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第58話 言葉の授業と魔法の授業


言葉の授業では、前回の続きでカルタ作りをしたよ。

全ての言葉は前回の授業で揃ってたからね。今回は実際に木札に字と絵を書いていくことになった。


羊三姉妹が読み札を書いてくれることになっているので、ケーテさん、トニー君、ロン君、ナチ君の4人が取り札の絵を書いてくれることに。

私とレン君、ハチ君の3人は取り札の絵に 文字を一つだけ書くという役になった。


「まずは書く為の文字を手元の黒板で練習してから 木札に書こうね」


「君たちはまず自分の名前にある文字を選ぶといいね」


「わかった」


「うん、がんばる!」


自分たちのノートに絵の下書きをしている4人の横で、私たち3人は入れる文字の練習をしている。

先生も基本文字を45個 黒板に書いてくれているので、選んだ文字から消していけばいいだろう。

ポール先生からOKをもらった文字を木札の左上に書いていく。


「文字は同じ場所にあった方が 絵の邪魔にもならないから この部分にこれくらいの大きさで書こうね」


「わかった」


「うん、わかった」


素直過ぎてたまらんです。初めの数枚は 先生も大きさとか書く場所を気にしてたけど、大丈夫そうと判断されたのだろう、文字を書き終った札を絵描き担当の皆に配り始める。

こうしてこの時間は皆が黙々と 文字を書いて、絵を書くという時間になった。

流石に量が多いからね。この時間だけでは終わらなかったけど、また次の時間にやりましょうという事で 言葉の授業は終了した。



◆◇◆◇◆◇



「さて、今日はカルタとトランプの板を作るという作業をします。

勿論、攻撃魔法の練習中の子達は 的の準備もしておくから そちらの練習で良いわよ。

今日は 私だけではなく、木魔法の先生たちにも来てもらっています。では、おねがいします!」


後半の魔法の授業は、前回言った通りに カルタの板作りの時間になった。

先生の呼び込みで教室に入ってきたのは、お父さんを含めた大人が3人。様々な木の枝などを籠に抱えている。


「お父さん???」


ビックリし過ぎて思わず呼んじゃったけど、お父さんはニコニコしているだけだ。


「このカルタとトランプが 子供たちの勉強だけじゃなくて、既に冒険者となっている子達の勉強にも、勿論 大人にも有効だと分かったからね、村でも少し量を作ろうと思っているの。

トランプもカルタも 1セットだけでは学び舎にも足りないからね。

それで、木魔法が得意属性の3人にご協力いただいて、あなた達に細かい木魔法での作業を教えてもらうことになったの。」


子供達は皆 目をキラキラさせながら大人たちを見つめている。

流石にこんなに注目されることに慣れていないのか、少し照れくさそうにしながらも 籠を床に置いて自己紹介してくれた。


「熊獣人のアルクじゃ。ヴィオの父親じゃと言えばええかの? 木札はもう何度か作っておるからな、細かい仕上げの部分を教えよう」


「家具職人のサンドだ、俺も熊獣人だな。 俺は木片から木札に切り分ける作業を教えることになる」


「あ~、武具職人のアランだ。俺は切り出しただけの木から 木片にする最初の部分だな、失敗しても大丈夫なように材料は沢山持ってきたぞ」


教える箇所も担当制にしているだね。

サンドさんは お父さんと一緒の熊獣人だというけど、髪は灰色で目は黒い。色が違うだけでも随分違って見えるんだね。

アランさんは ムキムキマッチョさんなんだけど……、多分尻尾から見るにリスかな?

ふんわりクルンとした尻尾に 縦の黒いラインが数本、だけど本体がマッチョすぎて 振り返らないと尻尾が見えないというクオリティ。

まぁ、リス=かわいい というのは勝手な思い込みだよね。

リスでマッチョでもいいじゃないか……とは思うよ。

自分の中の記憶が憎い。これがなければ素直に受け入れることが出来る筈なのに。

そう思いながら先生の説明も聞いていく。



結局7歳以上組も 木魔法の練習をしてみたいって事になって、各担当に分かれることになった。

お父さんの仕上げ作業は こないだやった【研磨】だけど、ここは三姉妹が担当することになった。

一番繊細な魔力操作が必要になるから、操作の練習をしている3人にぴったりだろうとなった。


木片から1枚サイズに切り落とし、角を落とす作業は 7歳以上組になった。

厚みを均一にする必要があるし、角を落とすの細かい作業だからね。

私を含めた5歳組は、枝や丸太を木片に加工する作業担当になった。ある程度大雑把でも 小さくなりすぎなければ 先生たちが調整できるから。という事らしい。


リスマッチョ先生とアリアナ先生が見てくれることになったよ。

訓練場の中で大きな3つのエリアに分かれて、其々の素材を手に準備をする。


「よーし、じゃあチビ共、お前らは この木を加工しやすいようにしていくぞ。まずは見本を見せるからよく見てろ。

……って先生さんよ、チビ共は詠唱から教えるのか?」


「あっ、そうですね、そうして頂けると助かります」


「そうか。詠唱は久しぶりだな。

じゃあいくぞ〈風の刃で切り裂け【ウインドカッター】〉」


リスマッチョ先生の呪文と共に 手先から緑っぽいブーメランみたいなのが出て、枝の一辺が真っすぐ綺麗にスパッと切れた。


「「おおお‼」」


レン君とハチ君は感動で拍手をしているけど、アリアナ先生は「詠唱が短くないですか?」と言っている。

確かにサブマスさんも短めだったけど、それより短い。

普段この呪文に関してはトリガーだけでやってる人なんだろう。


「正式な呪文なんざ 昔過ぎて覚えてねえぞ?」


「はじめての呪文ですからね、私が教えましょう。

〈我が手に集まりし風よ 強く回転する風の刃ですべてを切り裂け〉ですよ。

では皆さんでやってみましょう」


アリアナ先生が張り切ってるんですが、そのダサい呪文唱えないと駄目です?非常に羞恥心が刺激されるんですが?

