第47話 魔力操作訓練
エルフのお話を聞いた後は サブマスに水生成魔法の理論を説明したよ。
魔力のミスト化も、水魔法の水をミスト化させて見えるようにしたから 直ぐに再現できたサブマス。お父さんも隣で一緒にやってたけど、水玉から変化させるのがとても難しいって言ってた。
一番難しかったらしいのが、ミスト化した魔力を集めて絞るって工程。
水魔法の水だけでは説明がし辛くて困ってたら、お父さんがハンカチを借してくれて それで絞る工程を実践したらすぐに出来るようになったけどね。
出来上がった水から魔力を抜くのは 難しくなかったようで 直ぐ再現できてたよ。
「これは恩師にお伝えする前に 確実に自分のモノにしなければなりませんね。
ヴィオさん、素晴らしい魔法を教えてくださってありがとうございます」
結局説明が終わったらいい時間になっちゃって、帰ってから武術訓練をするのは暗くなるし止めておこうという事になったんだよね。
残念だけど 明日も休みだから、武術訓練は明日のお昼からやることにしたよ。
帰り道はお父さんの抱っこで帰宅。
ゆっくり晩御飯を食べたらお風呂なんだけど、お湯はお昼に生成魔法で貯めたのがあるから湯沸かしだけだね。
「ヴィオ、寝る前に魔力操作の練習をしておるじゃろ? どうやって練習しておるのか聞いてもええか?」
お湯が沸くまでお茶を飲んでたら お父さんから質問された。
朝は一緒にストレッチしているけど、夜は寝落ちするまでの時間にやってるから、お父さんは私がどんなことをしてるか知らないんだよね。
「んとね、いつもはお腹の中のフワフワを、胸から両手、頭から足先って全身を巡らせるようにしてたの。
昨日からは魔法の練習も兼ねて、葉っぱをフワフワさせてるよ。ちょっと待っててね」
そう言って子供椅子から飛び降りて お部屋にダッシュ。マジックバッグに入れておいた木の葉を2枚取り出してお父さんのところへ戻る。
お父さんが直ぐに椅子に座らせてくれたから、木の葉を1枚渡した。
「んとね、風のある日とか 落ち葉がフワフワするときがあるでしょう?あれをイメージして右手から左手にゆっくり移動するように動かすの」
そう言いながら自分の右手のひらを上に向けて木の葉を乗せる。
「ふわっと浮くように……」
(ん?昨日は風で移動することを考えてたけど、最初に浮かせるのは風を吹かせなかったよね?)
昨夜自分がやったことを反復しながら手の中の木の葉を見つめる。
(浮く、浮きあがる、ふわっと)
手の中の木の葉はゆっくりと浮き上がり始めたけど、やっぱり風はない。
という事はこれって葉っぱの重さがなくなった? もしかしたら重力魔法とかもある?
でもきっとコレも駄目なやつだよね? 慌てて流していた魔力を止めれば 木の葉は手の上に戻ってきた。
新しい属性とか、立て続け過ぎて お父さんにもサブマスにも迷惑かけちゃうから、ここは重力じゃなくって……。
「あ!マッサージで水の玉を作ったでしょ?あれの属性違いで風の玉を作ってみよう!」
ホットリフレで作った水玉の空気バージョン。
まんま風船ですけどビニールの膜はないからね。手の上に薄い風の玉を作ったら その上でフヨフヨと木の葉が動く。
浮いてさえいれば風を吹かせれば簡単に飛ぶからね。
「浮いた木の葉に弱い風を吹かせて、右から左、左から右ってやるの。強い風だと木の葉がボロボロになるし、弱すぎると飛ばないでしょう?
