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第83話 うちあわせ?

聖の日は 村の殆どのお店がお休みとなり、冒険者たちも急ぎではない依頼は受けない。

ギルドは開いているけど、職員さんもいつもより少ない。


子供採集体験は2週間に1度やっているから、その日は全員出勤になっているけど、お昼ごろの収穫物受け取りの短時間勤務だそうだ。

だからこそ、サブマスからの魔法訓練は聖の日に受けていて、時々ギルマスも参加して、主に火魔法の特訓をしてもらっている。


サブマスの訓練は エルフのドゥーア先生に教えてもらっていた時と同じように、呪文は無しでひたすら見せてもらった魔法を再現する というものだ。

はじめて魔法を見せてもらった時のリーフウォールのように、風と木の複合魔法なども教えてもらって練習をしている。


「平日の午前は まだ学び舎に通ってるのだろう? 我々は午前に森での討伐を中心に依頼を受けておこう。平日の午後は訓練場を使う者が殆ど居ないと聞いたからな、午後に我々との訓練を行おうではないか」


「タディ、午後からの訓練は良いんじゃが、ヴィオは昼食後に昼寝をしておるから、やるなら4の鐘(午後4時)の後にしてくれんか?」


「あら、そういえばまだ5歳だったのね。子供は寝て育つものですもの、分かったわ。

あなた、だったらケーテも 多少奥まで入っても大丈夫そうね。

まずは浅瀬だけど、今月末には 泉まで行けるのではないかしら?」


武器が完成したあの日、今後の訓練について お父さんと ケーテさんのご両親で話し合いが行われていた。お昼ご飯の後は ちょっと採集とかで消化を促してから 1時間のお昼寝をしているからね。

この採集の時間に、最近ではカルタ板用の伐採と角材作りをしているんだよね。


「ヴィオ、卒業してもあなたとこんな風に過ごせるなんて驚きだわ。これからもよろしくね」


「ああ、ケーテから聞いて 頭の良い子だとは理解していたけど、まさか武術や魔法もこんなに腕がいいなんて驚きだね。冒険者としても大成しそうだ」


大人が相談している間に、私たちは子供同士(お兄さんは成人してるけど)で交流を深める。

お父さんのタディさんは尻尾を収納しているけど、ガルスさんは剣と共に尻尾も武器として使うから 敢えて収納しないようにしていると教えてくれた。

ケーテさんは 護衛騎士を目指しているのと、諜報活動もできるように尻尾収納が出来るように練習する予定だそうだ。


「獣人族は 人族よりも体力や武力が勝っている者が多いんだ。だから敵対する者からは警戒されやすい。僕たちトカゲ獣人は種族特性が尻尾と鱗だ。

鱗は大抵 洋服で隠れる場所にあるし、尻尾を収納できれば 人族に見えるから 油断を誘いやすいんだよ」


「へえ~、それなら女の人で人族に見えるようになれば、メイドさんとか侍女さんみたく武力がない人を偽装して護衛もしやすいですね。

ケーテさんは水と木が得意だから、水で敵の索敵をして、木というか蔓で敵を捕縛することもできるもの。土魔法も授業で得意になってたから、いざとなれば土壁で守ることもできるし、戦闘メイドさんだね!」


ガルスさんが尻尾収納をする利点を教えてくれた。

確かにケーテさんの見た目で 人族に偽装できるようになれば 護衛としては素晴らしいよね。タディさんとガルスさんは 厳ついマッチョだから、人族に偽装したところで どう見ても強者だけど、ケーテさんとテーアさんは 線が細くて インテリ美人って感じだもん。

まあ、そのインテリ美人が ゴリゴリの大剣を振り回してたけどね。


「ほう、それは面白い発想だな」


「ええ、良いのではないかしら。ケーテは貴人の護衛騎士を目指していたし、次期プレーサマ辺境伯の娘さんは 来年洗礼を迎えるのではなかったかしら。

年齢も近いから、学園に行くときの護衛として選んでもらえる可能性はあるわよ」


「テーアさん、学園って王都にある魔導学園の事?

貴族は全員行くって聞いたけど、護衛騎士も一緒に連れて行くの?」


「学園に護衛は不要なのだけど、高貴な方たちは年齢が近い子供を 侍女や護衛として同級生として同行させることはあるわね。勿論学園で仲良くなった人を 側近にするなんてことも多いのよ」


リズモーニ王国の貴族は全員入学だけど、他国からも貴族は留学してくる。その時に 従者を連れてくるのは当り前らしく、リズモーニ王国でもそうする家はあるらしい。

平民は商家の子供なんかが 貴族との顔つなぎをするために寄付金を多く入れて入学したり、貴族からの推薦で入学することもあるというのはドゥーア先生が教えてくれた。

平民に関しては貴族のように小さい頃から英才教育を受けられるわけではないから 入学する(推薦を受ける)時が一律ではないので、2~5歳差なら入学が可能なんだって。

だとしたら、今8歳のケーテさんなら2歳差しかないから 十分推薦で入学も可能じゃない?


「おお、確かに。ケーテ、学園は12歳で入学だ。辺境伯の娘が入学するまで あと6年。

それまでに銀ランクの中級まで上げることが出来れば、推薦してもらいやすいぞ」


ガルスさんがケーテさんに発破をかけ、本人も具体的な目標が決まったのでメラメラしている。


「お父さん、冒険者のランクで推薦してもらいやすいとかあるの?」


「そうじゃな、金ランク以上じゃないと貴族からの指名依頼が出来んというのは前に話したか?

銀ランクからランク上げをしない連中は、大概貴族との関わりを持ちたくない奴らなんじゃが、それでも銀の中級を越えれば 騎士団にも入れるほどの実力者と言える。

貴族としては抱えておきたいランクの人材ではあると言えるじゃろうな」


「そうそう、だけど冒険者ギルドの規定として 銀ランクへの指名依頼は禁止とされているから “貴族から” の積極的な接触は出来ないの。

だけど、冒険者が自分で繋いできた縁は良しとされているのよ。

だからこそ、貴族の推薦が欲しい冒険者は 自分から 売り込みに行くこともあるわ。

若い人なら 魔導学園の入学推薦を依頼するのと同時に、自分の能力を見てもらって 将来貴族のお抱えになりたいとかね」


推薦についてお父さんに質問すれば、テーアさんが更に詳しく教えてくれた。

そういう事なのか。自分から行くなら良いけど、貴族からのゴリ押しは駄目だよってことね。

他の国でもそうなら 冒険者ギルドって中々の権力を持ってるってことだよね?貴族の言葉を退けられるって凄くない?


「ははは、まあ 魔獣の氾濫なんかが起きた時には、騎士団だけでは討伐が出来ない事もある。

奴らはどちらかと言えば対人戦なら 強いんだろうが、魔獣相手の討伐は冒険者の方が勝る。

氾濫が起きた時に冒険者どもにそっぽ向かれてしまえば、町は壊滅、小さい国なら瀕死だろう?

だからこそ、冒険者ギルドと対立することを選ぶような国は殆どないんだ」


ああ、そういう理由か。

それは確かにそうかもね。何でも突っぱねる訳ではないけど、貴族とうまく付き合っていく緩衝材になってくれているんだね。

ありがたいことです。

貴族と付き合う予定もつもりもないけれど、ギルドとは長い付き合いになるはずだから、これからもよろしくお願いしたいところです。


お読みいただきありがとうございます。

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