第391話 お祭りの準備
ナチ君たちとの訓練は 木の日と風の日にやってたんだけど、貸切でやるもんだから 彼ら以外の子供達から文句が出てくるようになってきた。
「ヴィオたちとの訓練をしたいのは他の子達もなのに レン達ばっかりズルい!」
「びおと遊びたいのに お部屋に入れなくするのはやだ!」
と中々可愛い文句だったんですけどね。
もちろん二つ目のはクルトさんの姪っ子ココアちゃんです。
学び舎組の子達も 年齢が近い分 一緒に訓練することを楽しんでくれてたんだよね。
けど週に二回訓練をしている今、魔法陣の練習は減らしたくないし、ボア狩りはアランさんからの指名依頼だ。
という事で 木の日は貸切での訓練か、森に行っての実地訓練となり、風の日は他の子達との訓練をするようになった。
学び舎の子供達は 大抵同級生たちと組むのが最初のパーティーメンバーで、銀ランクになる頃には合うメンバーと組むようになるらしい。
ナチ君とハチ君は 将来ギルド職員になることが目標だけど、羊三姉妹が入って戦力十分となった今、そんなに急いでギルド職員になる必要がなくなった。
だからこそ十二歳までは冒険者として経験を積むのだろう。
タキさん的には 成人するまで楽しんでも良いと思ってるみたいだけどね。
地下訓練場で散々特訓をしたお陰で、初心者の森では見違えるような動きになっていたとお父さんが褒めていた。
レン君はしなやかな動きで樹々の上に駆け登り 対象を見つければ蔦で拘束。
トニー君が剣で仕留めるか、ナチ君が風魔法で仕留めるという方法を取っていた。
ビッグベアの時に思ったけど、トニー君もホーンラビットを何のためらいもなく狩っていく。
兎獣人は兎に手を出しにくいという事はないらしい。
お父さんたちも 熊たちをボコスカやってたから 魔獣と自分たちの種族云々は全く関係ないらしい。
ギルドの解体場で練習してきただけあって ラビットの解体は随分上手に出来るようになっている。トニー君はちょっと雑なところがあるので 足とかに剥きそこねた皮が残ってることもあるけれど、丸焦げで肉も角も素材確保が出来なかった頃を考えれば上々だろう。
ただ 森での訓練をするとなれば、まだ銅ランクになっていないハチ君とレン君はお留守番となる。
五人での連携訓練の大切さを理解しているナチ君の希望もあって、森は隔週で行くようになった。
スチーラーズは領都まで行っているらしい。
まあ領都だったら色んな食材が集まるし、お店も多い。スイーツを買ってくるならそこが一番種類も多いのだろう。
火の季節には帰って来れる筈だと手紙がギルドに届いたことで、水の季節三か月目の最終週には お祭りの準備も始まった。
「私たちがギルド会議に行くまでに帰って来ればいいのですが、彼らの速度では難しいでしょうね」
戻ってくると連絡が来たのは先週末だ。
私たちがサマニア村から領都まで歩いて行った時には三泊四日だったと思うけど、通常の人たちは五泊六日くらいかかるらしい。
狩りを楽しんでいたし、あの頃はウインドダッシュも使ってなかった筈だけど そんなに時間が違うもの?
「ヴィオは儂らの速度に普通についてくるからな。
あの速度は成人男性冒険者だけのパーティーじゃと 平均……より少し早いくらいじゃろうか。
その速さがあるのに 休憩も少ないじゃろう?」
ああ、確かにケーテさん達からも驚かれたっけね。
そうか、インランのお姉さんは前よりマシになったとはいえ体力がない人だからね。
そういえば こないだ会った時にお姉さんは全く喋らなかった気がするね。
いつもなら アハ~ンな感じで ヴィオちゃ~ん♡って来る人なのにね。
結局スチーラーズが戻ってくるのは間に合わず、ギルマスとサブマス、そして初参加で緊張しまくっているタキさんを乗せたギルドの馬車はギルド会議の為に出発してしまった。
朝イチで馬車が出発した その日の夕方にスチーラーズは戻ってきた。
私たちは午後の訓練場での手合せをしていた帰りだったので ギルドの受付で顔を合わせたんだけど、やっぱりお姉さんはちょっと元気がなかった。
「ディスの兄ちゃんたち おっせーよ!ギルマスたち会議に行っちまったぜ?」
「マジか~! 結構これでも急いだんだけどな。途中の町で色々買いものしながら戻ってきたから 遅くなっちまったんだ。
祭りの準備ってどんな感じになってる?
俺たちの鞄 借りもんだからさ、中身出したいんだけど」
「おやおや、それならギルドの保管庫で預かろう。お前さん達の荷物は取り出してあるのかい?」
「ああ、俺たちのは自分達の鞄に入れてっから これは祭り用だ」
どんどんカウンターに積み上げられていくお酒や 甘味が入っているのであろう箱を見て、訓練場から一緒に上がってきた子供たちが興奮の声を上げている。
「ねぇねぇ、こんなに沢山購入してきてお金は大丈夫だったの?
すぐにお出かけしちゃってたから 集金もしてないよね?」
前回出て行った後に思ったのだ。
お金集めもせずに出て行ったけど、この人たちのポケットマネーで祭りをするのかって。
「ああ、いいんだ。俺たちがこの村に来て皆に世話になってるしな。
ヴィオちゃん先生だけじゃなくって 皆にも礼を言いたかったから 今回は俺たちの顔を立ててもらえると嬉しいぜ」
へぇ~~~~~~、超意外と言えば失礼かもしれないんだけど、最初に思ったイメージが最悪過ぎたのに いい人たちだったのか?
律儀というか何というか。
かなりの出費になっただろうに 全く気にしていない様子の三人を見て 子供達、特に男の子たちが「かっけ~~~」と憧れの視線を飛ばしている。
まあ確かに格好良いかもしれないけど「今夜は俺のおごりだ、全員好きなものを飲め!」とか言って酒場で大盤振る舞いする冒険者って 雑魚役か、没落系冒険者というイメージが拭えない。
帰って来たばかりで明らかに疲れ果てているお姉さんの様子を見て、お祭りの準備は明日行い 本番は週明けに行われることになったよ。
明日は 子供採集体験の予定日だったんだけど、思った以上に色々買い込んで来てくれているので 屋台も出ることになりそうなんだって。
肉屋のマコールさんをはじめ、町の食堂や 八百屋のおじさんなど、食材を取り扱う大人たちが集まって屋台を取り仕切ってくれるみたい。
お父さんが料理上手なのは有名だから、お父さんも調理には加わるそうだけど、一応の主役が私なので お祭り本番の時には 私と一緒にいてくれるんだって。
子供達も 薬草採取が延期になった事に悲しむかと思ったけど、翌日にもっと面白いことが待っているとあっては ワクワクの方が勝っているらしい。
学び舎に通う子供達は 臨時で使うための木の器やコップを木魔法を使って磨くお手伝いをしたりして この数週間を過ごしていた。
もっと小さい子供達は まだまだ手伝えることは少なかったんだけど、いよいよ明日となったので、会場の飾りつけを家族と一緒にしたりして 楽しんでいる。
村中がお祭りという特別なイベントに沸き立っており、大人たちは久しぶりに飲む外のお酒を楽しみにしている。
だから まさかあんなことが起きるなんて、誰も想像していなかったんだと思う。