程よい風を作る練習になるし、丁度良いと思ったの……ってお父さん?」
「ん?ああ、いや、これは凄いな。
寝る前の訓練のレベルではないが、確かにそれだけ細かい魔法を沢山使っていれば魔法の練習にもなるし、魔力操作の特訓にもなるなあ。
ヴィオ、時々儂の練習も見てもらえるか?」
ポカンとしてたお父さんが感心したように言ってくれるから照れ臭くなるよね。
そんでもって、練習を見て欲しいだなんて。
「お父さん、お父さんはいつも私のできない事を助けてくれるでしょ?
明日だって武術の練習してくれるんでしょ?
私はお母さんに教えてもらってたから魔力操作がちょっと得意なだけなの。だったら、私の方が得意なことがあったら、お父さんに教えられることがあるんだったら嬉しいんだよ?
あ!そうだ、だったらお父さん一緒の部屋で寝たい。
私が練習して寝ちゃった後も、時々布団かけに来てくれてたでしょ?
一緒の部屋だったら寝るまで一緒に練習できるし、私が寝ちゃっても安心でしょ?」
「……ぶっ、わっはっはっは、そうじゃな、安心じゃ。
そうか、ヴィオは優しいなぁ。
それじゃあ魔法はヴィオに教えてもらおうかの」
助けてもらった日に使わせてもらった部屋が 息子さんのお部屋で、それからずっとそこを使わせてもらってたけど、お父さんと同じ部屋だったら 朝も寝坊しないで済む、なんて思って提案したら お父さんに爆笑されてしまった。
木、火、土はお父さんの得意属性だから、お父さんに教えてもらうことになるんだけど、私の魔力操作の訓練はかなり特殊らしくて、得意ではないけど風魔法で練習してみるって事になった。
ミニベッドをお父さんのお部屋に移動してくれるらしいので、私はその間にお風呂に入ることになった。
魔力を完全に抜いたお湯だけど、違いは全く分からない。
お風呂用にはウォーターでもOKだったんだもんね。
もしかしたら水魔法で沸かしたお湯の方が、肌から魔力が浸透して回復しやすいとかあったのかな?
魔力切れを起こしたことがないから分からないけど、それに関しては実験する気にもなれないから 放置で良いかな。
洗い桶の中でシャンプーしながら考える。
あ、そうそう、異世界あるあるの石鹸とシャンプーない問題だけど、この世界には存在しているのだ。
石鹸は然程泡立ちが良いわけではないし、香料付きでもないけどね。
シャンプーは 所謂リンスインシャンプー的なやつで、油とスクラブと天然香料くらいのシンプルなタイプ。
お父さんは普段は【クリーン】だけ、沢山汗をかいた日とかは石鹸で全身洗ってたらしいんだけど、私が来てから雑貨屋さんでシャンプーも買ってきてくれたんだ。
短髪なら洗うのも楽だと思うんだけど、お父さんは長い髪が可愛いって褒めてくれるから、面倒だけど伸ばしたままだ。
お湯で濡らした髪の毛に、シャンプーを馴染ませて 頭皮マッサージだ。
小さい手だから、もちろん指だって短い。頭皮マッサージもあまり気持ちよくない。むぅ。
昔使ったことのある タコみたいな頭のマッサージ用のワイヤーみたいなの、あれ欲しいなぁ。木で作るには細かすぎるよね。
魔法で応用できないかな。
火はアフロになる未来しか思い浮かばんし
木は蔦をどうにかしたらいけるか?いや、まだ攻撃魔法しか出来ないからなぁ。スパンと頭が切れたら怖いからダメダメ
土でなんか作れそうかな。とりあえず土人形作りからやってみるか
水が一番効果ありそうかな?いや、洗い流す感じになりそうだね、ダメダメ。
あぁ、でもあのミストの応用でシャワーが出来るかこの後やってみよ
闇と聖はそういう使い勝手がいい魔法はなさそうだよね。
明日土人形作りからやってみて、土をどこまで弄れるか試してみよう。無理そうだったらお父さんにしなりがある木の枝で作ってもらおう!
