第57話 色変えの影響
本日は同時投稿しております
こちらは 2/2作目です。
昨日は昼寝の後に お父さんと土魔法の練習をした。
訓練場で 先生たちが作った壁の事を伝えたので、やり方を教えてもらったのだ。
お父さんは 落とし穴と土壁を一緒に作る方法も教えてくれた。
「訓練場での練習なら 落とし穴は要らんだろうがな、敵の足止めにはええぞ。
落とし穴で減らした分の土を壁に足すように作れば より高い壁になるし、落とし穴がある分、敵は壁を超えるのが難しくなる。
危険な場所で睡眠をとる必要がある時なんかは、洞穴とかの前に落とし穴と土壁を作れば 一時的な避難所になるんじゃ。」
そっか、素材が近くにある方が威力は高いって言ってたもんね、落とし穴の土もリサイクルしてあげれば良い感じなんだね。
前回やってしまったような魔力を土に馴染ませる必要は 土壁をつくるのには必要がなかったらしい。ただ、お父さんもあの後何度か繰り返したところ、馴染ませた方が土を自由に動かしやすくなったみたい。
ということで、うすーく畑の畝一つ分だけに馴染ませてみることにした。
「こないだのウォーターと同じじゃ。周りの水を集めるのと同じように、馴染ませてない部分の土も集めるように考えてみればええ」
ほうほう、確かに自分の魔力が馴染んだ土の周りも土な訳で、その子達も一緒に巻き込んで動かせばいいんだね。
「【アースウォール】」
呪文を唱えれば、丸太サイズの土壁がポコポコポコと 3つ並んで飛び出した。高さを考えてなかったから、3つとも同じ高さになっちゃったけど、1回に複数本の盛土を作るのは出来そうだね。
お父さんにも上出来と褒められ、平らに戻し、今度は高さ違いの盛土を作り、平らに戻しを繰り返し練習した。
◆◇◆◇◆◇
翌朝、お父さんがハーフアップにしてくれて髪留めをつける。
「お父さん、学び舎に行くときもつけといた方が良いの?」
「そうじゃな、皆にもこの色を見慣れてもらいたいし、ヴィオもこの色で慣れておいた方が安全じゃからな」
冒険者や商人がいつ来るか分からない事を思えば、今のところ この村の人以外に会っていないというのは偶々なのかもしれないってことだそうで、そう考えれば 私の目立ちすぎるピンク髪は隠す方が賢明ではあると理解する。
「あれ~!?ヴィオなんで頭が違う!」
「ヴィオちゃん? 違う子に見えるね、びっくりした」
「あら、髪型もいつもとは違うから お嬢さんらしくて可愛いじゃないか。ヴィオちゃんの髪色は珍しくて可愛らしいけど、アルクさんとお揃いで その色も良いね」
通学途中で 黒猫兄弟に遭遇したら、凄く驚かれてしまった。
リリウムさんは今日も片手に伸びきった黒猫を摘まんでいるけど、褒めてくれてありがとうです。
「ヴィオ、あのピンク可愛かったのにやめたのか?」
「うん、あの色は珍しいから 人攫いとかが来るかもしれないんだって。だから内緒にするの」
なんと言っていいのか分からないけど、危険性だけ伝えればいいかなって思ってそう言ってみたんだけど、レン君のシッポがピーンと逆毛を立てながら立ち上がったまま固まってるんですけど?
「アルクさん……?」
「週末の村中会議で詳しいことは話す」
「ヴィオちゃん、大丈夫なの?」
「お前、そんな怖い目にあってたのか?」
「あ、そういう危険性があるからってことで、今は大丈夫だよ?心配してくれてありがとう。念のためにって事だから、ね?」
ヘニョンと倒れた尻尾と耳が感情豊か過ぎて、どうしていいか分からないんですが?
リリウムさんとお父さんは何やら小声でお話しているけど、私はレン君を宥めるのに必死です。
とりあえず今日はこのまま黒猫兄弟と一緒に登校することになりました。ガルガルしてても子猫だからねぇ、シャーにしか見えずに微笑ましい。
学び舎の入り口で 羊三姉妹にも驚かれたけど、お父さんが「村人以外の人間が増える前に、この色に見慣れてもらいたい」と説明してくれたので納得してくれた。
「じゃあ、行ってくるね!」
「ああ、先生には説明しておくから 授業の時に皆に説明してくれるはずじゃ」
お父さんに行ってきますを告げて、皆で階段を下りる。
驚きはするものの、お父さんとお揃いの髪色って事で 非常に好感触だったのはとても嬉しい。
「みんなも見てわかるように、ヴィオさんの髪色が魔道具で茶色くなりました。
元々の髪色はかなり珍しい色だったのは皆も分かっていたと思います。
人族は獣人よりもたくさんの色を持っているけど、それでも見慣れない色は希少価値が高いと思われて、人攫いをしたりすることもあるんだ。
珍しい魔獣、珍しい植物、希少性の高い魔道具、人が持っていない武器。
魔獣や植物は冒険者でも依頼に出るから分かるよね?
魔道具や武器だとダンジョンに潜ることで手に入ることもある。
ただ、ダンジョンに行くことが出来ない人や、持っている人が分かっていて 奪えそうなら?」
「盗賊とか、そういう奴か?」
「そうですね、そういったことを生業にしている者もいます。獣人の子供を誘拐することも数年前までは多かったですからね。
ヴィオさんの場合は その珍しさが髪色だったという事ですね。避けることが出来る危険は皆で守ってあげましょう」
お父さんが言ってたように、授業の始まりにポール先生からも説明があった。
思ったよりも重たい感じで告げられた内容だったんだけど、獣人の子供の誘拐っていうのは 家で必ず聞かされているらしくて、皆も真剣だった。
特に簡単に獣化していしまう幼児期は 可愛い盛りという事もあり、人族のペットとして攫われることが多かったらしい。他国との境界門がある近辺の町や村では今でも注意喚起はされているらしい。
先生の注意喚起のお陰で、皆が守ってあげるモードになったのは 少し照れくさいけど、非常にありがたいと思った。