えるように、身体に当たるギリギリでほんの少しだけ右に身体を捻って避ける。

突き出された棒は直ぐに引くことが出来ず、引いた左手で棒を掴み 右手首で跳ね上げる。


「あっ!」


突き出す為に右腕一本で持っていたケーテさんの握力では その衝撃に耐えられず、棒は手から離れて空を舞う。

一回転する棒をキャッチして、そのままケーテさんの首元に棒を翳せばチェックメイトだ。


「参ったわ、はぁ~、全然ダメだったわ」


「ふふっ、タディさんに突っつかれまくったお陰ですね」


初回に対戦して以降、タディさんは全く容赦してくれないのだ。大怪我するような攻撃は流石にないけれど、私が何でもありな攻撃をしても良いという事になっているからこそ、スピードとかはついて行けない感じで攻めてくるのだ。

毎回はじめはゆっくりからスタートするんだけど、だんだんスピードも、攻撃の重さも上がってくるんだよね。

毎回体力切れで 帰り道はお父さんの抱っこで帰宅してるのだ。


今日は視力強化をしてなかったけど、お陰様でケーテさんの攻撃もよく見えた。


他の大人たちはまだ対戦中なので、壁を飛降り そのままケーテさんチームの旗を取りに走る。


「ヴィオさんチームの勝ち!

大人たちは 自分達の対戦に集中し過ぎでしたね。大人げないですよ」


完全に目的を忘れて お互いの組手に集中していた大人たちは、サブマスからチクリと言われて苦笑い。

だけど足場の悪い中での対戦はとっても良さそうだという事で、授業で本格的に取り入れられることになったよ。



お読みいただきありがとうございます。

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