明日の予定を勝手に作ったところで、シャンプーも馴染んだだろう。櫛で髪を梳かしてから【ウォーター】で水玉を用意。
お水の温度をホットリフレと同じくらいに調整して 水玉を触って確認。うむ、ヨキヨキ。
頭上に移動させて水玉から少しずつシャワーの様に放水。
水玉のサイズを変えれば結構な量を準備できそうだね、これは便利な魔法だ。
シャンプーの流し忘れを手で確認し、問題なさそうなところで水玉を解除。洗い桶のお湯も【クリーン】で綺麗に片す。
最後にもう一度湯船につかってお風呂タイムが終了だ。
お風呂上りはお父さんが【ドライ】で髪を乾かしてくれる。
自分でやってもいいんだけど、お父さんがブラッシングしながらやりたいって言うし、とっても気持ちが良いからお願いしてるんだ。
しっかり髪を整えてもらったところで お父さんのお風呂タイム。私の半分以下の時間で出てくるけどね。
その間にお部屋の確認しに行ってビックリ。
お父さんの寝室の扉がなくなってて、入口の半分くらいまでのカーテンになってる。
確かに私が借りてた部屋も 夜中にトイレに行けるように、夜にドアは開けっ放しになってるし、扉を開けることが出来るとは思えなかったけど……今朝まではあった筈。
カーテンの長さは私の身長よりも高い位置にあるから、暖簾をくぐる様に屈む必要もない。
初めてお父さんの寝室に入ったけど、超絶シンプル。
ベッドと箪笥しかない。もしかしたら私のちびベッドを入れるのに移動してくれたのかもしれないけど。
部屋の右端に私のちびベッドと私用の小さなタンスが置いてあり、左端にお父さんの大きなベッドがある。高さも私の身長より少し高いくらいで、部屋の奥行いっぱい位の長さがある。お父さん大きいからね。
箪笥はベッドの横にあるんだけど、窓を半分隠すようになっている事を思えば、多分これまでは私のベッドがあるところに箪笥があったんだと思う。何か申し訳ない感じだね。
「おお、こっちに来とったか。ベッドはそのまま持ってきたが、下りるのが反対になったからな、使い勝手が悪くないか?」
お部屋を見てたらお父さんが部屋に戻ってきた。
はやい、早いよお父さん。
「うん、扉がなくなっててびっくりしちゃった。
ねえお父さん、この箪笥って、私のベッドがあったところにあったんじゃない?窓見えなくなったら暗くなっちゃわない?」
「箪笥は隣の部屋にまた移動させるつもりじゃから気にせんでええ。この部屋は寝るだけの部屋じゃと思ったらええ。
ヴィオの勉強机も前の部屋にあるから そのまま使ったらええし、着替えはアッチの部屋の方がええか」
お父さんは「着替えは一人でしたがるもんなあ」と言いながら箪笥をひょいと持ち上げて、元の部屋に持って行ってしまった。
結構しっかりした8段ぐらいの引き出しがある 木の箪笥なんですよ?
プラスチックの衣装ケースじゃないんですよ?
お父さんの箪笥は私用の箪笥の倍ぐらいある大きさなんだけど、コレもあんなに簡単に持ち上げるのだろうか。
お風呂上りなので、流石に大きな箪笥は移動させないという事になって、早速二人で魔力操作の訓練を開始。
お父さんはベッドとベッドの間の絨毯に胡坐をかいて掌に魔力を集める練習をしている。
私はさっきの反復練習だ。風の玉を作って木の葉を飛ばす。
お手玉をしている気分だね。
お父さんは風の玉が中々想像できないようなので、目に見えやすいように色を付けた風の玉を作る。風は緑であらわされることが多いらしく、色を濃くしようとしたら薄い緑のふんわりした玉が出来た。
それを左手で握りながら、右手で再現しようと頑張っている。
風が丸まるというのが理解できないというので、木の枝とかで作る工芸品は無いのかと聞いたら理解できたらしく、然程時間をかけずに再現できた。お父さんも何気に器用だよね。
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