第45話 カルタ板の作成と木魔法
本日は同時投稿しております
こちらは2/3作目です。
浴槽に貯めたお水は 今夜のお風呂にそのまま使うことにして、薬草の素材採集をしたよ。
休みの日だから沢山採集しようと思ったんだけど、途中でお父さんからカルタとトランプの板作りはどうするかと聞かれたから、前回と同じ数だけ採集したところでストップした。
昼食後の納品だから、ひとまずマジックバッグに薬草たちは入れておいて、ギルドに行くときにいつもの鞄に詰め直す予定だ。
「はじめは柔らかくて 加工しやすい木で練習するのがええじゃろ」
お部屋に戻ったら、リビングに数本の枝だった角材と 既に小さくカットしてあるカード状の板がある。
お父さんが1本の枝を手渡してくれたので受け取れば、同じようにお父さんも手元に枝を置いた。
「樹木に生えた状態じゃと 剪定の魔法を使うんじゃが、こうして素材として切り取った後は鉈やら のこぎりなんかを使う事になる。
じゃが、ヴィオは風魔法も使えるじゃろ? 風魔法で切ることもできるがやってみるか?」
お父さんは風魔法が得意じゃないから道具を使うらしいんだけど、私には鉈とのこぎりが大きすぎるから、風魔法の方が良いかもね。
切るなら【ウインドカッター】が良いと言われたので 試してみる。
厚みはそんなになくて良いから、とりあえず切りたいところに線を引いて そこを目指して唱えてみる。
魔力をネリネリ、風を纏わせるように、クルクル回転しながら飛ぶ風の円盤をイメージして……
「【ウインドカッター】」
スパン! カラン カラン
…………こわっ!
片手で持ちながらでは上手に魔力をネリネリできなかったから、重石を置いてテーブルから少しだけ端を出した状態だったんだけど、吃驚するくらいスパっと切れて 細い板が転がった。
「あ~、まあ攻撃力はありそうじゃな」
初めて使う魔法ということで、お水の失敗もあったからお父さんが見ててくれたんだけど、微妙な感想を頂きました。
確かに攻撃力はありそうだよね。綺麗にスパンと切れたし。魔獣相手でも盗賊相手でも首チョンパがはかどりそうです。
じゃなくて、作業の為に使うには凶悪過ぎて危険です!
「そうじゃな、切るのは儂がやろう。
ヴィオは磨くのをしてもらおうかの。
切り取った後は少し毛羽立っておるからな、木の表面をこうして撫でながら、木に魔力を流しつつ〈表面を整える【研磨】〉ほれ、こうして磨くんじゃ。
やってみるか?」
お父さんの手元にあった板を手に取り、私に見せてくれた。
確かにやすりをかける前の木の繊維が毛羽立っている状態だったけど、お父さんが板に魔力をゆっくり流しながら呪文を唱えて板を撫でれば、撫でられたところから板がツルリとやすり掛けされたみたいになった。
子供椅子の表面もこうやってツルツルにしてくれたんだね!凄い!
研磨前の板をもらったので試してみる。
左手に板を乗せて、まずは両手で挟んで 板に魔力を流す。
森に生えている木は土から枝葉に向けて魔力がゆっくり流れて、枝葉から根にもゆっくりと流れているらしい。
既に切り取られたこの板には薄っすら木の魔力が残っているけれど、新しく魔力が作られることはないので 私の魔力がすんなり通る。
右手に魔力を集めて呪文を唱えた。
「〈表面を整える〉【研磨】」
右手と板の間で静電気が走っているような、小さな風が渦巻いているような、何だか不思議な感触がする。少しくすぐったい。
でもくすぐったさを我慢しながら ゆっくり板の表面を撫でていく。
お父さんから 板と右手の間は少し空間をあけたままにするようにと言われ、離れすぎないように、くっつかないように 気を付けながらゆっくり撫でる。
お父さんの手だと一瞬だったけど、私の手だと掌1枚半くらいの大きさの板だから時間がかかる。
表面が綺麗になったので、そのままひっくり返して裏側も撫でれば完成だ。
「お父さん出来た!」
「うむ、何度か失敗するじゃろうと思っておったのに、一度で出来たなあ。ヴィオの魔力操作は本当にすごい技術力じゃ」
そっか、それで小さな板も沢山用意してくれてたんだね。
お父さんの気遣いに嬉しくなった。
そこからは、お父さんが枝から板の厚みに切って、私が磨くという作業を続けた。
柔らかくて扱いやすい材料っていうのは、切る時の話だったようで、磨く分には違いは分からなかった。
カルタ用の45×2枚と、トランプの54枚、合計144枚を用意するつもりだったんだけど、多すぎたよね。
だけど研磨の魔法も5枚目を過ぎたあたりからはとっても早くできるようになったから何とか出来た。
私のスピードが上がるもんだから、お父さんもヤル気になっちゃって、鉈でスパンスパン切って行くのよ。
大根を包丁で切ってるくらいの勢いで スパンスパン切るもんだから、私もお父さんの右側に立って、切れた板を直ぐ研磨してってやってたら、餅つきしてる気分になっちゃったよね。
角材にしてた枝が全部なくなったところで終了したんだけど、150枚を軽く超えてたね。
枝を切るのも失敗前提だったから、多めに準備してくれていたんだよ。
ウインドカッターは攻撃力があり過ぎて 直ぐにやめたし、切り取った1枚も狙いは外してなかったから 素材としては問題なかった。
研磨も1回目から成功したからね。十分に玩具用板が準備出来ました。
後は取り札と読み札の準備だけど、これはまた追々でいいかな。
とりあえずは昼食を食べてから、納品とサブマスに水魔法のご報告があるからね。
はぁ~、お腹空いた。
って、これが魔力不足の始まりかな?ってお父さんに聞いたら、普通に昼食時間を過ぎてるだけだって言われたよね。残念。