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第62話 授業でカルタ


週末のちびっこ体験は、村のお祭りのような盛り上がりとなり、週明けの学び舎でもその話題でいっぱいだった。

先生たちは休日返上での仕事のようなものだったし、ギルドの職員さんも 素材の鑑定が大変だったみたい。

初体験だから 握りつぶしちゃって素材にならないものも多く、付き添いで来ている両親からごねられるようなことは流石にないけど、頑張って採集したのが駄目だったと知って泣く子供をなだめるのが大変だったんだって。


「ロン君は大丈夫だったの?」


「1日目は帰りに寝ちゃったし、昨日は母ちゃんに任せて昼飯食べに先に帰ったから、ロンは結果を知らないんだ」


「ロンにしたら 普段できない体験をしに行く!って言うのが目的だったからね。結果は二の次かな。

ヴィオちゃん 2日も付き合ってくれたありがとうね」


「おお、ヴィオ うちの父さんもありがとうって言ってたぞ。俺も父さんに話したことがこんなに祭りみたいになるとは思ってなかったけどな」


そう言えばロン君は2日とも終わってからギルドには寄ってなかったんだね。

ナチ君からもお礼を言われたけど、私もまさかこんな大規模なお祭りになるとは思ってませんでした。

そんな祭り明けの雰囲気を残しつつ、週明けの木の日と火の日は カルタ作りの続きと 木札の魔術練習、トランプの作成と アスレチック体験を行った。




そして、3回分の授業を内職 というかトランプとカルタのカード作りに励んだことで 4回目の今日、ついに授業でカルタを使うことが出来るようになった。

はじめは1枚ずつ読みながら 文字を覚える予定だったんだけど、作りながら それはやっていたし、皆も早くカルタを使ってみたいという雰囲気になっているのでね。

ポール先生もウキワクを隠さないでいるので、今日の授業はカルタ体験になるようです。



「さあ、皆が頑張って作ってくれたカルタが 遂に出来上がりました~、拍手~!」


「「「おおお~~~!」」」


男子チームが歓声を上げ、女子は拍手で盛り上げますよ。

一応カルタの使い方は先生たちに説明しているので、今日の進行も先生がやってくれることになっている。

トニー君、ナチ君、ルン君の3人が机と椅子を教室の端に避けてくれて、中央部分には 先生が持ってきた絨毯。少し厚みのあるそれを三姉妹とケーテさんが敷いてくれる。

私たち5歳児は 邪魔にならないように避けておくくらいしか出来ない。


「じゃあ、3人には カルタを並べてもらおうかな?絵が見えるように並べてね」


「「「は~い」」」


やることを見つけてくれたようだ。

三人でカルタを預かり、表向きになるように、重ならないように並べていく。向きは敢えてバラバラだ。


「さて、ではまずはカルタの場所を覚える時間にしようか。

皆自分の場所を決めたら そこに座って。読み札は先生が読むからね。」


靴は脱ぐように言われたので 皆靴を脱いで絨毯に上がり、好きな場所へ座る。

私も自分の場所から カルタをゆっくり眺め、どこに 何のカルタが置かれているかを記憶していく。


「あの黒い丸が二つ並んでるのなんだ?」


「“く” だから 黒い丸なの~?」


「ちげえよ、靴屋のミリーナさんだよ。黒い靴の横に 兎がいるだろ!」


絵は……、まあ 子供のクオリティですから、絵より文字で覚えるしかない。

トニー君が弁解しているけど、黒い楕円と丸に楕円が二つ付いただけのそれを見て 靴ともミリーナさんとも思えないです。

ナチ君は絵の勉強をしていただけあって 流石の腕前だったし、ケーテさんとルン君は、上手くはないけど 何が書いてあるかは十分分かるレベルだった。

トニー君は何故あんなに自信満々だったのだろうか。いや、今も解説しているから 下手だとは思っていないらしい。


「じゃあ そろそろいいかな?読むよ~」


先生の声で 皆の姿勢がピンとする。結構真剣な表情です。


『たまごは ココッコの こどもです』


「た、た……」


「たまごの絵、どれ?」


「あ!はい! って、白い丸だけって、これトニーだろ?」


「なんだよ、卵だろ?それ以外の何に見えるんだよ」


“た” を見つけたけど遠くて、見つけた時には ナチ君に取られてしまった。

そして黒い楕円二つを靴だと言い張るトニー君作の卵は白い楕円が一つだけというシンプルなモノ。

私たちは文字を入れただけで 出来上がりは今日初めて確認したからね。先生たちはツッコまなかったんだね。


「まあ、文字を覚えるのが本命だからね~。皆も絵に頼らないで文字で探そうね~。

じゃあ次いくよ~」


先生は言葉の先生だものね。中々シビアです。


『ダンダダは 冒険者の 武器防具店』


「はい!」


「あ~、狙ってたのに~」


「これすっげえ絵が上手い!これギレンさんだろ?超そっくり~。」


次のカードはミーレさんがゲットした。

カードにはトカゲ獣人さんが斧を片手に立っている絵が描いてあり、本当に上手い。

どうやらケーテさん作だったらしくて、嬉しそうに照れている姿が素敵です。


絵の上手い下手へのツッコミもあるものの、カルタ取りは順調に進んでおり、皆自分の手元にあるカードは死守することを徹底しているだけあって、均衡している。

開発者の私が断トツってなるのがテンプレじゃないの?と思いつつも、運動神経の優れた獣人たちには、たかが5歳の人族は 知っているという優位を持ってしてやっと並べるんだと分かったね。


残り5枚になってからは お手付きもあるし、とびかかり方が半端ないので、私も三姉妹も 見学っぽくなっております。

あの団子の中に入るのは無理。ケーテさん は全く負けることなくぶつかって行っております。格好良い姐さんです。


はじめてのカルタ大会は、ナチ君が優勝。

私は5枚、自分の近くにあるカードだけとなりました。

超絶悔しいので 練習したいところだけど、この独創性が高すぎるカルタは1組しかないから 慣れるしかないね。


ちなみに魔法の授業では 7歳組はいつもの攻撃魔法の練習に戻っているんだけど、カードの製作は続いているので、私たち5歳組と 三姉妹は カード作りを続けています。

先生的にも 魔力操作の練習になる事、5歳組に教える生活魔法がない事、3人の木魔法のプロが付きっきりになってくれることで安心な事、木魔法と風魔法が上手く使えるようになれば 来年には補助魔法を教えられるようになるかも。などの考えからお父さんたち3人が教えに来てくれています。


ハチ君とレン君も ウインドカッターが使えるようになっていて、リスマッチョ先生に褒められている。

4回目にもなれば 大分狙いも正確になってきているようで、遠くの的に攻撃魔法を打つよりも高度な事が出来てるんじゃないかな?と思ってたりする。

三姉妹は 研磨の作業から 細かく切り分ける作業に移動しているんだけど、あれだけ細かい魔力操作が必要な研磨をしていたからか、本人たちも驚くほど簡単にウインドカッターが使えるようになっていると喜んでいた。

小分けにするのにカッターが必要で、角を落とすのに研磨を使うようにしているらしく、この作業だけで三姉妹の魔力操作のレベルは上がっていると思う。

ハチ君たちも次は お父さんの研磨をすればいいかもね。誘ってみよう。

お読みいただきありがとうございます。

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