第52話 トランプのルール
本日は同時投稿しております
こちらは 1/2作目です。
今日の学び舎の授業が終われば、呼び出されてたので2階の会議室へ。
勿論お父さんが訓練室まで迎えに来てくれたよ。
会議室は大きい方のお部屋で、ギルマス、サブマス、ハロルド村長、ポール先生、エリア先生にアリアナ先生、エデル先生も一緒だった。
「さて、皆さん集まりましたね。先ほどの授業をご覧いただいたのでご理解いただけたと思いますが、この度ヴィオさんが考えたカルタという玩具は、この村だけで独占するのは申し訳ないほどの可能性を秘めていることが分かりました。
商業ギルドへの商標登録を早急に行うべきだと考えております」
「子供用のハサミも完成したようだしな、先端を丸めるハサミというのは珍しいから これも登録が出来るだろう」
「おう、一応このハサミと子供達に薬草体験をさせる事、学び舎でカルタを使って言葉を学ぶって事、魔獣系、素材系で現役冒険者にも有効ってことは ギルド会議でも公表するつもりだ」
会議が始まったと思えば サブマス、村長、ギルマスの順に話し始めたんですけども、私凄く場違いじゃない?何故ここに私が参加しているのだ?
カルタの商業ギルド登録の事だけだと思ってたのに、ギルド会議とかよく分からない言葉も出て来たし。
思わずお父さんのお膝の上で小さくなってしまったら お父さんが優しく頭を撫でてくれた。
「会議が始まったところですまんが、この会議にヴィオを参加させたんは何故じゃ?大人だけで話せることじゃったら後で儂が参加する。
ヴィオには早く昼めしと昼寝もさせてやりたいんじゃが?」
私の戸惑いを感じたお父さんが参加理由を質問してくれた。お父さんありがとう!
「ああ そうでしたね、申し訳ありません。
ヴィオさんはしっかりしているからお話を聞いてもらっていた方が漏れがないと思って参加をお願いしてしまいました。
ヴィオさん、カルタを作る際に トランプカードに関しても確認をされていたでしょう?あれも学び舎で使うつもりだったと伺いました。
どのように使うつもりだったか教えていただけますか?」
「おお、カルタと同じで 使い方次第では 他のギルドでも学び舎で活かせるしな」
ああ、そういう事なら確かに聞いておけるなら 聞いておく方が助かるかも。
という事で、トランプは算術の時間に使うつもりだという事を説明したら、エリア先生が机から乗り出すぐらいに興奮。ギルマスが個人で持っているトランプを持ってくるという流れになってしまった。
この世界で初めて見るトランプはどんな感じなのだろうか。
「お父さん、トランプはどんな遊びがあるの?」
「ん~、儂は直接遊んだことがないから分からんな。酒場で向かい合わせになった奴らが何やら賭け事をしながらカードを投げ合ってるのは見たことがあるんじゃがなぁ」
「貴族の購入するトランプカードには 購入時に遊び方の説明用紙も入っていますからね。平民用には紙の料金を減らすために入っていませんが、店舗には説明があった筈です。
まあ カードゲーム初心者でもやりやすいのは “魔王抜き” でしょうかね。
賭け事であれば “ポーカー” か “大貴族” でしょうね」
お父さんは見たことがあるだけって前も言ってたもんね。
サブマスが言う魔王抜きはもしや《ババ抜き》の事だろうか。《ポーカー》はまんまだけど、大貴族?それってもしかして《大富豪》の事?
トランプを作った人って 転生者だったりしませんか?
ルールが違うのかもだけど、そんなにネーミングが似るもの?
