第65話 エルフが来た!
本格的な魔法の先生との出会い
本日は同時投稿しております
こちらは1/2作目です。
週明けの学び舎で魔術訓練の授業が始まる前に サブマスから呼び出された。
お父さんたちも木魔法の先生として授業に参加するから、実際に呼びに来たのはお父さんだけどね。
ということで、魔術の授業の木魔法はリスマッチョ先生と、熊獣人のサンド先生の二人で見てくれるんだって。
お父さんと一緒にサブマスが待っているという会議室へ。
コンコンコン
「どうぞ~」
いつもの感じで声がするので入室すれば、ギルマスとサブマス、それから知らないおじさん?が居た。
ケープみたいなのを羽織ってるけど、長ズボンと編み上げブーツを履いているから旅装なのだろうか。
この村の人以外をはじめて見るから まじまじと見つめ過ぎただろうか、おじさんと目が合った。
あれ?この人 耳が長いような気がする。
「ほほう、この子が 魔法の不思議を色々聞きたいと言っていた子供かね。思っていた以上に小さいな。もしやドワーフかい?」
「先生、ヴィオさんは正真正銘の人族の5歳ですよ。
ヴィオさん、この方は 先日お話した私の恩師、ダンブーリ・ドゥーア先生ですよ」
え?何て?
ニアミス?聞き間違いではなくて?
あの世界一有名な魔法学校の校長先生とめっちゃ似てる名前じゃないですか。髭ないけど。
「はじめまして、人族のヴィオ、5歳です。」
「ほほう、本当に人族なのですね。ドゥーアです、魔法の事で聞きたいことや調べたいことがあるのでしょう?私が特別に教えてあげましょう。
ふっふっふ、楽しみですね。
最近の学生は どれだけ魔法を上手く使えるようになるかとか、威力を上げるにはどうしたら良いかなど、ありきたりの事ばかりで探求心がなくなって楽しくなかったのですよ。
まさか、当り前に使われるようになって長い生活魔法についての質問が来るなんて思っていませんでしたしね」
おお、この人 サブマスと同じ匂いがするよ。
魔法オタクだね。 お父さんはポカンとしているし、ギルマスは呆れ顔、サブマスだけがウンウンと頷いている。
まあ、よく分からない魔法の事を教えてもらえるなら嬉しいし、このおじさんが来てくれたなら お水を作る魔法も おじさんが考えたって事にしてくれたらバッチリじゃない?
「ヴィオさんのカルタやトランプを考えられる能力からすれば、学び舎での授業は必要がないのではと思うのですが」
「えっ!? 皆と勉強できなくなるの? まだ全然お勉強できてないよ?
カルタもトランプも、数字と文字を覚えるのに便利だと思って用意したんだよ? 」
サブマスの言葉に驚いて、思わず被せて声を出してしまった。
この国の事とか、冒険者の事とか、座学だってまだまだ勉強したいことが沢山あるのに!
「ほお、子供が自分から学びたいと思うなど、この学び舎ではそんなに面白いことがあると?」
エルフ先生が 楽し気に覗き込んでくるけど、年が近い皆と一緒に勉強するのは楽しいんじゃないかな。元の世界で勉強好きだったか記憶はないけど、魔法などという面白い事も、新しいこともスルスルと覚えられる今は楽しくて仕方がない。
「そうですね。武術訓練も最近は随分面白いことをしているようですし、魔術訓練は要らないかと思いましたが、カルタ作成の細かい作業は魔力操作の上達が目に見えているとアリアナからも報告がありました。生徒たちもヴィオさんが来てから 良い影響を受けているようですからね。
授業はそのまま受けて頂いて良いでしょう。ただ、学び舎はあくまでも冒険者としての基礎を学ぶ場、銅ランクに上がれば卒業ですから、ヴィオさんが他の子供達よりも早く卒業するのは間違いないでしょうね。もうすぐ青銅でしょう?」
そうか、学び舎が出来た理由は 冒険者として外での討伐に行くときに あまりに無知で死亡する若者が多かったことを憂いたのが始まりだって言ってたもんね。
文字の勉強も 依頼書が読めるようになるためで、下手な契約書にサインすることがないようにだし、
計算の勉強も、依頼で金銭の受け取りを誤魔化されたり、他所の町の屋台などでボッタくられないためだし、
魔法の練習は 基本的な魔法の使い方を取得するのが目的だし、できれば魔力操作もしっかりできるようにというのが卒業前の目標だし、武術訓練は言わずもがなだ。
銅ランクで外の依頼を無事に受けることが出来るようになれば、学び舎は不要だという事だね。
うん、理由が分かっていての卒業なら そこまで頑張るだけだもの。
「うん、あと5ポイントで青銅に上がれます。今日と明後日で達成するかな?」
「まあそうじゃな。なんなら今日 5ポイント分頑張ってもええんじゃないか?」
お父さんに確認してみたら、今日でも大丈夫って。平日は 3ポイントが多いけど、そっか カイフク草じゃなければ本数半分でポイントになるもんね。50本も丁寧に1枚ずつ採集するのは結構大変なのだ。
「この子は5歳といっておったが、もう冒険者登録しているのか?洗礼式は7歳だろう?」
「ああ、先生、それも説明が必要となるのです」
そう言って、ギルマス、サブマス、お父さんの3人がはなし、時々質問されたことに答える感じで 私の生い立ちが説明された。
「ほう、では彼女の母親は亡くなっており、父親は行方不明。多分母親は 聖魔法の使い手であったと。
この子自身も魔力の適正が全ての属性にあるという事ですか」
熊獣人のお父さんの実子じゃないのは見た目で分かるからね。
今は茶髪になっているから、色的にはお揃いだけど、人族の遺伝子はそのほかの人たちより薄いのか、獣人、海人、エルフ、ドワーフ、そのどの種族と交わっても、相手の特徴が強く出るらしい。
ドワーフの場合は ハーフの男子だと多少 毛が薄いという特徴にはなるらしいけどね。
だからケモ耳も尻尾もない私は完全人族という事が分かるという訳だ。
「では、平日は学び舎で 他の子らと学べばよかろう。
週末2日が休みなのだろう? そこで私が魔法を教えてやろうではないか。其方の魔法への考えも面白い。私も今更考えたことのなかった生活魔法と通常魔法の違いも、共に考えてみようではないか。
それならどうだ?」
エルフ先生は学び舎を辞める必要はないと言い、その上魔法を教えてくれるんだって。
週末はお父さんとの特訓と 薬草のポイントを荒稼ぎするのに良い時間だったけど、平日の午後に回せばいいだけだもんね。
「ドゥーア先生、よろしくお願いいたします」
「ふっふっふ、本当にしっかりした子供だな。ヴィオ嬢、よろしく頼むよ。」
こうしてエルフの すんごい魔法教師による指導が始まることとなった。