第60話 ちびっこ採集体験 リハーサル
本日は同時投稿しております
こちらは 1/2作目です。
さて、週末の今日は 学び舎がお休みである。
先週はガッツリ採集でお金とポイントを稼いだわけだけど、今週はちょっと違う。
子供用採集ハサミが出来上がった事で、まずはレン君たち兄弟と、ハチ君兄弟との採集体験を行うのだ。
これで上手くいけば 明日は村長の森で 村の子供達も一緒にちびっ子採集体験が行われる。
つまり今日はリハーサルだね。
朝からルーチンのストレッチを行い、最終準備を整えている。
「ヴィオ、準備万端じゃなぁ」
「うんっ!今日のが上手く行けば 明日は村長の森でしょ?
まだ会った事のないちびっ子がいっぱい来るんでしょ?」
ちょっと準備が早すぎて ストレッチもいつもの倍出来ちゃったけど、ちびっ子モフモフに会えるなんて楽しみで仕方がない。
「ヴィ~~オ~~~」
「は~~い!お父さん、来た!」
表から レン君らしい声が聞こえたので慌てて外に出る。
「アルクさん今日はありがとう。私もちゃんと見てるけど、採集はあまり得意じゃないから教えてもらえるのは助かるよ」
「おぉ、君がヴィオちゃんだね、初めましてランダです。ルンたちの父親なんだ」
レン君たちの後ろには リリウムさんと 黒髪のイケメンが立っていて、お父さんだと名乗られた。黒猫要素はお父さんからだったんだね。そしてやっぱり “ラ”から始まる名前だった!
ランダさんがお洋服屋さんのデザイナーで縫製も担当しているらしく、普段は引き籠り気味なんだって。今日はリリウムさんに引っ張り出されたらしい。
タキさんも今日はギルドのお仕事をお休みして参加。1歳の妹ちゃんは流石に参加させれないので、奥さんはお留守番をしているらしい。
「ぼくがやくそう名人になったら、クッキーが3歳になった時に 採集を教えてあげるんだ~」
「そうだな、ハチが教えられるようになったら俺も安心だ」
お兄ちゃんのナチ君が ハチ君を褒めながらワシワシしているのが羨ましい。
そして妹はクッキーちゃんと言うんだね。更に下が産まれたらなんという名になるのだろうね。“トウ”なのか “ジュウ” なのか…気になるね。
「それじゃ、初めてのハチ、レン、ロン、お前たちは必ず誰かと一緒に動くこと、川には近づかんこと、薬草を切る前に必ず確認してもらうこと、それを守るようにな」
「「「うん!」」」
猫尻尾がブンブンなのは末っ子のロン君。いつも猫になっているところばかり見ていたけど、今日はちゃんと人型です。
さっきはじめましての挨拶の時に クルクル回りながら凄くクンクンされたんですけど、今までの獣人にされたことがなかったから非常に驚きました。
ご両親からめっちゃ謝られたけど、小さいときは興味のあるものや人にクンクンしちゃうらしい。5歳にもなれば 教育されてやらなくなるらしいけど、逆に大人になると お酒を飲んで好きな相手にソレをすることもあるらしい。
お父さんから注意喚起をされ、皆で手袋をつけ 準備万端でお父さんの森に入る。
「わぁ、凄く手入れされてるね」
「歩きやすいね」
「魔素も満ちてるし、これはヴィオちゃんが持ってくる薬草の質が高いのもわかるね」
大人たちは森の中に入って周囲を確認しながら 驚きの声を上げているけど、子供たちはキャッキャしている。お兄ちゃん二人は 弟たちが走り出さないか注意して見ているので、ゆっくりだ。
「ハチ君、レン君、ロン君、見て、これがカイフク草だよ」
「こっちの葉っぱと何が違うんだ?」
「これをぬいたらいいの?」
カイフク草だけが密集しているあたりで三人を呼び止める。勿論普通の雑草も生えているけど、ちゃんと見れば カイフク草が沢山生えているのも分かる。
ロン君は葉っぱをそのまま抜きそうになっているので一旦止める。
「よく見てね? こっちの普通の葉っぱは丸いでしょう? で、カイフク草は少し先が尖ってるの。
それからコッチの葉っぱは同じように尖ってるけど……ほら、裏側が違うのは分かる?」
三本の葉を切り取って 三人に見せる。
カイフク草は楕円形で少し先端が尖っているのが特徴で、裏も表も綺麗に緑色一色だ。葉脈も真っすぐなのが特徴。
「ん、裏っかわがちょっと赤い? これは違う種類?」
「そう、違うんだよ。ルン君、ナチ君、この葉っぱの種類は分かる?」
「僕はちょっと分からないや」
「うん、ハライタ草だな。間違って飲んだらトイレにしばらく籠ることになるぞ」
ナチ君が正解を答え、ちびっ子たちが「え~~~」と盛大に嫌がる。正式名称も書いてた気がするけど、冒険者通称はハライタ草、私もそれで覚えた。
便秘の人には煎じたこの草を飲ませれば良いと思うけどね。
「すごい似てるの危なくないか?」
「兄ちゃん、おなか痛くなる?」
レン君とロン君の尻尾が丸まっているけど、似た者兄弟だな。
「そう、だからこそ 間違えないように、薬草を採るときは 特徴をしっかり確認するのが必要なんだよ」
「でも、ギルドに出した時に間違いって気付いてもらえるんじゃないの?」
レン君に確認の必要性を伝えたら、ハチ君が不思議そうに聞いてくる。
お父さんがギルドで確認してくれてるから余計そう思うのかもね。ルン君に目線で問いかければ応えてくれる。
「ハチ、冒険者は 納品するために素材を採ることも多いけど、そうじゃない時もあるだろう?
