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第79話 村の人たちのはなし


ケーテさんが卒業したあの日、武術の授業が終わって1階に戻ったら 厳つい父ちゃんと、ゴリマッチョな兄ちゃんが仁王立ちしていて非常に驚いた。


「あっ!父さん、兄さん!」


「ただいま!ケーテ、父さんが帰ったぞ!」


「ケーテ、銅ランクになったんだって?もう少し先だと思ってたのに、帰ってくるのを早めて正解だったよ。おめでとう!」


ケーテさんが現れた途端 厳つい二人の顔が フニャフニャになって、ハグでお迎えしていました。

おおぅ、ケーテさんのパパン&兄さんだったのですね。

ケーテさんは切れ長のシュっとした美人さんだから、ゴリマッチョの厳つい二人とはちょっと家族だとは思えませんでした。ママンに似ているのかな?

よく見ればパパンには尻尾がなく、お兄さんはケーテさんより少し深い青色の尻尾があった。


家族団欒な雰囲気で ギルドを出て行ったケーテさん家族に驚いているのは私だけで、他は知っていたのかいつも通り。


「ヴィオが来た時にはダンジョン踏破の為に出とったからなぁ。あの家族は念願の女児を可愛がり過ぎてな、母親からランクアップするまで帰宅禁止を告げられておったんじゃ」


……え?

さっきいたゴリマッチョの二人、お兄さんとケーテさんは年の差6歳もあるらしく、1~2歳差の兄弟が多いこの村では珍しいんだと思う。

で、既に洗礼間近の兄と、待望の娘が出来たパパンは それはそれは娘(妹)を可愛がり、お姫様のような取り扱いだったらしい。

6歳頃のケーテさんは 第一次成長期というか、学び舎に通うことで自分の家が普通じゃない事に気付き反抗期を迎えたらしい。

ママンの助けもあり、そこから淑女(冒険者)教育が始まって、今のイケメン姐さんなケーテさんになったようだ。

パパンと兄さんだけなら悪役令嬢待ったなしのお嬢さんになってたかもだね。まったく今のケーテさんから想像つかんけど。


娘&妹可愛さに、冒険者としてのお仕事をおさぼりになっていたお二人に喝を入れたのがケーテママ。

ケーテさんが洗礼を迎えたのをきっかけに、お兄さんが銀ランクになるまで帰宅するな!という命令が成されたらしい。

当時のお兄さんは銅ランクにはなってたものの、討伐依頼を全く受けていない状態で、パパンと討伐訓練から頑張ったみたいだね。


ママンから「ケーテが銅ランクになった時に、家族でダンジョンに潜れるくらいまで二人が強くなってたら、ケーテも安心するだろうね」って言われて、この1年半ほど修行に出てたんだって。


「……す、すごいね。でもケーテさん ダンジョン楽しみだって言ってたから、二人が一緒に居てくれるなら安心だね」


「ああ、娘が卒業になったから、本格的にテーアも冒険者業に戻るんじゃろう。

あそこの夫婦は二人とも金の初級ランクじゃからな。

まあ、テーアも子育て期間は村の周りの討伐だけで 多少腕が鈍っとるじゃろうから はじめは周辺の森の常設討伐依頼でも受けるんじゃなかろうかの」


金の初級って、お父さんの2つ上のランクか。

まあ、お父さんは指名依頼が嫌でランク上げしなかったというし、本当の実力はランクだけで分からないとは思うけど、金の初級まで上がれるだけの実力があるって事ではあるもんね。

ケーテさんってば 冒険者のサラブレッドだったんだね。



そんな驚きの情報を聞きながら帰宅。

サブマスとギルマスは金の中級ランクの冒険者で、それ以外にも金の初級ランクの冒険者、元冒険者が結構この村にはいるらしい。

辺境のなかでも更に辺境だからこそなのだろうか。

リスマッチョ先生も冒険者やってたらしいしね。うん、肉屋のおじさんもマッチョだし、皆強いんだろうね。



◆◇◆◇◆◇



そうそう、ケーテさんが卒業する少し前の話。

ランクが銅になれば、今後は村の外での行動範囲を広げていくために、魔獣狩りもするのだと言っていた。


「ヴィオも 冒険者でダンジョンを目指すと言っていたでしょう? 魔獣を解体できるようにしておいた方が良いわ。

時々 マコールさんが依頼を出しているでしょう? 新人冒険者の解体作業の練習というか経験を積ませてもらえるから、出ているときは受けるといいわ」


そんな貴重な情報を教えてもらったら 行くしかないよね?