先生が片手を前に出して、二人もそれに倣って 手をつきだしている。


「まずはさっきのアランさんの呪文を思い出すのですよ。どんな魔法になるのかをしっかり想像して、しっかり呪文を唱えましょう」


「「わが手に集まりし風よ」」


「そうです、手の先に魔力が集まってきているのを感じますか?それを意識して 続けますよ」


「「強くかいてんする風の刃ですべてを切りさけ」」


「そうです!一度で長い呪文を覚えられたのは凄いですね。魔力が手の先に集まったのは分かりましたか?」


「う~ん、なんか腕からムズムズしたのが手の平にきたのがそう?」


「なんか変な感じだったな」


「そうです、間違ってないですよ。魔力は普段お腹の下の辺りに溜まっていると思ってください。それが呪文を唱えながら集中することで 身体を巡って手のひらから出るのですよ」


……へぇそうなんだ。

というか、そうやって教えたら手を前に突き出してからじゃないと呪文は唱えられなくなるよね。

初心者が始めて魔法を使う、慣れるまでの練習なら良いのかもだけど、うん、要らないね。

というか強く回転するなら 丸ノコみたいな風になるだろうに、出たのはブーメランだったし、全てを切り裂けって言ってたけど、目的の場所だけを切るんだよね?

呪文と内容があってないのはデフォルトなのか?二人を見ながら考え込んでいたら 肩をトントンされている事に気付いた。

集中しすぎて気付いてなかったけど、リスマッチョ先生だった。


「お嬢ちゃんは 一緒に呪文の練習 しなくていいのか?」


「リスマッチョ先生も短い呪文だったでしょう? 呪文は絶対に必要じゃないってお父さんにも教えてもらってるから、私は出来るだけ唱えないで出来るように練習してるの」


「リス、マッチョ……?」


やっべぇ、自分の中で呼んでた名前をポロリしてしもうた。

慌てて口を両手で押さえるけど、既に発言した言葉は隠せない。


「ぶっ、それはもしかしなくても俺の事か? 」


「あ、あの、ごめんなさい……」


「くっくっく、お前面白いな。俺の事そんな風に呼ぶやつ初めてだ。流石アルクの娘ってことか?お~い、アルク。お前の娘 面白いな!」


「可愛い娘じゃろう?やらんぞ?」


アワアワして謝ったんだけど、本人は全く気にした素振りもなく大爆笑しながら お父さんに軽口を聞いているくらいだ。怒ってないの?

ちびっこ二人は先生と真剣に呪文を練習しているから こちらには振り返りもしない。ちょっとホッとした。


「まあ俺もこの魔法くらいでは 普段は呪文を唱えないからな。

おお、ちょっと見せてみろ」


そう言って木の枝を立ててくれる。

この見せてみろってのは 私の魔法をやってみろって事だよね?そう理解してやってみる。

風を如何こうするというよりは自分の魔力をレーダーのように出すことを考え、それに風を纏わせるイメージだ。


「【エアカッター】」


ウインドカッターだとちょっと強いイメージなんだよね。首チョンパの丸鋸がビューンって感じ。

手元の細かな作業用ってことで、同じ意味ではあるんだけど 自分の中で違いを作ってみた。

こないだみたく強すぎる勢いではなく、私の指先と同じように動いてくれる。

リスマッチョ先生が切った反対側を同じように真っすぐ切れるように 指を上から下に真っすぐ下ろせば、風の刃も上から下にスッと下りて 木の皮を切り落とす。

うん、こないだは首チョンパしか想像できなかったけど、とっても安全な感じで出来ました。


「ん~、あ~~~、俺が使ってるのとは違うけど、まあいいんじゃねえか?

チビ共は太い木を残してやらねえと失敗出来ねえからな。お前はこっちの細い木でも大丈夫だろ?

俺もあのチビ達を教えてやらなけりゃだからな、1人で大丈夫か?」


「大丈夫、これ全部使っていいの?」


手放しの合格って感じではなさそうだけど、ここは教科書通りみたいなのはないからね。合格をもらって 細かい作業が出来そうだって事で 比較的細めの枝を渡された。

木札に加工するための木片にしないとだからね。

あらかじめリスマッチョ先生が印をつけてくれているのも有難い。その線に沿って エアカッターで切って行く。

灰色熊サンド先生も 木片に既に加工した状態のモノを持ってきていたし、お父さんは木札サイズまで切ったモノを持ってきてたみたい。

大人たちの下準備も中々大変だったのではと思う次第。

私が子供たちの魔法の練習をしたいだなんて我儘を言ったからだと思うけど、申し訳ない。


お読みいただきありがとうございます。

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