第387話 彼らとの再会
長期の旅行から戻れば 色々やることがある。
ダンジョンや森で狩った魔獣素材の販売、個人的に依頼をされていた素材の販売が主だけどね。
ミリーナさん、リリウムさんのお店に行った後は アランさんのお店にももちろん顔を出したよ。
「作っても作っても催促されるから 作れる奴らを増やしたぞ」
怒ってるんだか喜んでるんだか分からない言い方だったけど、楽しそうだったなというお父さんの感想があったので 喜んでいたんだろう。
アランさんだけでは ハンモック風呂以外に手を出せなくなってしまうくらい 販売予約が凄いことになったらしいので、アランさんのお店で修行をした数名が同じようにハンモック風呂を作るようになったみたい。
裏山は ビッグからヒュージに育つのを今か今かと待っている状態で、余裕のある大人たちや 遠出をしない冒険者たちが コニベア村方面迄足を伸ばしてヒュージボア狩りをしているらしい。
どうりで浅い場所にはあまりいなかった筈だね。
それなりに奥まで行けばいたんだけど、最初に初級ダンジョン巡りをした時より 随分奥に行かないとヒュージボアがいなかった理由がよく分かった。
午後にはギルドに寄って、提出した素材の査定額をもらったんだけど このお金いつ使うんだ?と思うほどに稼げました。
装備と靴はもう手に入れたし、お肉は大概自分たちで狩りに行く。
野菜はダンジョン産のがまだまだあるし 購入金額も大した額ではない。
それに 入金後の残高を見れば滅茶苦茶増えてて、詳細を聞いたら カルタとハンモック風呂の売り上げによる不労所得でした。
若干七歳にしてこんなに大金持ちになっては 駄目な大人になってしまいそうですよ。
「まあ 冒険者はいつ大きな怪我をするか分からん。その時はしばらく身動きが出来んこともあるからな。
数年碌に稼げなくなることも珍しくはない事を思えば、その時の為の貯金じゃと思っとけばええ」
普通はランクが上がれば武器や防具を新調したり、新しいダンジョンに行くための便利な魔道具を買ったりして稼いだお金はどんどん出ていくらしい。
私はデビューから最上級の武器防具を作ってもらい、ツヨツヨな人たちに護られているおかげで怪我をすることもなく(回復薬も減らない)ここまで来れている。
『金持ちやエリートはスタートラインが違う。努力を同じだけしても追いつけないのは当たり前』
そんな言葉を思い出すけど、まさに今の私ってエリートと呼ばれる人たち側だよね。
これは今居る状況に胡坐をかいていたら 直ぐに蹴落とされるやつだよね。
うぅぅ、気を引き締めておかないとだね。
既に私たちが帰ってきたことは村中に知れ渡っていて、ギルドに行った時には 訓練しようぜと伝言も頂きました。
なので 戻ってきて3日目の午後はギルド地下での訓練です。
午前中にお兄ちゃんたちからの手紙を全部読んだけど、クルトさんの絵は本当にプロの画家さんかというほどに素晴らしかった。
「ヴィオの絵をフィルさんに渡してやったんじゃな。
侯爵とやらの事が落ち着いたら メネクセスに行ってみるか?
金ランクの試験が無くてもあの国もダンジョンは多いし、もう国境も越えられるぞ?」
届いた手紙の一番新しいものは フィルさんと会った後の内容だったんだけど、私と皆が一緒にいる時の絵姿をクルトさんが描いたノートを進呈したらしい。
内容を見ていないから何とも言えないけど、会ったことがない父親に一方的に今の自分を見られるのはちょっと恥ずかしかったりするよね。
思ってたのと違う成長っぷりだったり お母さんと似てないとか思われたら悲しいもん。
「う~ん、そうだね。
あの面倒な人たちの件が落ち着いたら行ってみたいかも。
フィルさんとは会えなくても ヘイジョーの町には行ってみたいんだ」
私が産まれた町。
お母さんと ほんの少しの間だけフィルさんも一緒に過ごしたというお家。
もう別の人が住んでいるとは思うけど、自分のルーツでもあるそこには行ってみたいと思う。
お父さんも頷いてくれて 片が付いたら行ってみようと言ってくれた。
それなりに戦えるようになったとはいえ、子供を連れての旅は大変だろうに 全く嫌がることなく我儘を叶えてくれるお父さん、本当にありがとう。
午後には再びギルドを訪れて 地下訓練場に向かう。
昼食を食べに家に戻っていたレン君たちも 既に到着していて準備万端だった。
「ヴィオ! 銀ランクになったんだって?」
「うん、銀ランクの白級になったよ!」
訓練場に入れば 私に気付いたレン君とハチ君が駆けつけてくれる。
ワクワクとした顔に ブンブン振られる尻尾、トランプでの訓練は上手く行ってないのだろうか。
首から下げているギルドタグを取り出して二人に見せれば ブンブン尻尾は更に激しく左右に揺れている。
「わぁ~!本物の銀ランクのタグだぁ!ヴィオ凄いね!おめでとう」
「くそ~!早いぞ、俺だってやっと青銅になったのに また離された~!」
おめでとうと喜んでくれるハチ君と、悔しがるレン君。
二人と一緒に過ごした時間はそんなに長くなかったけれど、今でもこうして仲間として受け入れてくれるのは嬉しい。
他の町で会う冒険者のように お父さんたちの寄生虫でズルいなんてことは言わないのもありがたい。
「っし!けど俺だって 来年には銅ランクになってダンジョンに行くからな。
九歳には銀ランクになってるんだから 直ぐに追いつくからな!」
ビシっと指をさしながら宣言されたけど、私は十歳で金ランクになる予定です。
悔しがるだろうから言わんけど。
「次はいつまで村にいれるの~?」
「風の季節まではいるつもりだよ」
「そうなのか!? じゃあ四か月ちょっとは訓練できるって事だな!」
「じゃあ、僕らもまた一緒に出来る?」
「私も!」
少し離れた所にいた子供達も レン君の喜ぶ声に近寄ってきて一緒に訓練をしたいと手をあげる。私は武器を使わないで組手をするから 彼らも恐怖心をあまり感じずに対応できるんだって。
お父さんは複数人を相手にすることができるし、ちびっこがお父さんの周りを囲んでお願いコールをしています。
私と一緒に来る時には相手をしても良いと言質を取って大喜びしているんだけど、毎回コテンパにやられて泥だらけになるのに良いんですね。
そんな訓練を嬉々としてやるからこそ この村の人たちはすんごい冒険者になるんだろうなと思った。