学び舎が終わった後に、お父さんにもお願いして タキさんに その依頼が出た時には是非受けたいから教えて欲しいとお願いしておいた。

あまり大人数が受領することは出来ないけど、2~3人なら大丈夫だし、中々受ける人はいないから大丈夫だと言ってもらえた。



数日後、学び舎が終わったところでタキさんから依頼が出たことを聞き、速攻で受領してお店に行った。


「こんにちは、ギルドで解体の依頼を受けてきた ヴィオです」


「お~、お?アルクか、どうした?」


「今日は儂じゃなくて 娘じゃ」


「ん?」


お店の入り口で挨拶をしたら 奥からガチムチのおじさんが出てきた。お父さんの言葉に 視線をゆっくり下ろしたところでやっと目が合った。


「こんにちは、ギルドで解体の依頼を受けてきた ヴィオです」


もう一度ご挨拶をしたら「は?」と固まられてしまった。

うん、よくあることです。


「あ~、ヴィオは青銅ランクで 既に半分以上のポイントを稼いどる。火の二月目には銅ランクに上がると思うからな、解体の経験を積みたいんじゃと」


「は?このちっこいのが銅ランク? 

お前、息子だけじゃなくて こんなちっこいのにもスパルタしてんのか?」


ビックリしているおじさん、じゃなくて マコールさんが教えてくれたのは、お父さんの息子さんたちに行われていた冒険者の英才教育の凄さ。

私がしているのと同じように、裏の森にアスレチックコースを作って、楽しませながら 身体能力をガンガン鍛えていたらしい。


マコールさんはガチムチの虎獣人さんで、ご本人も元金ランク中級の冒険者。

このお肉屋さんは、マコールさんが肉を仕入れ……というか狩りに行き、それを解体して 長男のキリトさん夫婦が 屋台で肉串を売っている。ちなみにキリトさんも銀ランク冒険者だ。


息子二人がお父さんの息子たちと年齢が近いこともあって、一緒にアスレチックコースで遊びという名の特訓をよくやっていたと教えてくれた。


ちなみに、お父さんの長男トンガさん、次男ルンガさんと、マコールさんの次男クルトさんは 今パーティーを組んで 大陸を旅しているのだそうだ。

クルトさんには マコールさんから≪美味しいものを食べること、他の町での屋台の勉強をしてくること≫という指令が出されているらしく、冒険者ランクも銀の上級まで上げないと帰宅できないらしい。

ケーテさんのお兄さんと言い、結構厳しい家が多くない?


「あのね、私は この大陸のダンジョン全部行ってみたいの。それから、ドラゴンに会いに行ってみたいの。だから冒険者のランクもしっかり上げていきたいの。

なので、解体もちゃんと出来るようになりたいです。よろしくお願いします!」


「トンガたちよりも 冒険者に憧れが強くないか?」


「これは元々じゃ。儂が教える前から 冒険者の憧れがあったようじゃからな。無茶なことする前に基礎を学びたいと頑張るのは、うちの息子らにはなかったし、吸収力も凄いぞ?」


ちょっと呆れられた感じもあるけど 納得してくれたようで、解体はしっかり教えてもらうことが出来たよ。

ただ、ボアはママチャリくらいの大きさがあるし、ビッグピッグなんて大型二輪車くらいの大きさがあって、皮を剝ぐために よじ登る必要があって、解体作業の日は血みどろになりまくったよね。


出来れば現場で血抜きをしてきた方が 肉の味はあがるから、ダンジョン産の時間経過が遅くなるマジックバッグがあれば、解体をすぐに出来ないならそれに入れておくことを勧められた。

将来の話、として言われたけど 今現在時間停止の鞄を持っているからね。

ただ、それに入れた肉をギルドに提出するのは 鞄の性能がバレることになるから、ランクが上がって 大人になるまでは駄目だとも思った。



◆◇◆◇◆◇



村の人たちとの交流は子供採集体験を通して 大分出来るようになってきている。

最初は人族の幼女という事で、獣人の子供の体力で振り回してしまうのではないか、という恐怖心があったらしいんだけど、普段からトレーニングをしていることや、ハチ君、レン君がよく話している事を聞いたりして大丈夫そうだと判断されたらしい。


「うちの子達ったら、まだまだ興奮すると獣化しちゃうのよね。子猫や子ウサギなら大したことないんだけど、うちの子は小さくても力が強いから心配だったのよ」


熊獣人や虎獣人のママさんたちはそれで距離を置いていたと言われた。

虎獣人のママさんはマコールさん家の長男のお嫁さんだ。 こないだの解体依頼で仲良くなって、私の体力が人族の5歳児らしくはないと実感したらしく、今日お友達を連れて声をかけてくれたのだという。

遊んでいる途中で急に蜷局を巻きながら寝てしまった蛇さんとかもいたしね。子熊はヌイグルミのようで滅茶苦茶可愛かったことを報告しておきます。


村の大人たちにはカルタ作りや、子供採集体験のように村の出来事を共有できるように、定期的に村内会議が行われているんだって。

そこでは私の両親は他界しており、皇国の貴族に攫われかけていた事、今後もしかしたら髪色を見かけて人攫いが来る可能性があるから、色変えをしている事も通達されているみたい。

(というか、私の設定そうなってるんだね)


なので、何度か会っている大人たちも髪色や目の色が変化した事にも、子供だけど眼鏡をしている事も突っ込まない。ありがたい話である。






お読みいただきありがとうございます。

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