そんな事を考えていたら ギルマスがカードを持ってきてくれた。木札ではなく厚めの紙で作られたらしいトランプは、日本で使ったことがあるものより箱が少し大きいけれど、中はほぼ同じだった。
違うのはジョーカーが 黒くて羊の角みたいなのがついた怖い顔をしている人ってことくらい。多分これが魔王のカードなんだろう。
「さあヴィオ、あんたがあの子達に見せてやるつもりだったカード遊びを見せてみな」
エリア先生がワクワクした感じで カードを渡してくるんですが、結構いい値段のする玩具じゃないんですか?ギルマスを見てもやってくれと目で言われたので やるけどね。
「はじめは書いている数字と 絵の数を見て 数字を覚えるのが目的なんだけど、ハチ君もレン君も数字はもう覚えられたから、足し算からで良いと思うの」
そう言って魔王札を除いた カードを表向きに4枚並べ、それを更に4列並べた。テーブルは高いので お父さんのお膝の間に立って(靴は脱いだよ)腰をお父さんに支えてもらう形でテーブルに手を伸ばす。
「こうやって見えるカードの中で、同じ印のカードを選んで15になる数字を選ぶの」
並んだカードの中からハートの5,7,3を選ぶ。
「同じ印だったら枚数は2枚でも3枚でもいいことにして、数を覚えながら足し算が出来るようになるでしょう?この絵が描いてあるカードは数字として数えなくて、同じ印の3種類が揃ったら取り除けるの。
カードを取って空白になった場所に、こっちの取り札から新しいカードを並べるの」
3枚分の空白に取り札の山から3枚のカードを表向きにして並べる。
「この取り札と並べたカードが全部なくなったら成功って事だね。カードを半分にして2人で対戦すれば計算も早くできるようになるんじゃないかな。
あとは 魔王抜きのルールを少し変えて、捨てられるカードをペアにするんじゃなくて、足して10にするとかね」
あちらではヨツバノクローバーと呼ばれていたトランプゲームのルールを説明し、ついでにババ抜きの種類違いナンバーテンも提案してみる。
テーブルのカードから合計15が上手く作れなくなったところで 失敗。
あ~あ、と思ってお父さんのお膝に座り直したら、大人たちが思ったよりカードにかぶりつくような近くで見つめていた。ビックリするんですが!?
「ヴィオさんは 魔王抜きをご存じで?」
「んと、同じかわかんないけど、手元のカードから同じ数字を捨ててよくて、隣の人から1枚ずつもらって 最後に魔王のカードが残ってる人が負け。ってやつなんだけど」
「おお、当たりだ。やっぱりヴィオの親はトランプを知ってたんだな」
親が知ってたかは不明ですが、私は知ってましたよ。
という事で魔王抜きのルールを知っている サブマス、ギルマスと、やってみたいと希望したエリア先生との4人でナンバーテンをやってみることになった。
魔王カード1枚と、絵札を除いたカードを4人分 裏向きに配ってもらう。
椅子を移動させて 4人で車座になったところで、他の大人たちがその後ろをグルリと囲んで眺めている。
「ええと、手札のペアではなく2枚で足して10になるカードが捨てられるのですよね」
「ちょっと ザックス、あんた今捨てたカード足したら11じゃないか、戻しな」
「ええっ?6と5だろ?6、7,8,9,10,11、あ、ホントだ」
ギルマス……指折り数えてって大丈夫ですか?
アリアナ先生たちも ギルマスのカードを見ながら「アレも捨てられるのに」と口パクで言ってるのが面白い。
「じゃあ時計回りでいい?」
「そうですね。ではヴィオさんから私が貰えばいいですね? ではこちらを」
ギルマスはどうやらカードを捨てきれていないようだけど、動きが止まったところでスタートしちゃうよ?扇状に開いたカードからサブマスが1枚抜き取る。
手元のカードを確認して そのままギルマスの方に向き合った。
「ぬわっ!」
ギルマスが1枚抜き取ったけど、私からサブマスに渡った魔王は ギルマスに渡ったようだ。そんなに分かり易くて良いのだろうか。
ギルマスは優秀な冒険者だと聞いたけど、カードゲームは苦手な様子。
サブマスはニヤリと笑っているけど、カードを引いて 手持ちのカードと足せるかどうかを確認して見せたあたり 策士だよね。
分かり易く1枚飛び出したカードを引くはずもなく、1枚選んだカードは手持ちのカードと足せば10になったようで、エリア先生の手持ちカードが少なくなる。
私はエリア先生のカードから1枚選び、ハートの7が来たので クローバーの3とセットで捨て札の山に捨てる。
そんな感じで 少しずつ手元のカードを減らしながら ギルマスから魔王カードが動いた様子はなく、エリア先生が1番、私が2番、サブマスが3番で上がった。
「なんで、なんで俺のところから魔王は動かねーんだよ」
「あんなに分かり易く選んで欲しがってるのを選ぶわけがないだろうに。あれで引くのは子供だけだよ」
「ギルマス、10になるカード沢山持っているのに、見逃してるのが多すぎましたよ」
「もう口出しできないのがもどかしかったですね」
エリア先生厳しいですが、他の先生たちもゲームが終了した途端に 我慢していたのか 勿体ないを連呼。後ろで見てたらそうなるよね。