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第82話 武器が出来たぞ その3

本日は 3話 同時投稿しております

こちらは 3/3 作目です。


驚いてギレンさんの元に走って行けば、もう一つ新しい箱を開けてくれて、中には薄い茶色の鞭が蜷局を巻いていた。

持ち手のグリップは白っぽい皮で、三つ編みみたいになっている。


「おお!格好良い!ギレンさん 鞭もできたんだ!?」


「ああ、思った以上に良い素材を持ってきてくれたからな。

このグリップにある魔石に魔力を流して使用者登録をしたら、この鞭に魔力を流すことが出来るのはヴィオだけになる」


ほほう、確かにグリップの先端が膨らんでて コロンとした石がハマっているけど、これはお洒落石ではなく魔石なんだね。

お陰でストッパーにもなっており、すっぱ抜け防止にもなりそうだ。

握ってみて、魔力を流さずに短い鞭を振ってみる。


ビュン バシン! ビュン バシン!


おお!蔓の鞭で練習してた時よりもいい音が出るね。まあ森の中では草木のクッションで良い音は出ないよね。


「良さそうだな。その長さはお前さん以外で使える奴はいないから、専用武器だ。魔力を流していいぞ」


そう言われたので 早速魔力を流せば スルスルと魔石が魔力を吸っていく。

ピカっと光るまで流した石は 少し白っぽい色になって、グリップの色とマッチして 違和感がなくなった。

グリップを持ちながら魔力を鞭全体に流れるように意識すれば、蔦の鞭と同じように とても自然に流れるのが分かる。


「ギレンさん、凄く魔力の動きがスムーズです!」


「おお、だろうな」


「ほう、それなら 鞭でも練習をした方が良いだろう? 今度は私が相手をしてあげよう。私の武器は 長柄武器なので こちらの棒を使うが大丈夫か?」


「えっ?父さん、ヴィオはまだ5歳なのよ? 武器での訓練だってまだやったことないんだから、流石に無茶だわ」


ギレンさんから鞭の取り扱いを聞き ウキワクしてたら、今度はケーテさんのお父さん、タディさんが対戦相手になってくれるんだって。

と思ったら、目覚めたケーテさんが驚いて止めている。


「ケーテさん 起きたんだね、もう大丈夫?」


「ええ、格好悪いところを見せちゃったわね。

父さんってば 子供相手でも容赦しないの、だからヴィオには危険だわ。

って、あら、ヴィオは鞭を使うの? まあ小さいから遠距離攻撃を選ぶのは良いのかもね」


さっきまでは魔力切れもあったようで 完全に寝落ちしてたらしいケーテさんは、私とお兄さんの組手を見ていないんだね。

私の主となる武器は短剣です。ガンガン前衛で行く予定です。

そう思っていたら、お兄さんのガルスさんが さっきの組手の事を説明して、更にケーテさんが驚いている。


そしてタディさんは そんな子供たちは完全無視で、私の手を取って 庭の中央で向かい合う。


「まずは好きに攻撃してきなさい。ある程度の動きが出来るようになれば 私からも手を出すから、避けながら攻撃してくるように。参ったか、体力切れで終了だ」


「はいっ!おねがいします!」


「えっ!?ヴィオ 本気?」


「まあまあ、ケーテ、まずは見学だ。あの子凄いよ」


「ええ、小柄さも上手に活かしているわ。ケーテも私たちに比べれば小柄だから、見習える部分もあるかもしれないわよ」


「兄さん、母さん……」


タディさんはケーテさんの時と同じ、長い棒を構えて立っている。

私は棒の範囲よりも外に立ち そこから鞭を振るうことにする。


「えっ?あんな遠くからだと届かないんじゃ……」


「確かに、あの鞭じゃ短すぎるな」


ケーテさん兄妹の声が聞こえるけど、大丈夫です。

鞭は全長50センチくらいの長さしかない。グリップは短剣と同じくらいの10センチ強だし、腰に巻くベルトとして普段は持ち歩けるようにしてもらったからね。

だけど、魔力を通すことで 鞭は伸びる。だからこその魔物素材だったんだもの。


希望を伝えた時に 必要な素材をお父さんが確認してくれて、その希望に沿う以上の素材を お母さんのマジックバッグから発見した。

それをギルマスに渡して、ギルマス経由でお父さんが購入したことにして、ギレンさんに渡してもらったのだ。

お父さん曰く、上級ダンジョンの魔物素材だそうです。

お母さんって結構優秀な冒険者だったんだね。素材勝手に使ったけど、私の武器用だから許してくれるよね?


真っすぐに振り下ろした鞭は蛇のようにタディさんを襲うけれど、鞭の先端をヒョイと避けられる。

かなりのスピードだったのに、先端をチョンって、どういう動体視力???

