第76話 訓練レベルアップ
本日は2作同時投稿しております
こちらは 1/2 作目です。
週末の二日間は たっぷりカルタ板を作成して過ごした。
角材までの作業になっている木材もあるし、お父さんが授業で持っていくための研磨前までの準備をしている板も沢山作った。
お父さん的にはその作業をさせるのは 仕事を手伝わせている気がして遠慮してたけど、魔力訓練のひとつだからと説得して手伝った。
本当にお父さんってば 遠慮しいなんだよね。
勿論板作りだけではなく武術訓練も午後からやったよ。
アスレチックは学び舎でも同じような事をするようになっているから 体術と組手の練習も本格的に始まっている。
結界鎧が作れるようになったから お父さんから許可が出たんだよね。
訓練の時は両手足に身体強化も使うから、意識を集中しないと途中でどちらかが切れちゃうんだよね。
丸太や低い吊り橋など、地面に接する場所に作られていたアスレチックは除去され、かわりに木の枝から丸いボール状の物が高低差をつけて沢山吊り下げられている。
それらの中心部分を身体能力の蹴りと殴打で壊すのだ。
低い場所なら蹴りだけ、高い場所なら殴打だけ、ではない。その的 全てに両方の攻撃を中てないと駄目なのだ。
低い場所だとパンチ力が落ちるし、高い場所だと蹴るのに飛び上がらないといけない。
身体強化をしているから何とかなるんだけど、そっちに集中しすぎて結界鎧が消えてたりするのだ。
この訓練の時には 結界鎧に色を付けるように言われてて、消えたかどうかがお父さんに一目で分かるようになっている。
色を付けているから パッと見は全身タイツを着た幼女の出来上がりである。
一応、胸の真ん中の蜘蛛マークのかわりに菫の花にして、タイツの色もウーマンの方に寄せているので、胸から上が白、下が黒になっているんだけどね。
最初は驚いていたお父さんだけど、色付きでよく観察できたことで この結界鎧の丈夫さと防衛力が理解できたと納得していた。
全身タイツに突っ込みはないのでしょうか?
「ほれ、また鎧が脱げたぞ、蹴りの飛び上がりの時に足に集中し過ぎじゃ」
「はいっ」
どうしても高く飛ぼうと思うと 軸足に魔力を流そうと集中しちゃうんだよね。
「低いところでも拳だけじゃなく、上半身全体を使って、腰も落として 押し込むように殴りつけてみろ」
「はいっ」
低いところの的は力が入りにくい。蹴りは踏みつぶすようにできるんだけど、殴るとなると自分の下半身より下だから力が入らない。
お父さんの見本を見れば、瓦割をしているように見えた。
的には順番も書いてあるので、近い場所から壊せばいいという訳ではない。お父さんの森全体に 的がちりばめられているから、木の上の吊り橋を渡っていく必要がある的もある。
次の的を見つけるのには、視力強化もしないと見つけられない。現時点の的から距離はあっても必ず見える場所に次の番号は準備されているのだ。
「ほれ、次はどこじゃ?」
「ん~、ん~?あっ、あった!木の上!」
【アイビーグロウ】を使って蔦を伸ばし、蔦を掴んで樹の幹を駆け上がる。
ここからあの的までは吊り橋がないので、再び目的地との中間にある樹から蔦を伸ばし、ターザンロープで樹を渡る。もう飛ぶときに叫んでいない。
渡った先の太い枝に用意された的は丁度良い高さにあり、右パンチ、左パンチ、右キック、左キックを中てれば的が壊れる。
さて、次はどこだ?
枝の上から他の枝を見ても数字は見えない。では下にあるのだろうと目を向ければ 先ほどのターザンロープの蔦を伸ばした樹の中央部分に的が見えた。
「ムム、あの場所だと下からでも飛ぶのに無理があるね」
下にあった的の飛び蹴りが必要な高さは、大体私の身長より頭一つ分上くらいだった。
多分今の身長が100センチくらいだとしたら、120~140センチくらいのところにあったのだ。
だけどあの的はそれよりも高い。武術訓練の2番目の壁くらい、つまり2メートルくらいある。
となれば下りてからでは飛び上がって触ることは出来ても攻撃は無理だ。
であれば上から攻撃するしかないよね。
伸ばしたままにしていた蔦を呼び寄せて、それを自分の腰に巻く。
お父さんはずっと下から見守ってくれている。落ちたとしても大丈夫だ。
そのまま斜め下の的に向かって飛び降りながら蔦の長さが伸びるように【グロウ】を唱える。
ブ~ンと振られながら的の樹にぶつかる手前で蔦を身体に引き寄せ、足で樹を蹴りながら下りていく。
おお、壁面を上り下りする盗賊っぽいね。
足元に的が見えたところで、先に右キック、左キックを中て、さらに下がって両足を的の少し下で広げて立ち、蔦と足の三点支持でバランスをとりながら、右左のパンチで的を壊す。
「おお、上手いもんじゃ」
お父さんの声が聞こえて するすると下りていく。
何かに似ていると思ったけど、これってクライミングにも似ているね。岩場の不安定なところで細いロープ一本で休憩している人を見て、恐ろしくないのかな?って思ってたけど、それに似てるかも。
「お父さん、今の感じで良かった?」
「おお、ようやった。アレはどうやったらいいか悩むかと思ったが、よく怖がらんと下りてこれたな」
ワシワシと頭を撫でられて嬉しくなる。
吊り橋の途中で 風魔法の失敗のせいで吹き飛ばされた時は流石に怖かったけど、あれでもお父さんが直ぐに助けてくれたし、大丈夫だったのが分かったから今はそんなに怖いと思わない。
「さて、今日はこの後 ギレンの店に行こうと思っておるんじゃが、まだ動けそうか?」
ギレン?って誰だっけ。最近聞いた気が……。
「あぁ、武器屋のダンダダさん? え?お父さん、私武器作れるの?」
「ははっ、もうすぐ銅ランクになるじゃろ? 風の季節は余所者が増えるのもあるしな、その時期には村を離れてても大丈夫なぐらいには、討伐も行えるようにしておこうと思ってな。
少し早いと思ったんじゃが、サブマス達もヴィオの成長の早さを見て賛成してくれたからな」
マジで? もしかしてもうお外に行けちゃう?
ホーンラビットとか狩っちゃう?
うっひょ~い! 冒険者って感じではないですか!
いや、勿論薬草採取だって、常設依頼だって、村中依頼だって冒険者としての大切な仕事だって理解してるよ?
だけど、だけどさ、やっぱり冒険者って言ったら魔獣討伐じゃない?
その大事な大事な相棒にもなる武器!
訓練場の武器は大きすぎて私には扱えなかったけど、武器屋さんなら作ってもらえる?