例えば 魔獣との戦いで怪我をして、カイフク草でどうにか一時的な回復をしようと思った時に、それがハライタ草だったら?」
「え~~~、怪我してるのに、おなかも痛くなるの?外でしょ?死んじゃうよ~」
「「「ぶっ」」」
あまりに素直な発言に、大人たちが後ろを向きながら肩を震わせているんですけど、子供たちは真剣です。ロン君も おなかを押さえながら レン君のお袖を握ってプルプルしてます。
「そうだな、だから薬草辞典はあれだけ詳しく書いてくれてるんだな」
ナチ君は村長さんの辞典を読んでるんだね。
「ナチ、ちゃんと勉強してるんだな。
ハチ、確認の理由は分かったか?ロンとレンも?」
タキさんが子供達と視線を合わせて確認すれば、3人も激しく頷いているので、確認の重要性はよく理解しただろう。
今日はこのままカイフク草の採集をすることにしたよ。マリキ草は また少し違うからね。初めてで種類が増えると分からなくなっちゃうからね。
「薬草は根っこが必要なモノもあるが、カイフク草は この茎の部分からだけでええ。葉っぱの生えとる この部分にハサミを入れるんじゃ。
ああ、その時に葉っぱを握りしめんように気を付けるんじゃ」
「まずは葉っぱを確認するんだよ。形は合ってるかい?裏側も見たかい?」
「そうそう、持つときは切る手前の茎をもつと葉っぱがグシャってならないよ」
ロン君にはお父さん、レン君にはタキさん、ハチ君には私が付きっきりで採集に付き合う。
ナチ君とルン君は 時々私たちに採集した葉っぱを見せて確認に来るくらい。
ランダさんは 冒険者経験が全くないらしく、薬草知識は全くない。子供たちが無茶しないようにだけ確認要員である。
リリウムさんは 元冒険者だったらしいけど、採集ではなく 討伐メインだったらしく、薬草をチマチマ確認するのが苦手だったという事で、こちらも子供たちの動きを確認する要員だ。
ナチ君たちは 流石に採集の経験もあるらしく、数回やれば薬草を傷付けずに採集できるようになっている。ただ、チラ見で採集することもあるから、時々ハライタ草を混在させている。
ハチ君は ハサミだからか、3枚目くらいには葉っぱを握りしめることなく採集できるようになっている。
私はナイフだったからか、結構な枚数失敗したのに、文明の利器は偉大だね。
1本の茎に3~4枚のカイフク草が生えているけど、全部は採らないように注意している。
上の元気に大きく育った葉だけを採集して、下の小さな葉は成長を待つのだ。
多くても1本の茎から2枚しか採集できないので、別のカイフク草の茎を見つけるのに移動が必要で、トラップのようにハライタ草を混ぜて生育させているので、結構大変だったりする。
今回の為に このエリアは お父さんが手入れしたからね。
カイフク草も多いけど、ハライタ草も同じくらい生やしているんだ。
レベルアップした時用の マリキ草エリアには、これまたマリキ草にそっくりのナミダ草が用意されている。ナミダ草は あまり自生してなかったから、今 絶賛増やし中なのだ。
ハライタ草トラップを避けながらの採集は 初体験のちびっ子たちにとって かなり神経を使うものだったらしく、10本も採集した時にはグッタリだったよ。
いつも元気なレン君ですら疲れてたからね。
ロン君は5本終わったところで集中力が切れ、ランダさんの背中で寝ている。まだ人のままだけどね。10本1セットだから、リリウムさんが残り5本を採集して、ギルドに納品することになったよ。
飽きたら土魔法も って考えてたけど、飽きることはなかったようで 3人とも真剣に頑張ってた。
ロン君は多分このままお昼寝コースらしいので、リリウムさんとレン君、ルン君、タキさんと ナチ君、ハチ君でギルドに納品に行くみたい。
私は確認作業が主だったから、採集はしていないからね。
午後に採集して納品する予定だ。
黒猫家族
父:ランダ(デザイナー)
母:リリウム(服飾店店長)
長男:ルン
次男:レン
三男:ロン
ラリルレロ家族ww