手元に戻った鞭を 横なぎに振れば、タディさんの身体に巻き付こうと 鞭が伸びるが、これも棒を支点にヒョイと飛び上がられて 避けられる。

巨体なのになんと軽々とした動きなのか。

お父さんも戦闘時は足音がしないけど、同じ感じだね。


右、左と鞭を振るえば、バシン バシン と地を打つような音がするのに 悉く躱される。


「ヴィオ、金ランクにその遠方攻撃じゃいつまでも効果は出んぞ。短い方がまだ使いやすいじゃろ」


ここで初めてお父さんから助言が貰えた。

確かに どれだけ早く動かそうが、所詮私の筋力だから 金ランクからすれば蚊でも止まりそうな遅さなんだろうね。

余計な魔力を止めて、元の短い鞭に持ち替えて タディさんに駆け寄る。

そのまま手首の回転を使いながら、鞭を細かく振り回す。


「おっ、これは、ちょっと、面倒だなっ」


さっきまで片手で棒を操っていたタディさんも、流石に鬱陶しいと思ったのか、両手で棒を持ち、鞭をはじいていく。

これでも当たらないとか、どういうこと!?


∞を描くように鞭を振りながら、足元、顔、と高さも変えて狙ってみるけど、棒で避けられる。悔しい!


「はははは、よし、そろそろ私からも攻撃をするぞ」


メラメラしてたら、タディさんもノッてきたらしく、攻撃宣言されました。

棒を上段から下ろしてきたので、手首を返しながら鞭で絡め落とす。

空いた顔に鞭を当てようとしたのに、棒をくるりとされて、反対側から棒が襲ってくるので、バックステップで避ける。


「ほう、避けるか」


更に追撃で連続突きをしてくるから鞭で掃いながら タディさんの手首を狙って鞭を振る。

だけどこれもあっさり身体を引くことで躱される。

このままでは、全く攻撃が当たる気配がない。短い鞭のままと見せかけて 魔力を流して伸ばすって方法もありかもしれない。

そう考えながら、タディさんの手元を注視し 次の攻撃を読む。


「子供とは思えん集中力だな。面白い」


「アルクさん、あの子 本当に実子じゃないの? ルンガたちよりも血気盛んじゃない?」


「残念ながら拾い子じゃ。じゃが、ヴィオは努力家じゃからな。儂も教え甲斐があるんじゃ」


「ヴィオ……」


タディさんが右から払うように棒を薙いできたので、一歩分下がって、棒の先端を鞭で絡めとって振り下ろすけど、ガッチリ棒を握っているタディさんは武器を落とすなんてことはしない。

逆にそのまま棒を両手でブゥンと振り上げたので、私も空に舞い上がる。

このままじゃ後ろに叩き落されると思ったので、鞭をはらい タディさんの真上で棒の拘束から逃れる。


「ほう、逃げたか、しかしそこでは無防備だな」


獲物が逃げたことに気付いたタディさんは ニヤリと笑い、私に向かって棒を構え直す。

突き上げられても避けることは出来ない位置だ。

グッと肘を引き 溜めを付けたタディさんが棒を突き上げてきたので【ウインドウォール】を唱える。

回転する風の刃が私を包み込み、風のボールの中に入ったままタディさんの突き出した木の棒を飲み込んでいく。


バリバリ ガリガリ ガリガリ


おお、鉛筆削りで鉛筆削ってるみたいな音がしている。

そのまま地面に下りたところで魔法を解除すれば、ポカンとした大人たちが立っていた。


「あっ!鞭のお試しだったのに、最後魔法使っちゃった。失格?」


焦って魔法を使ったけど、鞭の使い勝手を調べるための時間だったのをうっかり興奮しすぎてやってしまった!


「くっ、はっはっは、面白い。近接だけではなく、魔法も無詠唱で使えるとは 恐れ入った。

アルク、この娘の組手は うちのケーテでは相手にならん。逆に、娘が世話になりたいくらいだ。

基本は息子と私が相手になろう。次は魔法も組み合わせてきてくれていい」


「ヴィオ、凄いわ! よく考えれば武術訓練でも皆と遜色なく動けてたものね。来た当初の印象が強すぎたのね。私も 是非一緒に対戦相手にならせて頂戴!」


「ええ、私も得意武器はこのバスタードソードだけど、長柄武器も使うの。

本格的に冒険者に復帰するから、身体を鍛え直しているから、私もお相手させてもらうわ。ヴィオちゃんよろしくね」


魔法に関して叱られることはなく、逆に 組手の相手をこれからもしてくれるって約束してくれた。

ケーテさんも銅ランクになったばかりで、ダンジョンを本格的に攻めるのは秋か冬の予定だったんだって。

私も来月から森の浅瀬に入れるらしいから、武器の扱いを上手くなれるように、是非頑張りたい。


テーアさんは魔法と近接攻撃を組み合わせて戦うことも得意だというので、そちら方面を教えてもらえることになった。

魔法での戦いはサブマスに特訓してもらえているから、益々上達しそうである。


短剣の微調整は後2日程かかるらしいけど、鞭はこれで完成。

ベルトとしての使い方も教えてもらって、濃すぎた武器完成披露は終了した。



お読みいただきありがとうございます。

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